ぐるぐる同じ場所を回る夢の話
これは私が高校3年の時の話。確か5月頃で文化祭の準備を始めようかっていう時期の事。私は演劇部に所属していて、ちょうど次の文化祭でやる劇の話をしていた時だった。文化祭は夏だし観客の反応もいいよねって事でホラーな劇をしようって話になってたんだ。それで劇の題材として色んなホラーな話を集めてみようかって言ってて、部員のみんなで怖い話を調べたり考えたりしてきてたのね。後輩で2年のAちゃんは霊感があるらしくて実体験した話を色々話してくれたの。守護霊っぽい人の話とか金縛りになった時の話とか。
その中に一つ、奇妙な夢の話があったの。毎年秋祭りの日の夜に見ていたっていう夢。どこか知らない場所をぐるぐるぐるぐる回り続けさせられて、周りの人はどんどん倒れていくんだって。
ここまで聞いた時に思い出したことがあって、私ね、この話知ってるって思ったんだ。中学校の時の友達がこれと全く同じ話をしてくれたことがあった。たぶん昨日見た夢がこんなのだったよっていう話だったと思うんだけどね、ちょうどぐるぐる同じ場所を歩くだけの話をしてくれたことがあるの。場所は私達が通っていた小学校の周り。聞いたのは私が中学校2年生だった年の秋祭り2日目。ちょうど小学校の近くを歩いてた時で、ふっと思い出したって感じで話し始めてたと思う。内容はざっくり言うとこんな感じだった。
この小学校の周りを延々と歩かされて、体力の無くなった人から倒れていくの。倒れた人はそのまま放置して餓死させるらしいよ。人が増えすぎて食料が無くなったから、そうやって人を間引いてるみたいだった。
何故かすごくこの話は印象に残ってて、4年も前の事なのにはっきり覚えてた。それでちょっと怖くなってきたのね。だってこんな変な夢って早々見るようなものじゃないし。いやでもさすがに偶然なのかなって思ってた。ぐるぐる同じ場所を回るだけならただの偶然だろうって。餓死するのでもないしって。そうしたらね、Aちゃんが最後に言ったの。
「歩き疲れて倒れたらそのまま餓死するまで放っておかれるみたい」
ああ、同じ夢だって思った。ここまでキーワードが一致するのはさすがに偶然じゃありえないって。それでAちゃんはその後雑談に入った時にこうも言ってたの。この夢は中学校に入った時から見なくなったって。あれ?私がこの夢の話聞いたのいつだっけって思ったのね。私が中学校2年生の時って、Aちゃんは中学校1年生だよなって。そう、私が友達からこの話を聞いたのって、ちょうどAちゃんがこの夢を見なくなった年なんだ。聞いたのもAちゃんが夢を見てたのと同じで秋祭りの時。なんだかAちゃんの見てた夢が私の友達の所に飛んできたみたいだなって思っちゃった。そんなことありえるはずないんだけど。
後でその友達にこの夢のこと聞いたんだけど、そんな夢の心当たりないって言われたの。友達がこの夢を忘れてしまっただけなのか、私の記憶違いなのか、それともその話を聞いた事自体が夢だったのか、何が本当なのかはもうわからない。でも確かにまだ記憶に残ってるんだ。秋祭りの喧騒から少し離れた小学校の近くで、ぐるぐる同じ場所を回る夢の話を聞いた事。
これはほぼ作者の実体験です。当時この話を聞いた時には怖くて怖くて仕方なかった事をよく覚えています。ただの勘違いかもしれません。ただの偶然かもしれません。けれど確かに後輩の話を最後まで聞く前に、私が夢の結末を知っていた事は確かなのです。