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分かれ道

誰が山本を狙っているのか?

聡の判らぬところで事態は進んでいく。

聡が病室に入って30分もすると、樫村が目を覚ました。


「気がついたか」


山本が気遣う・・・


「オジキ・・・スミマセン、このぐらいのかすり傷でこんな大げさに・・・」


「気にするな、本当だったら俺が『ここに』食らってたかもしれないしな・・・」


そう言って山本は自分の心臓のあたりに親指をつける


「気分はどうだ?」


声をかけた聡を見て樫村は目を丸くする。


「聡!?・・・お前なんでここにいる?」


「どっかの誰かが俺をすっぽかしたからじゃねえか!」


「・・・・ああ、そうか、そうだったな。すまん、心配かけた。」


「心配掛けられついでに、山本のオジキの護衛はお前が良くなるまで俺が代わる事にしたからな。」


「・・・・そうか、若頭がそういったのか・・・気をつけろよ!オジキは狙われてるんだからな!」


「ああ、気をつける。」


そう話している時に、病室のドアが開いた。


「オジキ!・・・すぐにこの病院出て下さい。」


いきなり今野がそう告げる。


「どういう事だ・・・・・まさか?!」


「どうやらそのまさかみたいなんです。原島が樫村を撃った奴に見憶えがあって・・・さっき俺らの馴染の店にいって裏とったら・・・どうやら相馬組に出入りしてるチンピラらしいって・・・」


「相馬の兄貴・・・なんでそこまで!」


「どういう事ですか?」


聡はおいてけぼりをくらい、今野に向き直る。


「オジキを襲わせたのは相馬組だって事だ!聡!すぐに出るぞ!」


もう話は付けてあった様子で、すぐにストレッチャーを押して看護師が入ってきた。


「オジキ!裏口に車つけてます。すぐに出て下さい。ぐずぐずしてると相馬組のヒットマンが来るかもしれません!!」


「判った。まだ相馬の兄貴と決まった訳じゃない!早まった事はするんじゃねえぞ!」


「判ってます!会長にもそこら辺は知らせてありますので・・・とにかく出ましょう!」





今野が見張るさなか、

病院の搬送口から出た聡と山本は樫村に肩を貸して原島の待つ車に乗りこんだ。


「後の手配は済ましてます。気をつけて下さい。」


そういって今野の見送りを受けて病院を出る。






「このまま高速に乗って小倉の病院に行きます。あっちはさすがに相馬の目が届きませんから・・・」


そう原島が言った直後に『ドンッ』と衝撃が走る。後から車に追突されたようだ。


「くそっ!もう来やがった!!」


そういって原島は懐から拳銃を出す。後の車からも3人の男達が手には拳銃を持ちこちらを囲みにやってくる。


しかし最初に素手のまま飛び出した山本が徒手空拳で3人とも叩きのめしてしまった。


「お前らどこのもんだ?!ああっ?」


山本はそのまま一人の襟首を掴み上げ持ち上げながら尋問したが・・・

口は固くなにも言わない。しびれを切らして眉間にしわを寄せる山本に原島が


「オジキとりあえずふんじばって事務所に連れて帰りましょう!ここじゃあ一目もあるし、直に警察もきます。」


「そうだな・・・」


車から足を引きずりながら樫村が確認しに降りてきた。

3人の顔をみたが・・・・


「この前の奴はいません・・・」


原島が拳銃を取り上げて一人、また一人と拘束していったが・・・聡は残る一人が腰からなにか光る物を出したのが見えた。


「死ねや〜!!おらぁ!!!」


「危ない!」


無我夢中で山本をかばおうと前に出た・・・・が、それよりも早く前に来たものに突き飛ばされる。


「ううっ・・・っつ・・」


・・・・



聡が見た時には・・・・樫村の腰のあたりに木の棒が生えていた。


よくみれば、ドスが腰に突き刺さっている。


樫村を刺した本人は原島に拳銃のグリップで殴り倒されていた。



「樫村!!樫村!!」


山本は樫村を抱き抱える。


「オジキ・・・」


「喋るな!すぐに医者に連れて行ってやる。」


「聡・・・」


「・・・な、なんだ。」


目の前で起きた事がまるでドラマか映画のワンシーンのようで・・・聡には実感がなかった。


「・・・お前、ヤクザには・・ならないんだろ?」


「ああ、ならない!今度はちゃんと修行していっぱしのバーテンダーになるよ!良くなったら飲みにこいよな・・・」


「そうだな・・・堅気のお前にこんな事頼むの気がひけるんだけど・・・」


「なんだ?なんだよ?いってみろよ!」


「・・・お前・・・俺と兄弟になってくれよ・・契の杯で・・」


「・・・義兄弟ってやつか?・・ヤクザじゃない俺とそんな事できるのか?」


「・・・オジキ・・・媒酌人お願いできますか?・・・」


「・・・・・ああ、判った・・・」






樫村はポケットから血にまみれた杯を取り出す。


「飲みにいった時にお前に・・・渡そうと思ってたんだけど・・・オジキが媒酌人だから・・・本当の兄弟だぜ・・・」


「判った。受け取るよ・・・だからもう・・・喋るな!」


「ありがとう・・・・・・兄弟。」


「ああ、・・・兄弟!これからもよろしくな!」













それからまた病院に戻り、樫村は2時間後に死んだ。




一突きで肝臓まで刺さっていたらしく・・・運ばれた時に傷を見た医者は、山本に家族を急いで呼ぶように言っていた。



その後、捕まえた人間が吐いたことによって今回の件が本家に知れる事となった。


相馬は四矢組若頭を外され破門。相馬組は解散。そのまま風神会に吸収合併された。


若い頃から四矢組組長からの信頼も厚く、傘下の親分衆から慕われていた山本は、組同士の争いに口を出したという疑いをかけられて傘下の風神会の預かりになっていたが(その事すら恐らくは相馬の仕掛けだったのだが)・・・そろそろ呼び戻すという四矢組組長の意向がわかり、焦った相馬は身の保全の為に山本を敵対組織を装って襲わせた。


そういう筋書きだったらしい。



聡は樫村の葬式まで出席したが、山本はその時近寄っても来なかった。

恐らくはヤクザと堅気の人間の線をそこで引かれたのだろうと思う。


それからほどなくして山本が四矢組の若頭に就任したと・・・・風の噂で聞いた。







ただのバーテンダーに戻った聡はまるで人が変わったように仕事に打ち込んだ。

わずか3年で、サボイのオーナー末光から『独立』の誘いを受け。常連やまわりの人間に助けられながら、何とか7年間ここまでやってこれた。






昔の事を思い出し、ぼーっとしているとすでに開店の時間になっていた。

慌てて看板のスイッチを入れてグラスを磨き直す聡だった。

















長くなってしまいました。昔話です。

さあ現在の聡はどう切り抜けるのでしょうか・・・

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