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第10話

 そうこうしている内に、映画は大詰めに差し掛かっていた。

 ヒロインが参加している台湾民主国軍主力は、新竹から彰化へ、更に台南市へ、と徐々に押し込まれ、退却する一方だった。

 ヒロイン達は、懸命に抗戦するが、大砲の弾に事欠き、銃さえ前装式ライフルどころか、火縄銃が台湾民主国軍主力が装備する銃の一角を占める現状とあっては、抗戦にも限度があった。

 何とか、日本軍の進撃を食い止めないと、と一部の兵が、日本軍の背後へと回り込んでの奇襲、遊撃戦を試みるが、小松宮殿下は、それを読んで、一部の部隊を後方に回して、対処してしまい、効果は上がらない。


 更に、小松宮殿下は、海上では、日本軍が圧倒的に優勢にあることを生かし、台南市の更に南方、高雄方面に一部の部隊を上陸させることにより、台湾民主国の後背を脅かす作戦を展開する。

 高雄方面に、日本軍が上陸するのではないか、と劉永福将軍は、予測自体はしていたものの、高雄方面に割ける部隊が存在しないことから、やむを得ず放置せざるを得ない有様だった。

 そして、高雄方面に上陸した日本軍は、周囲を制圧しつつ、急速に北上する。

 劉将軍は、やむを得ず、一部の部隊を高雄方面に向かわせるが、日本軍の各個撃破の好餌に、それらの部隊は成る有様だった。


 遂に、台南市周辺にやむを得ず退却した台湾民主国軍主力は、台北方面から南下してきた日本軍主力と高雄方面から北上してきた日本軍の一部によって、周囲を徐々に包囲されるようになる。

 どうすべきか、劉将軍は、幕僚たちを集めて会議を開く場面になる。


 幕僚の一人

「台南市を脱出し、山岳地帯に逃げ込みましょう。そして、遊撃戦を展開するのです。多くの台湾の住民が我々を支持しています。長きにわたって、戦い続ければ、いつの日か、台湾は独立を果たせるでしょう」

 別の幕僚の一人

「台南市の市長以下、台南市民の多くが、台湾民主国に殉じる覚悟を固め、最後まで戦いたい、と言ってくれています。彼らの真情に応え、台湾民主国の最期をこの地で飾りましょう」

 他の幕僚たちも、思い思いの意見を述べる中、劉将軍は、瞑目していた目を見開いて言った。

「今から、私の想いを述べる。諸君は、この言葉に従え」


「我が台湾民主国は、日本への降伏が至当と考える」


 劉将軍は、落涙しながら、更に口を開いた。

「これ以上、戦い続けることは、日本に与える損害よりも、台湾民主国の人々が被る損害の方が大きくなるばかりだ。最早、我々には、人も武器も無いのだ。後日、台湾が独立できる時を信じて、今は武器を置くべき時だ。尚、これは、台湾民主国軍総司令官としての命令でもある。諸君の抗命は、断じて許さん」

 その言葉を聞き終えた幕僚たちは、ある者は落涙し、ある者は嗚咽した。


 劉将軍は、敢えて、それを無視して、部下の一人に命じる。

「台湾民主国政府に対し、軍の総意として、今の言葉を伝えろ。一刻も早く。これ以上、台湾の人々を傷つけるわけにはいかないのだ」

 部下は、会議の場から走っていく。

 そして、ナレーションが流れる。

「この瞬間、事実上、台湾民主国は降伏した。そして、台湾は、日本の領土となることが確定した」


 次の場面で、劉将軍は、広東行きの貨客船に、部下達に無理矢理、乗せられていた。

 日本軍の手に、劉将軍を渡しては、拷問の末に殺される、と部下達は考えて、広東に劉将軍を逃げさせようと算段したのだ。

 そして、ヒロイン達は劉将軍を波止場で見送ることになる。


「台湾が独立を果たした時、魂魄と化していても、台湾に私は赴きたい」

 劉将軍の声が、ヒロイン達の耳に入り、ヒロイン達は、それに応える。

「台湾が独立を果たした時、必ずや劉将軍を、お迎えに参ります」

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