ルナシスーー我が家
街は人々で溢れ返っていた。
街の住人は、人間が多いようだが、ちらほらと他種族も伺える。
ああ。何もかもが新鮮だ。異国情緒を感じる。
街の建物は、高さなど全て均一に揃えられていた。
また殆どが白を基調として建造されているので街全体が芸術的である。
ルーズィの家は街の北側にあるようだ。
南口から入ってきた二人は、北へ真っ直ぐ進んでいた。
しばらく進むと人気がなくなる。どうやら北側はスラムになっているようで情景が侘しい。
道中、この先わくわく魔道具店、という木製の標識を目にする。
誰だよ。こんなセンス悪い名前を付けたのは。
「着いたわ。ここよ」
ヒズルはルーズィが指さした家を見上げる。
そこには黒を基調として造られた禍々しい家が聳え立っていた。
屋根の両サイドは尖がっており、悪魔の城を彷彿とさせる。
入口前には、わくわく魔道具店、と記入された表札が飾ってある。
どうやらヘンテコな感性の持ち主はルーズィだったようだ。
「こっちよ」
ルーズィは両開きの扉に鍵を差し込み、戸を開く。
中に入ると薬品の匂いが鼻についた。左右の壁には腰高窓が付いている。
中央の奥側には木製のカウンターが備え付けてある。
カウンター内の棚には、奇妙な置物や不気味な本、その他アクセサリーなどが所狭しと山積していた。
棚の左側に通路が伺える。
ヒズルは、カウンターを通り抜け通路に向かうルーズィを後ろから追いかける。
すると上下のある階段に辿り着く。そして地下には降らず二階へ上がった。
二階へ辿り着くと、部屋の押し扉が五つほどみえた。
「適当に好きな部屋を使っていいわよ」
ルーズィはそう言い残すと、階下へ消えてゆく。
それからヒズルは全部の部屋を確認した。
どの部屋も大した差はなかったが、一部屋だけ天窓があったのでそこを自室にした。
しばらくすると、階段を登る音を耳にする。
そしてガチャッという音と共にヒズルの部屋の扉が開かれた。
「部屋ここにするの?」
「ここにする」
ヒズルは十畳間ほどある正方形の部屋を見渡した。
「そう。わかったわ。私、これから出掛ける用事があるから」
「え? どこいくの?」
「明日からまた店を営業するつもりなの。だから必要な材料を買い足しにいくの。
もし街を観光するつもりなら鍵渡しておくわ」
そういってヒズルに鍵を投げ渡すと、ルーズィは部屋を後にした。
「今後のことも考えたいし、観光でもしながらじっくり考えるか」
ヒズルは街を観光しに出掛けた。