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1.始まりの日



 風呂上り、四郎は見知らぬ宮殿にいた。


 何を言っているのか分からないだろうが、それは四郎自身にも言えることだ。


 唯一分かっているのは、自分が腰に巻かれているタオルのみの素っ裸な状態で、赤白豪華なローブを羽織った、知らないおっさんたちに囲まれているという事実。


 間の抜けた顔のまま、四郎はまともに反応することができなかった。


 こんな顔だ(´・ω・)


「――5人? まさか失敗か?」


「いや、そんなはずは……」


 おっさんたちが何か言っている。


 やっとのことで我に返った四郎は、まずは自分がどういった状況に置かれているのかを把握することに専念した。


 とりあえず辺りを見渡す。


 場所は白くて広い建物の中。

 少なくとも四郎の家ではない。


 であればここはどこか?


 その疑問を考える前に、四郎はある重大なことに気が付いた。


(着替えないじゃん……)


「――ここ何処だよ」

「あれ? なんで私……」

「リサ! 無事だったか。ここは一体……」

「え!? リサにキョウシロウ!?」

「アカネ! お前まで」

「え? ちょっ、これどゆこと?」

「私たち、さっきまでカラオケしてたはず……」

「分からない。だがあの老人たちは何か知っていそうな雰囲気だけどな」

「なにあれコスプレ? いい年したおじいちゃんたちが……」

「きゃッ!? え、なに、裸!?」


 どうやらこの状況に混乱しているのは四郎だけではなかったようだ。


 少なくとも、四郎と同じようにおっさんたちに囲まれている人間が他に4人。


 キョウシロウ。

 イケメン風の茶髪男子。


 リサ。

 へたり込んでいる黒髪長髪女子。


 アカネ。

 おっさんを見てドン引きしてるツインテ女子。


 そして最初に発言した制服姿の眼鏡男子。


 最後に、腰巻きタオル一丁のすっぽんぽん系男子、四郎。


 このカオスなメンツに、さすがのおっさんたちも動揺を隠しきれない様子だ。


 よくわからない静寂がこの場を支配する……。


 だがそれもつかの間。

 バーンと勢いよく後ろの扉が開かれ、戸惑うおっさん達をよそに、頭にちっちゃい冠を付けたドレス姿の少女が現れたのだ。


「勇者様ですか!? お願いします! どうか私達の国をお救いください!」


 そんなことを言いながら……。



―――

――



 訳も分からぬまま、四郎たちは宮殿を移動し、国王と名乗る者との謁見の場に出された。


 ちなみに四郎は裸のままだ。


 皆分かっていたはずだが、これが本来のスタイルだとでも思われたのか、あえて誰も四郎には関わらなかった様子だった。


 慈悲の欠片もない集団に、四郎は一人、寒すぎて心の中で泣きそうになっていたことは言うまでもない。


「――よく出向いてくれた、勇者たちよ。吾輩の名はテリオス・ロード・アストラ。この国、アストラ王国の国王を務めている」


 テリオス国王はRPGによくありそうな長い説明を始める。


 然り、ここは人界アストラ王国という人類領土であり、戦争の真最中であること。

 然り、攻め入る魔界ダース帝国の魔王が勇者召喚を使い、別の世界から強力な勇者を呼び出したこと。

 然り、こちらも奥の手であった召喚で対抗しようと考えたこと。


 そして召喚された四郎たち勇者の目的は、敵の手に落ちた勇者を討ち滅ぼすこと。


 まるでド〇クエの中の異世界だった。


「……つまり、俺たちに人殺しをしろと?」


「む、無理だよ……、私たち学生だよ」


「其方たちの言い分はもっともだ。だが問題はない。其方たちはこちらの世界では魔王を超える力を持っている。我々はそれを『異世界の勇者』と呼んでいる」


 勇者召喚には前例があるため、以前は1人、常識外れの力を持った人間が「ニホン」から来たとのこと。


 その人間はもう寿命で死にはしたが、魔王を倒し英雄の地位を手に入れたとも国王は話した。


 メリットを告げることで四郎たちの協力を得やすくするつもりなのだろうか。


 だがそこで、脇に控えていたおっさんの一人が横槍を入れた。


「しかし陛下! 今回召喚された人間は5人。前回の記録では1人だったはずでは?」


「ならば5人とも勇者なのであろう。最強の戦力が多いに越したことはない」


「しかしこれは異例の事態で……」


「大臣よ、口を慎め。吾輩に恥を晒させる気か?」


「い、いえ……」


「勇者たちよ、ここは一つ、この国のために一肌脱いではくれまいか?」


 否定的な大臣を言葉の圧力だけで沈め、国王は皆からの合意を問う。


 といっても、この状況でNOと言える日本人はほとんどいないだろう。


 四郎を含め、女子二人なんて、完全にビビって引け越しになっている。


 逆にキョウシロウとかいう学生は目をキラキラさせているが。


「はい! 是が非でも、やらせて頂きたい!」


「ちょ!? キョウシロウ!」


「何言ってるの!?」


「二人とも心配いらないさ。俺に任せておけ」


「……まあ、帰り方分からないわけだし」


「キョウちゃんがそう言うなら」


 だめだこりゃ……。

 女子二人もキョウシロウの熱に引っ張られて渋々ながらも了承してしまった。


 それを全員の合意と受け取ったのか、国王は満足そうに頷く。


「うむ。そう言ってくれると思っていた。歓迎しよう、我が勇者たちよ! ではこれからの日程についてだが、そこの兵士に――」



「あんたらの勝手な都合に付き合うつもりはない」



 思いもよらない一言に、場が凍り付く。


 発言したのは四郎……ではなく、その横で不愉快そうな表情をした眼鏡男子。


 そのあからさまな態度に、キョウシロウが「まじかよ」と呟いた。


 国王は未だ固まったまま、周りの兵士がざわざわし始める。


「聞こえなかったのか? 断るといったんだ。早く元の世界に帰してくれ」


 国王の圧力など物ともしないその神経に、大臣やローブじいさんたちが顔を青くしていた。


 が、それで引き下がる国王でもない。


「……そう言わず、我々に協力してはくれまいか? 褒美は勿論のこと、こちらにいる間は、それ相応の待遇も保証する。終わった後に元の世界に帰りたいのであれば、それも約束しよう」


「死んだら関係ないだろ。戦争なんてまっぴらだ。今すぐに元の世界に帰してくれ」


「ダメかね……。しかし、多大な労力を払って発動した勇者召喚だ。敵の勇者を倒してもらわねばそこの神官たちの行いは無駄となるだろう。それに時間もかかる。たった一人を帰すために、おいそれと発動してやれるような軽い代物ではないぞ?」


「最初からそのつもりだったか。もういい。勇者ならそこに4人いるし、俺一人が抜けたところで大した変わりはないだろ。俺は俺の好きなようにやる」


 そういって眼鏡男子は一人、謁見の間から出て行ってしまった。


 少しの間の後、大臣たちが慌てふためく。


「陛下、彼は……」


「よい。一時は彼の好きにさせておこう。すぐに戻ってくるであろうしな」


「は、はあ……」


「……あ、あのー。俺たちは」


「おう、そうであった。予定についてはそこの兵士が明日案内してくれよう。その間はこの宮殿で休息をとるといい。おい! 早くこの者達に部屋の用意を」


 その後、微妙な空気になりながらも、王は再度皆からの了解をとり、明日に向けて準備を始めた。


 一応、四郎も了解したが、結局裸に関しては誰にも触れられることはなかった……。



―――

――



 波乱の1日が終わり、誰もが就寝に付く。

 明日からは、いろいろと忙しくなるだろう。


 そんな中、豪華なベッドに埋まり、まとまった服を身に着けた少年が一言呟く。


「――僕、一言も喋ってないんだが……」


 四郎の第一声を尻目に、異世界2日目が幕を開けようとしていた。



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