二人の密約
親友である智雄の妻公認愛人(彼女)である亜希子に子供が出来た。
しかしそのお腹の子は智雄が父親ではないのだと・・・・
果たして・・・・亜希子から聡に電話があったのは、約束よりも10日も遅い2週間後の事だった。
『聡さんお久しぶり!』
『お元気そうで。・・・・もう福岡?』
『・・・うん。実は、まだ帰ってきた事、二人に連絡してないの。』
『どうして?!待ってるんじゃないの?』
『そうなんだけど・・・・ねえ・・・・聡さんと二人で話せないかな。』
『・・・それは構わないけど・・・』
『じゃあ、お願い!』
『判りました。こっちは午前中しか開けられないけど・・・』
『いいわ。じゃあ明日の・・・11時頃でも構わない?』
『いいですよ。じゃあ・・・お昼を一緒にしましょうか?パスタでも。』
『テーブルスプーンズね。了解!』
近所のイタリアンで、亜希子も聡もそこの店主とは面識がある。訳ありなのは聡も承知していたが、かなりややこしい問題なのかもしれない。
『なんで俺はいつもいつも・・・こんなめんどくさい事に巻き込まれるんだろう・・・』
そうは思っても自分がなにか出来る事があれば絶対に引き受けてしまう聡なのである。
前菜が終わり、テーブルに何もない状態になったところで亜希子は話し始めた。
「正直に話すわね。今あたしは妊娠3カ月。お腹の子は智の子じゃあないの。」
「・・・・・」
「あら、あんまり驚かないのね。」
智雄からそうかもしれないと聞いていた事にはあえて触れなかった。
「いや、そんなこともないけど・・・・で?父親は?」
「話せばすっごく長いんだけど・・・今の上司。妻帯者。」
「そりゃあ・・・困ったね。・・・亜希子さんは?どうしたいの?」
「産みたいって思ってる。もちろん一人で!」
「そう・・・・でも、以外だな。浮気っていうか、ほかの男とそうなるなんて思ってもみなかったから。」
「・・・そうよね。でもあたしが東京行きを決めた時点でこうなるのは本当は予感してたんだ。だって相手の男性、上司だけど、福岡にいる時に付き合ってたの。あ、もちろん智に出会うまだ前に東京に戻っちゃって、それきりだったんだけどね。」
「じゃあ、亜希子さんを東京に呼んだのが・・・その・・・」
「うん。そう。もちろん仕事を評価されての抜擢だったのは確かなんだけど、それに彼が絡んでいたのは間違いないと思う。で、ここ半年くらい前からよりが戻っちゃった。」
智雄の話しとも辻褄があう。おそらくは亜希子の話しは本当なのだろう。
「・・・で?俺になにか頼みごとがあるの?あいつの立場からいって、亜希子さんを攻められる訳はないし、そのまま話しても問題ないと思うんだけど・・・」
「うん・・・だけど、それじゃあずるいっていうか、智って煮え切らないところがあるでしょ?だから・・・エリカさんと二人でちゃんと幸せになってもらいたいの。その為に聡さんにひと肌脱いでもらえないかなって・・・」
『やっぱり・・・』
めんどくさそうな匂いがぷんぷんしてきた。聡はひとり溜息をついた。
めんどくさいなんて・・・本当は喜んで協力するんです。聡は。