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ルナシスーー少女との出会い


 街の中央に足を運ぶと沢山の店が並んでいた。

 武器屋、防具屋、魔法屋、雑貨屋、飲食店など様々である。

 ヒズルはそのまま街を散策していると、人気の少ない裏通りに辿り着いた。

 そして細い裏道を進む。すると曲がり角の先から何やら物騒な会話が聞こえてきたのだ。


 ーーおいおい。お嬢ちゃんよ。そんなこと言わず俺達と遊ぼうぜ。


 ヒズルは壁の隅に隠れる。そしてこっそり頭だけを覗かせて様子を伺った。

 すると綺麗なドレスに身を包んだ少女が、強面の男三人組に囲まれているのだ。

 男たちは、青、赤、黄色とそれぞれ違う色のタンクトップを着ている。

   

 「は、離してください」


 赤服の男に腕を掴まれた少女は振り払おうと必死である。


 「そんなこといわないでさ」


 赤服の男は少女に近寄る。

 すると少女は、イヤッと叫び、赤服男にビンタをお見舞いした。

 頬を叩かれた男は、てめえ、と憎々しげに放つと少女を突き飛ばした。


 「こうなりゃ頬っぺたにチューの刑だ。お前ら押さえつけろ」


 青服と黄色服の男は、ひひひ、と薄気味悪く笑うと、少女の腕を掴もうとした。

 それだけはイヤ、と少女は悲鳴をあげる。

 

 ヒズルは、どんな刑だよ、と心の中で突っ込みを入れた。

 仕方ない助けてやるか。ここは一つ男を見せるぜ。

 

 ヒズルは、おいお前ら、と大声を出すとゆっくりとした動作で通りに出る。

 格好良く振る舞おうとしているヒズルは、もらったばかりのズボンのポケットに手を突っ込んでいた。

 そして「悪ふざけもその辺に」、と言いかけた時、地面に落ちていた小石に足を引っ掛け盛大にこけてしまう。


 振り返った三人の男達は、呆けた表情をしている。


 そして何が起きたのかをようやく理解したのか、赤服の男がおっかなびっくりに喋り出した。


 「コ、コイツまさかこけたのか。この大事な場面でこけたっていうのか」


 「う、うそだろ......一番の見せ場だぞ。あ、ありえるか。そんなこと」


 自分が同じ状況に陥ったならと考えたのか、青服の男は顔から火が出るほど真っ赤になり、そして両手で顔を覆った。


 ヒズルはゆっくりと起き上がると、三人の男達に向き直った。

 すると突然、黄色服の男が、あっ、と何かを思い出したかのように声を荒げた。


 「コ、コイツ、たしか少し前に検問所で兵士と揉めてた奴だぞ」


 と言いながら黄色服の男はヒズルを指さしていた。


 「なんだと!! 検問所でだと!! 検問で引っかかるなんて何をやらかしたっていうんだ」


 驚愕の表情になる赤服男。 


 「お、おれ聞いちまったんだ。コ、コイツがそのーー」


 「やかまわしい!! 好き放題いいやがって!!」


 ヒズルはブチ切れた。羞恥心と怒りで頭に血が上ったのだ。

 怒りの矛先は舗装された地面となり、思い切り踏み付けられる。

 すると地面は砕け、その場を中心に亀裂が走った

 その破壊力を目の当たりにした男達から血の気が引いていく。


 「おい、そこの赤と青」


 堰を切ったようにヒズルは暴走する。


 「「は、はい」」


 二人は威勢よく返事をする。息もぴったりである。


 「俺は転んでない? そうだな」


 「「勿論です」


 間髪入れず答える二人。


 「そして、そこの黄色」


 「な、なんでありましょう」


 戦々恐々とする黄色服の男。


 「俺とお前は、お互い初対面。そうだな?」


 「全くもってその通りです」

 

 黄色服の男は、うんうん、と上下に激しく首を振った。


 「じゃあ早く俺の前から消えろ」


 男達は脇目も振らず逃げ出して行く。

 それに乗じてヒズルもその場を去ろうとした。


 「待ってください!!」


 ヒズルの作戦は失敗した。

 ヒズルは恐る恐る振り返る。すると少女が駆け出してきているのだ。


 「待ってください!! 私の王子さま」


 「え?」


 そして突如、ヒズルの胸に飛び込んできた。

 ヒズルは予想外の展開に辟易した。


 「えーと俺が王子様? 自分で言うのもアレだけど相当みっともなかったと思うけど」


 「そんなことありません。素敵です」


 少女は純真無垢な瞳でヒズルを見つめる。


 素敵? 俺が?

 そうか。素敵だったのか、俺は。

 そうだな、俺は素敵だったんだ。

 終わり良ければ総て良しだな。

 ヒズルは自己暗示を掛け納得した。


 「まあ、それほどでもあるかな」


 ヒズルは切り替えの早さだけは一人前なのだ。


 「お礼がしたいので、もし宜しければ私の家へ来ていただけませんか?」


 恍惚とした表情を浮かべる少女。


 「お礼? お礼なんていいよ。そんなつもりで助けたわけじゃないし」


 謙虚な姿勢を示す。

 だが内心では、筆舌に尽くしがたいほど舞い上がっていた。


 「いえ、そうゆうわけにはいきません。ぜひ」

  

 そしてヒズルは心躍らせながら少女の家に向かうのであった。

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