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バーテンダー

バーテンダー・・・窮屈な社会に一滴の安らぎや癒しを求めて、人はbarに行く。

「お待たせいたしました。」



バーテンダーはそっとグラスを置いた。程良くステアされたロックグラスが汗を掻き、琥珀色の液体を波打たせる。この店は丸い氷は使わない。氷が鼻につきウイスキーの香りを楽しめないからだ。



この店のオーナー三浦聡。20代の半ばで独立し、景気のいい時には、ここ大名と中州に二軒のバーそして長浜にレストランを構えていたが、ここ3〜4年の不景気に一昨年に一軒、昨年もう一軒と店をたたみ、今ではこの大名の『Bar・saint・wave』だけが手元に残っている。




常連と友達そしてこの街の人達との付き合いが聡の最後の財産。スタッフは全員辞めてもらった。紹介してよそのバーに移った者も、独立した者もいる。







開店は19:00、閉店は5:00・・・・あってないようなものだが。

流れは三度ある。まず開店直後、OL、サラリーマンで賑わう。そして1:00頃、近くのラウンジ、スナックの綺麗どころが店が引けてからお客さんに連れられてくる。

最後に3:00〜一癖も二癖もありそうな顔色の悪い客層・・・・・同業者である。

中州、大名の老舗は3:00頃締める店が多い。若い頃同じ店で修行した仲間や、堂々とライバル店の視察におとづれる者・・・・いろんな人種が集まってくる。


やっかいなのは、この同業者・・・5:00閉店と看板に書いているのを読んだ上で5:00前に駆け込み8:00、9:00まで居座り続ける。


まあ、もっともそんなお客様だからこそ、『居心地』がいいようにと配慮する聡ならではのサービスなのだが・・・・






「もう、起きたほうがいいんじゃないですか?8:00ですよ佐竹さん・・・」


「・・・うーん・・・ええっ?もう8:00?!聡!もっと早く起こしてよ!」


「6:00に1回、7:00に1回起こしましたよ!、店の後始末しないで来たっていってたから何度も声掛けたのに・・・」


「・・・そっか・・すまん!、じゃ帰るわ!チェック」


そう言いながら両手の人差し指でクロスをつくる。佐竹光利35才、老舗BARサボイのチーフバーテンダーである。


「それも5:00頃頂きました。」


「?誰に?」


「マスターが来られて、払われて行かれましたよ。」


「ええ?・・・・・まじで?、なんか言ってた?」


「・・・ま、ちょっと呆れてましたけど・・・」


「うわー・・・俺もう行くわ!ごめんな長居して!」


「ありがとうございます。気をつけて下さいね。」


サボイのオーナーマスターである末光氏は聡も修行中にずいぶんお世話になった人で、独立する時にも、最初の中州の店舗の立ち上げには色々と骨を折ってくれた。今でも時々聡の様子をみにやってくる。まぁ・・・佐竹などからすると煙たい事この上ないようだが・・・






店の戸締りまで終えるともう9:00になっていた。


「洋介怒ってるかな・・・」


聡の一粒種である息子の洋介は小学4年生、今年10才で、離婚して今は実家に住んでいる。出来るだけ朝だけでも一緒に飯を食う事にしてはいるのだが・・・こういう朝もある。

もう還暦になる聡の母が面倒を見てくれている。






朝のうちに釣銭の準備と売上の入金を済ませてやっと帰宅。







もう時計は10:00を回っている。15:00に目覚ましをセットして布団に入る。





うとうとしだした頃、突然の着信音。友人の片山智雄からだ。時計は12:30を指している。


「はい・・・お前何度言ったら解るんだ!この時間に電話はやめてくれよ!」


『すまん・・・寝てるかなとは思ったんだけど・・』


「で?・・・なんか急用なんだろ?」


『ああ、今度誠一の結婚式での余興、やっぱバンドするらしい。お前ボーカルとドラムどっちかいいか聞いといてくれって、誠一が。』


「そんな内容なら夜でもよかっただろうに・・・曲は?」


『グラナダから一曲、saint・waveから一曲、あとはブルースブラザーズのサントラから一曲っていってたかな?』


「ええ、うちのオリジナルもやるの?グラナダからのだけでいいだろ?」


『・・・だって誠一の希望だから・・・』


「まあいいや、じゃドラムにしとくよ。」


『判った。じゃ誠一がボーカルな!』


「お前は?ギターとか5〜6年触ってないだろ?」


『大丈夫!今度はまっちんがくるから、俺ベース!!』


「そうなんだ!久し振りだなぁ、まっちんのギター聞くのも・・」


『ちゅう訳で、よろしく!』


「ああ、判った。・・・それと、今どっち?」


『・・・・ああ、今月から亜希子さん。』


「お前な、たいがいに決めてやれよ、だいたい妊娠出来た方と結婚とか・・・」


『判ってるよ!俺も何度かそれぞれに話はしたんだけど・・・二人とも引かないんだよ。』


「まあ、お前の事だから・・・いいけど?」


『今日にでも音源持っていくよ。』


「了解!」













片山智雄、高校のころからの友人で、今では二人とも×一独り身、しかし、半年ほど前に、智雄のまわりでちょっとした事件があった。


それ以来、なにがいいのか二人の美女と智雄は奇妙な3角関係にある。(『誰が為に』参照)


もとはと言えば優柔不断な智雄のまいた種ではあるが・・・








とにかく早く寝ないと・・・少なくなった睡眠時間を眺めて、再び眠りにつく聡だった。

















いろんなお客様が登場します。その登場人物によって物語が動いていきます。

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