1、あんたの夢、叶えたろか?
処女作です。
「美少女になりたい。」
「よしきた、まかせろ。」
目の前の爺さんはさも簡単なことだと言わんばかりに了承した。
「ほれ、もっとあるじゃろ。遠慮せんでええから言うてみ?」
それどころかまだまだ足りないかのように要求の催促をしてくる。
「ええと、早々死なないようにして欲しい。あとは、ええ何がいいんだろ。」
「そんな簡単に死なせてたまるか。安心せい、ボディまわりは万全のオプションを付けるつもりじゃ。もっとこう、それ以外で何かないんか?せっかくじゃぞ?」
「うーん」
そういわれてもなかなかすぐに思いつくものではないと思う。
「こんなの使ってみたい、あんなことしてみたい、とかあるじゃろ?」
「あー、ゲームで刀とか鎌とか使うの好きなんだけど使えるようにできる?」
望みを引き出すのもうまいなあ、爺さん。
「余裕じゃよ、余裕。道具も付けるし使い方も頭に入れといてやる。収納も考えておくぞ。」
すげえな、なんでも叶うぞ。じゃあ、やっぱりあれだろ。
「魔法は?」
「魔法?…お主、魔法なんてあるわけなかろう?」
「えっ?」
うっそだろ、こんだけいろいろあんのに魔法はないの?マジで?
「そんなもんあるわけなかろう。随分と夢見がちなんじゃのう。」
「いやいや、今までのだって十分非常識なものだったじゃん。」
「はっは、魔法は非常識すぎるわい。」
「違いがわからんわ。」
あれか、あまりに上位の次元過ぎて俺からは等しく上にみえるだけでそこには大きな隔たりがあるのだろうか。
「これ以上待っても新しいのは出そうにないのう。では準備するかの。」
そう言って爺さんは懐から短い杖を取り出す。
「ええっ?魔法の杖じゃん!」
「たわけ、ただのデバイスじゃよ。」
どう見ても魔法使いの爺が杖を持ってるようにしか見えない。
「これをこうして、ほほいのほいと。」
掛け声とともに杖を動かす姿はやはり魔法使いにしか見えない。
「よし、準備はほぼ完了じゃ。最後に確認するぞい。今からお主の記憶を美少女ハイスペックボディに移植。そのまま異世界へと転送され、自由気ままな異世界ライフを送るのじゃ。何か質問はあるかの?」
準備、早すぎない?俺からすればやっぱ魔法だわ。それより質問か。
「その、ハイスペックボディの外見て…」
「もちろん、お主の好みに合わせてあるぞい」
記憶の移植ができるんだもんな。それぐらい朝飯前か。それより趣味嗜好が丸裸なのがちょっぴり恥ずかしい。
「ありがとうございます。あと、異世界って…」
「知らん。こればっかりは儂もわからん。じゃが問題なかろう、なにせ力作のハイスペックボディじゃからの。」
新天地が全くの未知の世界なのは流石に不安だが、爺さんも太鼓判を押すハイスペックボディを信じるしかないか。
「では、心の準備が出来れば言ってくれ。その時点で記憶を移して転送するからの。」
「はい。」
やばい、緊張してきた。これから俺の人生は大きく変わるのだ。心臓が跳ねる。手が汗ばむ。
バンジージャンプで飛び降りる直前の気分だ。飛んだことないけども。
…よし、行こう。
「出来ました、いけます。」
「では、快適な異世界の旅へいってらっしゃいじゃ。」
「ありがとうございました。」
テーマパークの乗り物の係のような見送りの言葉に感謝を返しつつ俺は遂に異世界へと旅立ったのだ。