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岩堀という男

店にヤクザがやってきた。ショバ代を払えという。

聡は払わなければならないのか?それを相談しに行く事にしたのだが・・・・

見るからに『堅気』ではない二人が引き揚げてから、聡は店の掃除を済ませて、同じビルに店を構える中でも一番古株で年長者であるrestaurantbar『宝島』のオーナー。岩堀にあいに一階の店に訪れた。








「お疲れ様です。」


「おお、めずらしいな、なんだ?エスプレッソでもせがみにきたか?」


「いいですねぇ。出来れば頂きたいです。」


「わかった。ちょっと待ってろ。」





2分と経たずにエスプレッソのいい香りが立ち込める。

あえて本題に入らず、聡は岩堀の入れてくれたエスプレッソを黙って飲んだ。

二人で煙草に火をつけ、煙をくゆらせた頃。岩堀のほうから切り出してきた。


「・・・・例の大野とかいうヤクザの事だろ?」


「はい・・・とりあえずは返事を待たせました。どうされますか?」


「さあて・・・どうしたもんかな。」


「ここいら辺は、大同組の縄張りになってるんですか?」


「・・・元々は因幡一家が収めてる土地なんだがな・・・あそこは土建のほうの凌ぎで食ってるから、ミカジメは取らないって親分だったんだが・・・最近の親元どうしの抗争であの関西のデカイ組が一人勝ちだっただろ?あれで大同組が入りこんできたみたいだな。」


「そうですか・・・・じゃあ払っておいた方がいいんでしょうね。」


「それが一番無難な解決策といえば、そうなるんだろうな。ビルの管理には俺が知らせておいたが・・・早い話が、不動産つっても当たり前の商売してるところだからな・・・払う必要はありません。とはいってるが、自分達が間に入るつもりはなさそうだからな、俺達で話すしかあるまい。」


「僕のところにきた大野って男と話すしかないんでしょうね・・・」


「まあ、誰か組織の中でもっと上のヤクザに貸しがあるって奴でも知ってれば・・・話は別なんだろうけどな。」


「岩堀さん・・・・・俺はもう・・・」


「勘違いするなよ!お前に何とかしろっていってる訳じゃない。俺だってこの商売長くやってる。ショバ代ぐらい払えない事はない。・・・・・ただな、お前さんがこういう時に昔のコネを使ってでもずる賢く立ち回るか?それともまっとうな、こういう事に縁のない人間として生きていくか、決めるには、いいタイミングなんじゃないかな?・・・そう思っただけさ。」


「・・・・・・」


「まあ、俺のところにきたのが一昨日だから・・・あと2〜3日は時間があるんじゃないか?」


「・・・えっ?・・・じゃあ、俺のところに来たのは・・・」


「ああ、まとめ役は誰なんだ?って聞かれたからな・・・めんどくせーからお前を推薦しといた。若いが面白い奴ですってな。はっはっはっは」


「ひどいな・・・」


「すまんすまん・・・ただで俺のエスプレッソ飲めると思ったか?」


「前金にしては・・・ずいぶん高い気がしますけど?」


「馬鹿野郎。おれのは高いんだよ!はっはっは。」









まったく・・・・喰えないオヤジだ。と聡は一人苦虫を噛んだ。










その夜、エリカが一人で飲みに来た。


「どうしたの?何かあった?」


「なんで?」


「だって顔に書いてるわよ?」


「なんて書いてる?」


「いいから!どうしたのよ・・・」


「俺は別に大したことはない・・・それよりも、お前たち・・・これからどうするんだ?」


「・・・・どうするっていっても・・・・」


「あれは亜希子さんの意思なんだろう?智雄の子供を妊娠した方が結婚するっていうのは。」


「・・・うーん・・・なんて言ったらいいのかな?最初はあたしと亜希子さんが譲り合いっていうか・・・意地をはってた部分があるんだけど・・・今はね、本当に智君の子供産みたいって思ってる。亜希子さんもだと思うけど、だからどっちが出来てもうらみっこなし!」


「ふーん・・・そんなもんかね?・・・ただお前にはもう息子がいる事、忘れてやるなよな!」


「あたりまえじゃない!だから仕事が落ち着いて来て引き取りたいっていったんでしょ?!」


「まあ、ありゃ仕方ないだろ!断ったのは俺じゃない。洋介なんだから。まぁうちのおふくろも言いたい事はあったみたいだけどな。」


「聡とお養母さんには・・・勝手な事いってるのは判ってる。でも、仕事が落ち着くまでどうしても洋介を育てながらは無理だったんだもの・・・洋介もやっぱり恨んでるのよね・・・多分」


「どうかな?・・・お母さんは今の方が『綺麗』!!だから僕が一緒にいない方がいいんだって・・・そういって断ったけどな・・・」


「・・・・やっぱり・・・そう言わせちゃったのはあたし。だからやっぱり聡とお養母さんが育ててくれて正解なのよね・・・いい子だもん洋介。」


「いい子なのはお前の前だけだよ!お前の家に行く前の日なんか興奮して眠れないみたいだし、出かける寸前まで服とか、髪型とか気にして・・・デートの前みたいだもんな。」


「へ〜・・・そんな感じなんだ。いつもご飯食べる頃まであんまり口もきいてくれないんだもん・・・嫌われてるなぁ・・・って思ってた。」


「照れてるんだよ。あいつはお前の事が大好きさ!友達にもいつも自慢してるよ。」


「へへ・・・なんだか嬉しい。」



そしてカクテルのお代わりを頼むエリカに


「お前ひとりなんだろ?飲みすぎじゃないか?」


「あっ大丈夫!今日から二人だから。」


「はぁ?なんだそれ?誰かくるのか?・・・今、智雄の相手は亜希子さんなんだろ?」


「うふふ、本当はね!来週までだったんだけど、亜希子さん明日から一週間東京に出張が入ったから、今日からあたしなの♪」


「・・・あ、そう。」





軽く呆れながら聡がお代わりを作った頃。亜希子がやってきた。


「こんばんは」


「いらっしゃいませ。いつもの?」


「ううん?ごめんなさい。今日はすぐ帰るから。コーヒー。貰える?」


「いいですよ。ちょっとお待ちください。」


聡が豆やフィルターの用意を始めると、亜希子とエリカはなにやらひそひそ話し始めた。

なにかメモのようなものを出して二人で真剣に話している。そして○をつけたり、マーカーで印を入れたり・・・・



「お待たせいたしました。」


「うーん。いい香り。ありがとう。」



さっきのメモがきになる聡は小さな声でエリカに話しかけた。


『おい・・・あれ、あの紙なんだよ』


『・・・ああ、あれ?後でね。』


要領をえないが、どうやら亜希子の前では話せないようなのでそこで諦めた。





20分程で亜希子が立ちあがる。


「もうお帰りですか?」


「うん。明日早いの。朝一の便で東京だから・・・」


「出張らしいですね。お土産お願いします。」


「聡さんにお土産かぁ・・・甘いもの駄目な人には難しいなぁ・・・うんなにか探してみるね」


「期待しないで待ってます。」






亜希子を見送り、聡は


「・・・で?お前は誰と帰るんだ?」


「もうすぐ智君がくるの。」


「ああ・・・そういう事?」


「うん・・・そういう事。」


つまりは、智雄が来る前に引き継ぎをしに来ていたのである。なんとも不思議な関係で聡には到底理解できなかったが・・・この二人がそれでいいならいいのであろう。


「・・・で?さっきのは?」


「ああ、あれ?・・・二人して基礎体温計っててね!極力、妊娠出来るような日を選んでる訳!最後にしたのが何日だから、次の生理がここで来なければ妊娠ってマークで日にち計算してるの。」


「なんのために?」


「だって?!二人とも妊娠は・・・さすがに困るじゃない?だから最初の生理があったらメールで連絡とるでしょ?そのまでは、ちゃんとゴムなり何なりで避妊するけど・・・その後は・・・うふふ。って事よ!判った?」


「・・・・あ、ああ。解った。かな?」







やはり・・・理解不能な関係だ・・・・・・聡は心の中でそうつぶやいた。


その後智雄が迎えにくるまで1時間程。目を輝かせた自分の元妻のエリカに、自分の親友でもある『智雄』がいかに男としてやさしいか?また頼りがいがあるかをさんざん聞かされる羽目になる。




男と女の愛情は10組いれば10通りの形があると思います。他人が見てどんなにいびつな形であろうとも、本人たちにとってそれが一番自然な形であれば・・・


聡の過去も気になるところですね?

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