難解
とかく男と女の間には・・・・他人に理解されなくとも幸せに生きているなら、それでいいのかも・・・
エリカと智雄と亜希子の三角関係がどうなったのか・・・・
あの夜、エリカは聡と2時間程話した後、何度か携帯をかけては切りを繰り返し・・・・
深いため息をついては酒を飲む。
「おい・・・もうそのぐらいにしておけ。」
「イヤ・・・まだ飲ませてよ!」
「いくら飲んだって、解決するもんでもないだろう!」
聡はそういいながら、エリカのグラスを取り上げる。
「飲ませてぇ・・・飲ませてよ・・うう・・っう。」
嗚咽を交えてカウンターに突っ伏してしまうエリカだった。
『なんだかねぇ・・・しおらしくなっちゃって。』
そう思い、また少し智雄にたいして怒りが込み上げてくる聡だった。
不安を振り払うかのように強い酒をあおり続けるエリカを聡は見ていられなくなり、普段なら絶対にやらないおせっかいを焼く事にした。
それから30分後・・・・・saint・waveに一組の来客があった。
女性客は晴れやかな顔で、対照的に疲れた顔の男性客。
「すまん・・・・心配掛けて」
智雄は聡の顔を見て詫びた。
「・・・・・俺はいい。二人ともカウンターに座れ。」
エリカと智雄、亜希子が一並びに座る。
聡の硬く結ばれた唇に、どういう心境なのかが表れている。
「俺は・・」「あたし・・・」「聡・・」
三人が同時に口を開いた。
「まず聞かせてくれ。」
聡は三人を手で制して、自分が喋り出す。
「二人の気持ちはだいたい想像がつく。だけど、お前はどう思ってる?」
智雄を正面に見据えて聡は問いただす。一瞬めを合わせるがすぐに下を向き考え込む智雄。
「・・・・・・」
「お前が決めるしかないんだぞ?いつまでもどっちもってのは・・・虫がよすぎる。」
「そんな事判ってる・・・」
「判ってない!」
静かな店内に聡の大きな声が響いた。
「お前は・・・亜希子さんと結婚したいんじゃないのか?」
それを聞いて亜希子が口を挟む。
「あたしじゃダメなの!子供が産めない女なんて・・・ふさわしくない・・・」
「なにいってるんだ・・・子供がいなくたってうまくいってる夫婦はいくらでもいるじゃないか!俺は少なくとも子供がいてもいなくても気持ちは変わらない。」
「だめよ!あなたは・・・エリカさんと一緒になるべきなのよ!」
・・・・・・・・・・・・・・
聡はエリカの方を向く。
「・・・二人はこう言っている。・・・・で?お前はどうするんだ?」
エリカは思ってもみなかった質問に驚くが・・・・
「あたしは智君が幸せになれるんだったら・・・・・・どっちでもいい。」
落ち着いてそう答えた。
聡は続けざまに亜希子に尋ねる。
「亜希子さん・・・・転勤の話、本当に行きたいんですか?」
亜希子は一瞬思案顔になったがすぐに、そしてきっぱりと答えた。
「ええ。何年も前から望んでいたポストだから・・・いくつもり。」
聡は亜希子に向かって頷き、智雄に向く。
「やっぱりお前次第じゃねえか!・・・・もうさんざん考える時間あっただろ?俺が見ている前でちゃんとしろ。」
苦悩に歪む顔で決断を迫られた智雄だったが・・・・
1分程の間があいてから喋り始める。
「俺・・は・・・二人とも愛してる。出来る事なら二人とも幸せにしたい。もちろん言ってる事がめちゃくちゃなのは頭じゃ理解してるんだ・・・でも、どちらかだけは選べない。だから、こんな情けない俺を見て、バカバカしくなったなら俺のほうから身を引くつもりだ・・・」
「・・・・お前・・・この期に及んでまだそんな事・・・」
「聡は黙ってて!」
エリカが口を挟んだ。みれば、亜希子もこちらをみて頷いている。
「亜希子さん・・・東京にいっても智君の事・・・愛してくれますか?」
「多分・・・でも当分仕事におわれてるししばらくは忙しいと思う。それに、結婚するつもりはなくなってたんだ・・・だからエリカさんとって思ってたんだけど・・・」
「智君・・・・あたしがお嫁さんになってあげる」
「エリカ・・・」
「おまけに、愛人公認!・・・いいでしょ?亜希子さん。」
「エリカさん・・・そんな事・・・」
目の前で常識的に考えられない会話がなされている・・・・・
『もう・・・好きにしてくれ。』
聡はエリカの為に一肌脱いだことを・・・・・・かなり後悔していた。
それから2か月して、亜希子は東京に旅立った。
智雄とエリカと亜希子は・・・・教会に3人で行き、誓いを交わしたらしい、もちろん新婦様が重婚を認める訳はないと思うが・・・・
戸籍上はエリカと智雄が夫婦となり、二人で住居を構える。そして亜希子と智雄が東京と福岡を行き来する事になったそうで・・・・まったく呆れてものも言えない状況だが、少なくとも当の三人は極めて大真面目にだした結論であり、それ以上聡がとやかくいえる訳もない。
人には人の数だけ愛の形がある。たとえそれを他人が理解出来なくとも、当人達が幸せならばそれでいいのではないだろうか・・・・・・
『まっ・・・・いいんじゃないの!いつまで続くかしらないけど・・・・』
聡は男と女について、自分の理解出来ない感情があるという事にまた新鮮な驚きを感じていた。
さてさて・・・・あの三人は一応かたずました。そろそろ聡にドキドキも見てみたいですねぇ・・・