ルナシスの門前
「おお。あれがルナシスって街か」
ヒズルの前方には周囲を万年塀で覆った街の外観が伺える。
「言っておくけど街中でオークの姿は見られないようにしてね。
変身が解ける少し前に、身体に何かしらの前兆が起こるから、それを合図に上手く立ち回って」
先ほど機嫌を直したルーズィが注意を促した。
そして街の入り口に辿り着く。入口前には、兵士と思しき屈強そうな人間が立っている。
兵士が装備しているのは西洋に登場する銀甲冑と類似するものだ。
兵士は街に入る人々に対して検問を行っているようで、入り口前には大勢の人間が並んでいる。
ようやく俺達か。
兵士は、先にルーズィのボディチェックを行う。
「よし。特に何も隠し持ってないな。行っていいぞ。
次はお前だが、なんだその格好は」
兵士の声が険しくなる。
「いや。えーと。そのこれは」
ヒズルは相変わらず腰布一枚だった。
変質者扱いされては困る。何か上手い事説得しなければ。
しかし妙案は浮かばなかった。
辟易するヒズルの姿を見た兵士はみるみる訝しげな表情に変わる。
「おまえ怪しいな。こっちにこい」
「ち、違うんです。変態とか。露出癖があるとかそうゆうんじゃないんです」
「なんだと!! おまえ露出癖があるのか。とんだ変態野郎だ。しょっぴいてやる」
「待ってください」
ルーズィが助け舟を出す。
「この男、確かに露出癖のある変態に見えますがーー」
「おい」
「しかしそうではないんです」
「なんだと? ではこの格好はどう説明する」
「それはーー」
重い悲話を語るような、とても悲しい表情をするルーズィ。
「もみくちゃにされたんです、雄のオークに」
「「は?」」
兵士と声が重なる。
「私が気付いた時にはすでにーー手遅れでした」
ルーズィは、助けられなくてごめんね、と訴えかける目線をヒズルに送った。
後で覚えておけよ、このアマ。
「そう......だったのか。さぞ尻が痛んだことだろう。
わかるわかるぞ。その辛さ。俺にもその経験があるからわかる」
「「え?」」
「よし。行っていいぞ。掘られたよしみだ。あっ、ちょっと待ってな」
兵士は、どこからかシンプルな白のTシャツと黒色のズボンを持ってきてヒズルに渡した。
「あ、ありがとうございます」
そして二人は無事に街へと入る。