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深まる疑問

いったい木之元興産とはどんな会社なのか?

悩む聡の店に優香が訪ねてくるしかも父親を連れて・・・

「いらっしゃいませ!」「お父さん!」



聡と優香は二人同時に声を上げた。








そこには小柄ながら、人を射抜くような眼光を持つ男が立っていた。


「いやあ・・・・どうも、その節はお世話になりました。もっと早くお礼も兼ねてご挨拶をと思っていたのですが・・・・」


恐らく半年前の件を言っているのだろう(※『誰が為に』参照)







「とんでもない、あれはたまたまあの場にいただけで・・・僕はなにもしてませんでしたから・・・」


「いやいや、本当なら事件になってもおかしくなかった・・・あなたと智雄くんが、あの時うちの娘の事を思って、穏便に済ませて頂いたのは聞き及んでいます。三浦さん・・・ありがとうございました。」


優香の父はその場で頭を下げた。


「・・・本当に僕はなにも・・・いや、それよりも今日はわざわざ来ていただきまして、ありがとうございます。」


「いやあ、なに、こう見えてもバーは若い頃から通ってますからな、『いいbar』と聞けば、娘の友人でなくてもいつかはここを探し当てていたかもしれません。」


「恐れ入ります。」











それから優香とその父は一時間程カウンターで飲み、聡と何の気ない話をして過ごした。

幼い頃の話に花が咲いた。


「この子は今でこそ少しは見れるようになりましたが・・・・小さい頃は・・・」


「お父さん!!そっから先はダメだからね!!」


そう優香に怒鳴られて・・・・少しだけ声をひそめて『不細工だったんですよ・・・みんなにはカエルちゃんなんて言われてました』


「もう!!ダメって言ったのに!!」


すでに笑っている聡をしり目に涙目になって父を叩いている優香である。

その後も、高校の卒業式に隠れて見にきたお父さんの話や、結婚式の日取りまで決まってからやっぱり嫁に出したくないと言い出したお父さん。しかもそれをみてお嫁に行かない!と優香まで言いだして大変だった話など・・・思い出話は尽きる事なく、三人の笑い声は続いた。













「あ、もうお帰りですか?」


唐突に立ちあがり、チェックをする優香の父だった。


「もう、年ですから・・・また機会を見つけて出てきますよ。お会いして話が出来て良かった。」


「ごめんなさい・・・煩かったでしょ?」


「いやいや!そんな事はないよ、こちらこそ、いろいろお話を伺えて良かったです。またぜひいらして下さい。お待ちしています。」


優香に向かって聡が聞く。


「おとうさんは?今日は優香ちゃんのところに泊まっていくのかい?」


「うん・・・そうしてって言ったんだけど・・・ホテル取ってるんだって・・・」


「娘の家で、彼氏とばったり・・・なんてどうも・・・」


冗談めかして父は娘と聡をみながら笑った。















時刻は1:00。待ち人が来た。


「遅いぞ。」


「すまん・・・でもこれで精いっぱいだって。」


智雄が出張から会社にもどり、直接saint・waveにやってきた。











「まずなにから聞きたいんだ?」


「まあ、とりあえずビールでも飲めよ。そう言えば・・・さっき優香ちゃんがおとうさんと見えて飲んでいったよ・・・」


聡はコロナビールを開けて智雄に手渡す。


「サンキュー・・へー・・・また何しにきたんだろうな?」


「彼女、この近くに住む事になったらしい・・・だから引っ越しでそのついでだと!」


「ふーん・・・で?肝心の話は?」


「まず、あのお前が使わないスタンドがあるだろ?九石!」


「ああ、それがどうした?」


「あそこを経営してる木之元興産って会社の事がしりたいんだが・・・」


ぶわーっと、智雄はビールを吹きだした。


「うわあ・・・汚ねーなぁ・・・」


ダスターでカウンターまわりを拭きあげ、智雄にお絞りを渡す聡。









「お前が変な事言いだすからだろーが!!」


「なにが変なんだ?」


「お前・・・・本当に判らないで言ってるのか?」


「だから何が?」


「優香の苗字は?・・・木之元だろ?!」


「・・・・・・・・・・・・??え〜???」


「だから・・・木之元興産っていったら・・・親父さんの会社だよ!!」












聡が事態を飲みこむのに少し時間がかかった。


智雄からすれば、別れた妻の実家が経営しているGSは使いにくいというだけの事・・・

ならば・・・優香の父である木之元氏はなぜ、聡を名指しでこんな回りくどい依頼をしてきているのか?








一通り聡から今回の事情をきいた智雄である。


しばらく二人で考えていたが・・・智雄が質問する。


「なあ・・・・真面目に答えてほしいんだけど・・・」


「なんだよ・・・改まって。」


言いにくそうに智雄は続ける。


「いや・・・もしかして・・・もしかしてだけど・・・・聡、優香と・・・その・・」


「ハァ????なにがどうしてそういう発想になるんだよ!」


「あ、何にもないのか?」


「ないよ!・・・・・まあ・・・・・きらいじゃあないけどな。」


にやりとした智雄の手前、極めて無表情を装う聡


「ははーん・・・・優香のほうもまんざらじゃあないんじゃないかな・・・」


「え?」


たまらず驚いた表情をつくってしまう。


「な、なにかはなしたのか?優香ちゃんと?」


「いいや、まだ・・・でもそうじゃないと説明がつかないんだよな・・・」


「お前さぁ・・・たとえ、そうだとしても説明なんてつかないじゃねえか!」


そう切り返す聡に智雄は自信たっぷりに答える。


「いいや!あの人ならこういう事する!俺には分かる。」


「・・・で?こんな事する意図はなんなんだ?」


意味が判らんとでもいうように聡は続ける。


「俺が、今回の事を引きうけたからって・・・お父さんになんのメリットがある?」


「メリットじゃないんだよ、損得で動く人じゃないんだ。多分、聡の事を理解しようとしてるんじゃないかなぁ・・・」


「やっぱり判らん・・・」


「まあいい。ちょっと優香と話してみるよ。」


「お、おい!優香ちゃんに変な事吹き込むなよ!」


「判ってる判ってる!!いひひ・・・」


絶対に判ってなさそうな智雄を不安な表情で見つめる聡である。
























謎はすべて解けた!!

とはいきませんでした。

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