友達
ひょんな事から見知らぬ外人女性を匿う事になった聡、いったいどうやって解決するのか・・・・
彼女の名前は(正式なフルネームはわからなかったが)名前自体は父親がつけた日本名で『ジュン』という名前だった。
最初に聡がやったこと・・・・・
まず、大同商会の大野に連絡をとった。ジュンに聞いて店にあたりをつけ、もし大同や、それ以外のヤクザがらみであるなら、なんとか手を回して国に返してやろうと思ったからである。
・・・・・果たして、その店は『フィリピンパブJ&J』といい、大同の縄張り(シマ)ではなかった。そして暴力団は関係していないという。ほっとした聡に大野が釘をさす。
『ヤクザがいないっちゃあいないんだが・・・お前、ちょっとヤバいぞ!』
『どういう意味です?』
『ヤクザよりめんどくせーのが食いついてきた。・・・・・・・大きな組織じゃないが・・』
『・・・なんですか?・・・もしかして・・・アジア系?』
『あたりだ。最近幅効かせてるチャイニーズマフィアでな・・なあ・・・この件俺に任せないか?悪いようにはしねぇ・・・』
『それってジュンを店に返すって事でしょ?』
『ああ、ひらたくいやあそういうこった。』
『じゃ、断ります。』
『おい!・・・まあ、お前はそういうやつだもんな・・・とにかく一回そっちにいくから、先走るんじゃねえぞ!』
『・・・・考えときます。』
『口が減らねえなあ・・相変わらず。判った、今から行く。』
30分後に店にやってきた大野である。オープン前なので、他に3人連れがいる。
「・・・で?お前はどういう絵を描きたいんだ?」
「・・・というと?」
「とぼけるな!店にその女を帰さないって事は、国に返すつもりなんだろ?」
「・・・ああ、そういう意味ですか、本人は父親にあいたがってるんですよ。だから父親が見つかって目的が果たせれば、強制送還でもなんでも使って国に返そうとは思ってましたけど。」
「ああ、もう・・・どっちにしても事を起こす気なんだな!?」
「まあ・・・・そういう事になりますねぇ・・・」
「・・・・・・・」
しばらく考えた大野は連れの男を顎で呼ぶ。そしてしばらく耳打ちした後店から出て行かせた。
「なにをさせるつもりです?」
「こうなったら、大同組としてその組織を叩く事にした。まあ、前からうちのシマでやりたい放題してたからな。いい機会って・・・思う事にするよ。」
「で、でも・・・大丈夫ですか?この辺りで抗争があると・・・」
「馬鹿野郎、そんな騒ぎ起こしてみろ!うちが親元から締められちまう!まあ任せておけ。」
「そうですか・・・」
「それより、その女に会わせてくれ。絶対にお前が懸念するような事にはしねえ!約束する。」
ここまで話が大きく関わらせてしまったら断る訳にもいかず・・・・聡は頷くしかなかった。
自宅で待機している母親に電話をかける。
「ああ、この子いいこだねぇ・・・可愛いし。ご飯もいっぱい食べてお風呂もいれたよ。」
「ああ、ありがとう。今から迎えにいくから、用意させておいてくれ。」
迎えにいった聡は驚く!そこにはエリカが来ていた。
「お前・・・なんで?」
「お養母さんがね、着替えをさせたいって、連絡くれたの。だから服を持ってきた。良かったわ、サイズが合って。綺麗な子だね!変な事しちゃだめよ!」
「・・・ばか!」
「まあそんな事する人じゃないって解ってるけどね!でも相変わらずね、めんどくさい事に首突っ込んじゃって・・・」
「だから、迷惑かけないように、お前や優香ちゃんに連絡しなkったんだろうが!」
「あら・・・・優香も知ってるわよ。」
「え?・・・お前・・・」
「違う違う!お養母さんが最初は優香に連絡したんだけど、仕事抜けられなくて、で、優香とお養母さんからあたしが依頼されたって訳!」
「・・・で?お袋は?」
「今買い物!・・・だって・・・聡、こうなったらお養母さんの事叱るでしょ?」
「・・・・お前・・・・」
すべて見透かされている。だてに長く一緒にいた訳ではなかったようだ。仕方なく、ジュンを連れて出る。ジュンはエリカがすっかり気に入ったらしく
「アノヒト・・・ヤサシイ・・・キレイ・・・」
と繰り返していた。確かに、エリカのブラウスやパンツ、靴のサイズまで合っているようで、見事に着こなしていた。
ジュンを迎えに行って、店に戻ると、大野の元には見知らぬ(恐らく)フィリピン女性が来ていた。
「誰ですか?大野さんの??」
「馬鹿言え!俺はカミさん一本だよ!タガログ語がわかる奴連れて来いっていって、うちが持ってる外人バーから呼んできた。」
「ああそうなんですか。じゃあ、ジュン・・・おいで。」
大野達ヤクザを見て、怯えたジュンはなかなか中に入ろうとしない。
「大丈夫だ。俺の友達だから。」
そうジュンの目を見て聡がいうと、少し安心したのかおどおどと店内に入る。
「ほう・・・・確かにいい女だな、お前やっぱり趣味がいいな!」
大野は少し下衆な意味を込めてそう言った。
「俺も、そんな事しませんから。」
そうきっぱりいったが、大野はけっけっけっけと笑い飛ばす。
二人のフィリピン人の会話が進む中、大野に電話が入る。
「おお、で?どうなった・・・うん、うん、・・・・そうか・・・御苦労。・・・で?あっちの方は・・・・・そうか・・・・わかった。」
電話が終わって、大野は聡のほうを向いた。
「ニュースが二つ・・・いい方と、悪い方・・・どっちから聞く?」
「じゃあ・・・悪い方から・・」
「この子・・・ジュンか・・・オヤジさん、もう死んでる。」
「・・・そうですか・・・やっぱり・・」
「ああ、当時は追い込みも半端なかったからな、あの頃、荒稼ぎしてた不動産の社長って連中は弾けたあと、結構首括って死んじまったのがいっぱいいるからな。」
「・・・で?いい話ってのは?」
「ああ、例の組織な、うちの傘下に入れた。」
「ええ?いつ?」
「今しがただよ、溜まり場は抑えてあったからな、リーダー格のやつ取り囲んで、そのあと金握らせてからうちの兵隊にしてシマ分けしてやったら喜んで飛びつきやがった。もともと俺らと揉める気もなかったみたいだから、渡りに船ってやつさ。」
「そうなんですか。ありがとうございました。」
「けっ・・・よせよ、気持ち悪い。うちの組はお前の為に動いてるんじゃねえからな!思い違いすんなよ!」
「判ってます。」
「でな・・・例の店の女たちなんだが・・・・」
「どうなるんですか?」
「店主は締めあげて、パスポートやらビザやら全部返させてやったから、帰りたい奴は帰れるぜ。」
「なにからなにまで・・・・」
「どうせお前の事だから、そこまでやらされるだろうと思ってな・・・」
にやにやしながら大野はそう言うが、今回の件で作りたくない借りが出来たのは事実である。
ずいぶんと高くつきそうな気がしている聡である。しかし
『友達・・・・かぁ・・・』
そう聞こえない程の声で言ったのが聞こえて、笑いそうになったが一生懸命堪えた。
そこまで話をしていると、ジュンが大声で泣き出した。
びっくりして近づくともう一人のフィリピン女性が
「オトウサン・・・死んだ事話しました。だから・・・」
ジュンは聡にしがみついて延々と泣き続けた。
『友達』・・・・・
これは特別な関係なのかもしれない。




