新入生歓迎トーナメント編 Battle2
ダナン達の強敵になるであろうキャラクターが登場します。
旧闘技場では第2試合が始まろうとしていた。
組み合わせはCランクとBランク。
ルーティがダナンとアミティエに言う。
「今からやる試合はCランクとBランクのやつだな。これはダナンとアミティエに勉強になる試合だと思うが
何か吸収してる暇も無いかもしれないな」
ダナンが不思議そうに聞き返した。
「先生、なんでですか?」
「まぁ観てれば分かるだろう」
Bランクのペアはレイ マクギリアンと
マーゴ マクギリアン。
この2人は附属の初等部、中等部で有名だった。
レイは体は小柄だが能力を密かに使い
支配してた悪党だ。
マーゴは大きな体でレイを守っていた。
だが、この2人の能力はBランクというだけあり
それを観た者は逆らえなくなるという。
アカデミーでは名の知れた2人なのだ。
アカデミーは高等部から新規で入学してくる組みと
エスカレーター方式で上がってくる組みがいる。
それのエスカレーター方式組みなのだ。
ルーティはダナンとアミティエに
Bランクの戦いを見て欲しいと思っていたが
相手がCランクでは正直相手にならない事を分かっていた。
第2試合の開幕のファンファーレが鳴った。
審判が入場を促す。
西側からCランクが入場してくる。
第2試合のCランクチームフラッシュは
1人は全身を光らせる能力でもう1人は全身から
煙を出す能力だ。
東側からBランクのレイ マクギリアンと
マーゴマクギリアンが入ってくる。
チーム名はカエサル。
両ペアが白い線の前まで来たところで
審判が両チームに向かってルールの説明をした。
「もう既に分かっていると思われますが
命を奪うことは固く禁じられています。
両ペアよろしいですか?」
「はい」
レイ マクギリアンが不敵な笑みを浮かべて言う。
「あぁ、命奪わなきゃ良いんだろ。分かってるっての。なぁ、マーゴ」
「…………」
「両チームの確認が取れたので
第2試合始めたいと思います。
それでは……始め!!」
試合開始の合図が鳴った。
レイがマーゴに言う。
「マーゴ、やれ」
マーゴは2メートルの巨体をゆっくり動かしレイの
前へ出た。
そして地鳴りのような声で叫んだ。
「ぶおぉぉぉぉぉぉお!!」
会場にいた観客はその声の大きさに悶絶し
耳を一斉に塞いだ。
ダナンとアミティエも耳を塞ぎ
体を縮こませた。
「な、なんだ!?」
「み、耳が…千切れそう…!」
マーゴはしばらく叫ぶと前屈みになり
体に力を入れ始めた。
「ぐぐ…うぅぅぅぅ…ばぁぁぁぁぁあ!」
ダナンとアミティエは衝撃的な光景を目にする。
マーゴの鼓膜を破りそうな雄叫びが終わったと思ったら次は体がどんどん大きくなっていった。
その体は試合開始前の5倍くらいの大きさになった。
約10メートル程の大きさになり、観客席に匹敵する
大きさだった。
観客はその姿に怯え叫び逃げ出す者も現れた。
「うわぁ!」
「なんだありゃ!」
「化け物か!?」
それを見たレイはマーゴに言った。
「マーゴ、早く終わらせろ。
見世物になるためにいるわけじゃないだろ?」
「……。ぶぁぁぁ!」
マーゴは再び叫び相手に向かって走り出した。
チームフラッシュはそれに応戦し
煙を放出してあたりを見えなくした。
「スモークドーム!
こ、これなら俺たちの場所も分からないはず…」
だが、この能力は自分たちの視界も奪うデメリットもあった。
大きなズンズンという足音が近づいて来ることが分かった。
「はぁはぁ…どこから来る…。この煙消せないのかよ!」
「無理だよ!消すことは出来ないんだよ!」
「くそ!どこから来る…!」
先程まで聞こえていたズンズンという足音が突然消え辺りを見回した。
体の上を覆う黒い影が現れ上を向いた。
そこには獣のような顔をしたマーゴがいた。
「くそ!これを食らえ!フラッ…!」
能力を発動した瞬間に体を左側に大きく吹き飛ばされ
壁にめり込んだ。
「ぐあ!うぐ…」
何が起きたのかマーゴの方を見てようやく理解した。
手の甲での薙ぎ払いが当たり吹き飛ばされたのだと
それを知り、地面に落ち気を失った。
_____
試合開始から1分が経過した。
チームフラッシュは残り1人になり、チームカエサルは優勢だった。
「俺1人じゃ…勝てない…ぎ、ギブア」
レイが遮るように言う。
「おいおい!まさか、まだ白旗あげないよなぁ!
俺はまだ能力も使って無いんだぜ?
まっ、Bランクの俺らに勝てるわけないか。
所詮Cランク止まりの低ランク能力者が。」
「くっ…こんな…」
「あぁ?どうした、悔しかったら掛かってこいよ。
俺はここにいるからよ」
「うぉぉぉぉお!この!」
レイに向かって走り出したが20メートル手前で
体が宙に舞った。
鈍い音がした。
それはマーゴの攻撃によるものだった。
3メートル程の高さから落下し気絶した。
「結局、今回は何もしなかったなぁ」
レイは空を見上げて言った。
審判たちがチームフラッシュの2人にに駆け寄り
身体の安否を確認した。
「2人とも気絶しているだけです」
主審が勝敗を言った。
「第2試合はチームフラッシュの戦闘不能により
チームカエサルの勝利です!」
「マーゴ、戻るぞ」
「………」
10メートルあった巨体が元のサイズに戻った。
そして2人は去っていった。
観客は第1試合より少し小さめの盛り上がりを見せた。
「うぉぉぉぉぉ!」
観客達が叫ぶ。
第2試合は約2分で終わりとなった。
___
第2試合が終わり第3試合までの間の時間で
ルーティはダナンとアミティエに話をすることしにした。
「これがBランクのいる試合だ。
まだ試合をしていない2人に言っておきたい事がある」
ダナンとアミティエはルーティの方を向いた。
「良いか?このトーナメントで、もし勝ち進んで
Bランクと試合をする事になったら…。
試合開始と同時にギブアップを宣言しろ。
今のお前らじゃ勝てない」
それを言われたダナンは下を向いた。
「嫌です…」
アミティエはダナンを見て言う。
「ダナン君…」
ルーティは眉を潜めて言う。
「いいか?Bランク以上の奴らは能力を加減してこない。ルールなんてのはあって無いようなものなんだよ!だから、ギブアップを…」
ダナンは顔を急に上げてルーティに目を大きく開けて言った。
「あんな楽しそうなのに嫌ですよ!
正直怖いですけど
それを超える興奮が僕の中にあるんです!!」
アミティエはそれを見て小さく笑った。
「ぷふっ、ダナン君らしい」
「なんだよ!良いだろ!?
それにアミティエだってBランクの強い奴と
戦ってみたいだろ?」
「自分よりも格上の人と戦うことで負けるかもしれないけど、そこから学ぶことも多いと思うから
私もBランクと戦ってみたい」
2人の話を聞いたルーティはため息をつき
頭を抱えた。
「全く、お前たちは先生の言うことを聞かない
悪い生徒だ」
ダナンとアミティエはそう言われて
互いを見て笑った。
やれやれと思っているとニルスから通信が入った。
「先生?聞こえてますか?ニルスです」
「お、待ってくれ。場所を移す」
ルーティは座っていた席を立ち人気のない通路に来た。
「いいぞ。そっちの様子を報告してくれ」
「こっちは第2試合と第3試合が終わって第4試合が
もうすぐで始まりますよ」
「こっちは第2試合がさっき終わったのに
随分早いな」
「第2試合はCランクとDランクだったんですけど
Dランクが早々にギブアップして終了。
第3試合もCランクとDランクで
試合開始1分で勝てないと思ったらしく
Dランクがギブアップしたってわけです」
「なるほどな。今年の1年生は諦めるのが
早い生徒が多いな」
ニルスにミノーに売り子に食べ物を
爆食いしないように言っておくようにと伝え
ダナンとアミティエの所に戻った。
「ダナン、アミティエ。次が第3試合でその次が
お前たちの試合だから各自準備しておくように。
それからアミティエ、刀はどこに置いてきた?」
「あれは選手控え室の
大型の専用ロッカーに入れてます」
「そうか。ちょうど良いかな。
まだ明確に断言は出来ないから可能性の話として
聞いて欲しい」
「なんですか?」
「あくまでも俺の憶測に過ぎないんだがな…」
ルーティのにえきらない様子に
アミティエは首を傾げた。
「先生、どうしたんです?」
「もしかすると
アミティエの刀が使えないかもしれない」
アミティエはルーティの衝撃的な言葉に驚いた。
「え…?嘘ですよね?あれが無いと戦えません!」
それを聞いていたダナンも横から入ってくる。
「え!?そうなんですか!?」
「うーむ。通常、体1つで戦う事が主になってるからな。それにアミティエの刀は武器だ。
ルールでは身に付けるプロテクター類か自前の武器ではない物の持ち込み及び着用が認められるってなっているわけだ。
下手をすれば試合が始まる前に不戦勝になって
強制的に負けになる可能性もあるってことだ」
アミティエは試合前にして事態が急転直下していくのを感じた。
更にルーティは2人を追い込む事を言う。
「あと、お前らにトーナメントの組み合わせは見せたのを覚えているか?」
「はい。覚えてますよ」
「それが?」
「なら出場者のプロフィールは見たか?」
「え?はい、見ましたけど…。アミティエも見たよな?」
「うん、見たよ。先生から貰った物だけど」
「そうだ。お前らが見たのは俺が渡したやつだ。何か気付かなかったか?」
ダナンとアミティエは2人で顔を合わせ思い当たる節はないと返事をした。
「ふむ。俺が渡した紙にはお前らのプロフィール欄の
能力詳細が書かれてなかったはずだ」
「え?確かに思い返せば、そこだけ無かったかも」
アミティエはポケットから取り出して確認する。
「えっと…あ!ホントだ!私たちのが無い…!」
2人はルーティの方を見る。
「そうだ。お前たちだけがそこに書かれていない」
「先生、どうしてですか?」
「それは……。ふむ。正直に話そう」
ルーティは辛そうな表情をして言った。
「お前らはプロフィールに能力不明と書かれているんだ」
「能力不明…?なぜですか?僕らには
ちゃんと能力があるじゃないですか!」
「これは身体検査をした時のものを参考にしているから能力不明になってしまったんだと思う。
入学してから早々に行った俺のテストはアカデミー側からの指示で行ったものじゃない。
俺、個人が知りたいから行ったものだ。トーナメント表等の掲示物は作る専門の人たちがいるからな。
そしてこのプロフィールは観客も把握している。
お前たちの試合が始まったら何か心無い言葉を言ってくる観客が出てくるかもしれないんだ。
もし言われたら難しいかもしれないが無視してくれ。お前たちの先生なのに何も出来なくて本当に済まない」
ルーティはダナンとアミティエに頭を深く下げ
謝った。
するとダナンが突拍子もないことを言ってくる。
「でも、それって別の見方をすると
相手に能力を知られてないってことですよね?
そう考えたらこっちの方が有利じゃないですか!
それにアミティエの刀も使う事はダメとは書いて
ないんですよね?
なら、まだどうなるか分かりませんよ!」
ダナンは笑顔でルーティを見た。
「お前…」
「確かに、能力が知られてないのなら
対戦相手は対策のしようがない。
こっちに勝機が出てきたね!
それに先生。もし刀が使えなくても
どうにかして戦います。剣士ですから」
ルーティは2人の強い心に驚愕した。
ポジティブで負ける事は計算に元から入れてない。
これを見て、自分の心配や気遣いは最初から
必要は無かったと気付いた。
ダナンとアミティエは先生との話を終え
選手控え室に向かう。
第3試合が始まろうとしていた。
後々、立ちはだかるレイとマーゴが登場です。
悪役にしすぎないように書いていきたいです。