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2.3人の勇者



 次の日。


 起き抜けに四郎たち勇者一行は、宮殿の広間に集まるよう連絡を受けた。


 早起きした四郎が連絡を聞いて一足先に広間で待っていると、一人の男が暇そうにしている四郎に近づいてきた。


 例の3人組の一人でキョウシロウと呼ばれてた男だ。


「おはよう。意外と早起きなんだな」


「……それはこっちのセリフだよ。もう少し待たされるかと思ってた」


「ははっ、こんなの部活の朝練に比べれば大した時間じゃない」


 茶髪のイケメンは、まるで四郎と元から知り合いだったかのような雰囲気で会話を進める。


 これがリア充のコミュ力というものなのか。


「俺は相良 恭志郎だ。これから勇者の活動で一緒になるだろうから、よろしく!」


「僕は四郎。山田 四郎。よろしく」


「おっ! シロウつながりだな、幸先がいいぞ。お前とは仲良くやっていけそうだ」


 そう言って恭志郎に肩を組まされる四郎。


 いつの間にか友達認定されてしまったようだ。


 まあ、異世界で同じ境遇の同い年の男は今のところ四郎ぐらいしかいないから仕方ないのかもしれない。


 これから知らない世界で生きていくのだ。

 彼だって痛みを分け合う男相手が欲しいのだろう。


 そんなわけで、恭志郎と他愛のない話をしていること数十分。


 残り二人の女子が眠そうな顔でやってきた。


「ふわあぁぁ。はよー」


「おはよう、恭ちゃん……って」


 二人は恭志郎を見て微笑んだかと思いきや、横にいる四郎を見て、その顔を引きつった笑みに変えた。


「あ! 裸の人」

「変態……」

「変態ちゃうわッ」

「ヒィッ!?」


 四郎の怒鳴り声に、リサと呼ばれていた方が怯え、アカネというツインテ女子がリサを庇う体制に入る。


「大丈夫! リサはあたしが護るから」


「アカネちゃん……」


 何のコントがしたいのか、冤罪を吹っ掛けられた四郎が憤慨していると、よくやく恭志郎が抑制にかかった。


「まあまあ、二人とも落ち着け。彼は俺たちと同じ勇者だ」


「てか恭志郎。そいつと知り合いなの?」


「もう知り合いだ。な、四郎?」


 この場を取りまとめようとするイケメンのウインクに、四郎も苦い顔で頷く。


 いらぬ誤解は解かなければならない。


「……山田 四郎、よろしく。あと昨日のアレは風呂上りだったからで、僕は変態じゃない」


「まー、一歩間違えれば正真正銘の全裸だったかもだし、気を落とすなよ。お前の沽券はまだ生きてる」


「余計な一言をアリガトウ、恭志郎クン」


「ま、そんなわけで、彼は俺と同じ健全な男子の一人だ。昨日の件はトラブルだし、大目に見てやってくれ」


 まるで四郎が昨日、何かをやらかしたと言いたいような言い回しだったが、それで許されるのならもう何だっていいだろう。


 二人もばつの悪そうな顔で謝ってくる。


「あー、そーゆーこと。変な勘違いしてごめんね。あたしは三浦 茜。茜でいいよ。で、こっちは」


「……倉本 理沙、です。さっきはごめんなさい」


「ということだ。晴れて誤解も解けたんだし、勇者同士、これから仲良くしていこう!」


「そうだね……」


 まだ思うところはあるものの、二人の謝罪でひとまずわだかまりは消え去り、ちょうどそこに鎧を纏った二人の兵士がやってきた。


「――全員揃っているようだな。では今日の予定についてだが、朝食の前に、君たちにはある場所で適性の検査を行ってもらう」


「えー!? 先に朝ご飯食べたいー!」


「我慢してもらう他ない。それに検査はすぐに終わる。ついてきたまえ」


 茜以外はなんの疑問も口にしないまま兵士についていく。


 ただ兵士は、四郎たち4人を見て“全員”と言った。


 あの眼鏡男子は結局帰ってこなかったのだろうか?


 もしこのまま帰ってこない場合、王国は眼鏡男子をどうするつもりなのか。


 あの話が本当なら、敵国に勇者が控えている現状で、仮にも勇者の力を持った人間をずっと野放しにする選択をとるだろうか。


 反抗的だった彼の態度は、王国に味方かどうかの不信感を与えたのでは?


 そう思い立ったとき、王国は彼にどういった対処をとるのか……。


「ん? どうかしたか、四郎? なんか浮かない顔だが」


「……いや、なんでもないよ」


 そこだけが妙に引っかかっていたが、迂闊なことは口走らない方が身のためだと、四郎はその疑問を心の奥に閉まった。


 胸騒ぎが起こるのは、四郎がまだこの世界を知らなすぎるせいか、あるいは――。



―――

――



「着いたぞ。ここがギルドだ」


 兵士に案内されてきたのは、王国の城下町に位置する巨大な建物の前だった。


 城の外は、だいたいが木製の家や建物で繋がっている密集地帯で、四郎たちの知っている現代社会とは大きくかけ離れた世界観ではあったが、多くの人と声で激しく賑わっていた。


 特に軽装の鎧や武器を装備して歩いている者を見ることが多く、やはりここは異世界なのか、と納得する反面、いまだ夢を見ている気分だ。


 恭志郎に至っては、もうワクワクが止まらないご様子だ。


「すげー、マジで異世界なんだな」


「それにあたしたち、さっきから結構注目されてない?」


「まさか私たち、場違いに思われてるんじゃ?」


 理沙の消極的な問いに、兵士が笑いを含ませた声で答える。


「何を言う。将来、この国を導く勇者となる者たちだ。一目見ようと野次馬が押し寄せるのは当然のことだろう?」 


 どうやら、四郎たちが勇者だという事実はすでに広まっていることらしい。


 町が活気づいているのもそのせいか。


「それで、俺たちはこれから何をやらされるんすか?」


「簡単なことだ。君たちにはまず、『冒険者登録』を行ってもらう。このギルドでは『冒険者』という職を登録する際に、その人間の“波動”……つまり能力や情報を確認することが出来る。君たち勇者の、現在の能力を知る必要があるからな」


「もしかして、血とか取られたり?」


「そう身構えることはない。検査用の水晶に触れるだけだ」


 ギルドに入ると、兵士の言っていた冒険者らしき人達がテーブルを囲んでガヤガヤ話したりと、これまた騒がしい状況だった。


 受付まで歩く四郎たちに視線を飛ばす者もいた。


 まるで品定めされているかのような感覚に、女子二人はおろか、さすがの恭志郎も顔を強張らせて、黙って歩く。


「お待ちしておりました。準備は整っています。あちらへ」


 兵士が何を言うまでもなく、受付の女性から手招きされる。


 彼女に案内されたのは、個室だった。

 中央の台に水晶が置かれている。


「ではお一人ずつ、この水晶に手を置いてください」

「じゃあ、まずは俺が」


 真っ先に恭志郎が先陣を切り、水晶に手を置く。


 その様子を固唾を飲んで見守る兵士や四郎たち。


 ふと、彼の触れている水晶から光りが飛び出し、空中に文字を刻み始めた。


 その不思議な光景に四郎たちは目を離せなかった。


 この異世界に来て初めてのファンタジーを垣間見た気がした。


 しばらくして光の流れが止み、そこには宙に浮いている金色の文字だけが残っていた。 


―――――――――――――――

キョウシロウ サガラ 18 男

種族:人種

称号:勇者


波動操量:3000

波動質:赤 青 黄 緑

波動術:---

―――――――――――――――


「うそ!?」

「こ、これが勇者の能力だと!?」


 受付の女性や兵士が驚愕と言わんばかりの反応を示す。 


 恭志郎本人は、何がすごいのか分かっていないため「え、え? これヤバいの?」とさっきから連呼している。


 その後も理沙や茜の適性検査で恐ろしい値を叩きだしたのか、兵士たちの驚きの声が止むことはない。


「やったね理沙! あたしたちこれで本当に勇者だよー!」


「なんだか分からないですけど、キョウちゃんと一緒なのはうれしいです」


「ああ、夢みたいだ。四郎も早く見てみろよ! きっとすごい結果だぜ!」


「だといいけど」


 3人の検査が終わり、ついに四郎の番がきた。


 少し緊張しながらも、水晶に手を置き、そこから光が飛び出す。


 後ろの兵士と受付の女性は、今までの流れか、もう期待のまなざしで四郎を見ている。


 その過剰すぎる期待に添う能力だといいんだが。



「――え?」

「なッ!?」



 光が止み、その文字に目を向けた二人の顔が。


 今までにないほど驚愕に染まった。


 彼等だけではない。


 恭志郎たちや、四郎自身も。


――――――――――――

シロウ ヤマダ 18 男

種族:人種

称号:異世界人


波動操量:10

波動質:無

波動術:---

――――――――――――


 能力の内容が分からずとも、それが何を表しているのかは、はっきりと分かった。


 この場にいた勇者は、“3人だけ”だということだ。



―――――――――――――――

アカネ ミウラ 18 女

種族:人種

称号:勇者


波動操量:4300

波動質:赤 黄 黒

波動術:---

―――――――――――――――

―――――――――――――――

リサ クラモト 18 女

種族:人種

称号:勇者


波動操量:3500

波動質:青 緑 黒

波動術:---

―――――――――――――――

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