腑に落ちない話
エリカと亜希子。ふたりが妊娠していると聞かされた聡は、三人で話しをしようとするのだが・・・
「・・・・で?」
「・・・っへ?」
「へ?・・・じゃないだろう!!どうするんだ?」
聡は智雄の本音を尋ねた。
実際のところ、妻と妻公認の愛人(彼女)が二人いてそれぞれ智雄の子供が欲しい!
などと、男にとってはまさに『楽園』のような状態で2年も過ごしてきたのだ。今さらなにも考えてないなんて事は・・・・
「・・・・・どうしよう。」
この男に限ってはそれがあるようだ。
「まったく・・・どうするもこうするもないだろう。エリカはなんて言ってる。」
「まだ・・・話してない。」
「お前なぁ・・・ちょっとここへエリカ呼べ!」
一時間後、仕事を終えたエリカがやってきた。
「おつかれさん」
そういいながらエリカに酒ではなくグレープフルーツジュースを出す。
それに驚いたエリカは、
「あら、智くんもう話したの?」
「・・・うん。」
「おめでとう。」
「ありがとう聡。・・・で?なんの話?今日は二人で話すんじゃなかったの?」
「いや・・・それが・・・」
それから口が動かない。見るに見かねた聡が口を出す。
「エリカ・・・亜希子さんにも出来たらしいんだ。」
一瞬びっくりした顔をしたエリカだが、
「もう!なんですぐに言ってくれないの?今何カ月?」
「いや・・・まだ詳しくは・・・」
「自分の子供でしょ?!気にならないの?」
「そう・・・なんだけど・・・」
「もういいわ!」
そういうとエリカは携帯を取り出してすぐにかけ始める。
「ちょ、ちょっと?エリカ?」
「しっ!!」
そう言って外に出てしまった。
おろおろしている智雄を見ていて呆れる聡。
「あのなあ。やることやってたら想像ついただろ!こんな事ぐらい。」
「そうなんだけど・・・・違うんだ!」
「なにが?!」
そこへエリカが戻ってくる。
「来週。亜希子さんが福岡に戻ってくるから、話しはそれから。いい?!」
「ああ。判った。」
「なんだか、がっかりしちゃった。智君・・・こんなんだっけ!?」
「・・・・」
「あたしは亜希子さんにも幸せになってもらいたいの!知ってるでしょ?」
「ああ。」
「じゃあ、どうしてすぐに話してくれなかったの?」
「いや・・・違うんだ・・・」
「もういいわ!あたし、しばらく実家に帰るから!今日から家の事お願い。」
「え?ちょ、ちょっとエリカ!」
聡のほうもむかずにエリカはそのまま店を出て行ってしまった。
「うわあ・・・どうしよう。」
うつむく智雄に聡は絶望的な言葉を放つ。
「あきらめろ。あれは本当に気が済むまで帰ってこない時の顔だから・・・」
「えええ・・・・。」
「それはそうと、さっきも言ってたけど、違うってなにが違うんだ?」
「ああ。それなぁ・・・」
しばらく遠くを見ている智雄だったが、意を決したような顔で聡のほうに向き治り、
「亜希子さんに出来た子供・・・多分俺の子じゃない気がする。」
「・・・・・っはい?!!!」
よく聞いてみれば・・・・
智雄と亜希子さんは、ここ半年以上セックスしていない。というより、スケジュールが合わずに逢っていないのだそうで・・・そう考えると、もし半年以上前に身ごもったのであれば今頃告白するのもおかしな話である。普通に考えて、2~3カ月前に身体の変調に気づいているはずなのだから。
「ま、まあ・・・亜希子さんが来れば全部はっきりするんだから・・・」
、と、何とも締まらない言葉しかかけられない聡なのである。