0.おぼろげな序章
〇月×日
人生とは、不可思議なことの連続だ。
ごく一般的な考えを持つお前が、過去の人生について一言でまとめるとこうなるだろう。
もちろん経験談から言えることだ。
人は予想だにしない出来事に遭遇すると、まともな思考ではいられなくなる。
間違った決断を下して、それに気付くこともできないまま先へ進んでいく。
それを繰り返すうちに、いつしか考えが変わってくる。
それが正しいと感じるようになる。
だが進みすぎて、ついに引き返せない状況になったときに初めて気づく。
そして後悔する。
俺もその一人だ。
お前がこの先どうなるかは分からない、今の俺にはどうすることもできない。
何が正しかったかなんて、もう分からない。
もうすぐ俺の役目は終わる。
俺が誰なのかとか、これは何なのかとか、そういう詮索はやめておけ。
今のお前には知る必要のないことだ。
お前は残された時間を、自由に平穏に生きろ。
俺からのせめてもの償いだ。
ただ追いかけられたら逃げろよ。
逃げ足になら自信がある。
リカイもついているから、分からないときはそいつにきけ。
きっと不自由になることはない。
お前は何もしなくていい。
好きに生きろ。
じゃあな。