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はじまりの日

母親が毎夜毎夜こっそりと出かけてしまう事を疑問に思った山野和也。母親の後をつけている最中に出会った少女と共に、山の主という狐の願いをかなえる羽目になる。母親も心配、少女も心配。少年和也の運命は?母親とは無事に出会えるのか?

のんびりほのぼのファンタジーを目指しています。

最近、母さんの様子がおかしいと思う。


朝は眠そう。昼はそわそわ。夜はウキウキ。

夜中は、俺が眠ったその後、こっそりとどこかに出かけていく。

眠った後のことが分かるのかって、それは、夜中ふと目を覚ました時に、きぃと小さい音の後で、玄関のドアが閉まり鍵をかける音がしたから。


最初はのどでも乾いたとか、突然アイスが食べたくなったとかで、コンビニにでも出かけたのかと思った。

だから気にもしなかった。

小さなガキじゃないんだから。


だけど、それが連日。

ここ1週間毎日となれば、話は別だ。


親父は単身赴任で、1年前から京都に行っていて、帰ってくるのは連休ぐらい。


夜中、40を少し過ぎたとはいえ女は女。

小さなガキも危ないが、大人の女だって、ババアだって、夜中は危ない。

違う意味で危ない。


うちに金が無くて、夜の店ででも働いているのかとも思ったが、こんな夜中から働くなんて、水商売だって違うんじゃないだろうか。


夜中の2時。


水商売ならもうちょっと早いんじゃないか?


なら・・・浮気?

母さんもしかして、浮気してる?


いや・・・でも、母さんは親父を愛してる。

子供が言うのもなんだが、誰が見ても分かり過ぎるほどに母さんは親父にぞっこんだ。

恥ずかしいぐらいに。

やめてくれって思うぐらいに。


毎日、朝と夜に電話して、スマホでメッセージ飛ばしあって、きゃっきゃうふふと若い娘のように喜んでいる。

連休で帰って来たときなんて、俺そっちのけでデートしまくって・・・

あれが演技だとしたら、俺、精神崩壊するわ。

誰も信じられなくなるわ。


だから、浮気でもない。

としたら・・・なんなんだ?


帰ってくるのは、いつも朝方。

夏が近いとはいえ、まだ薄暗い5時・・・出かけていつも3時間程で帰ってくる。

1時間ほど部屋で何かしてから、6時過ぎにキッチンに行って俺の弁当と朝ごはんを用意してくれる。

寝るのは、俺が学校に行ってから?

朝のおはようは、いつもあくびまじりで眠そうにしている。


朝は今まで見た事ないほど眠そうな母さん。

学校から帰って来た俺を迎えてくれる母さんは、妙にそわそわしている。

親父の事ではなくうきうきしてる夜の母さん。


いったいなんなんだ?


もう我慢できない。


母さんに聞いてみても「そんなことないわ、いつもと変わりないわよ」と、はぐらかされて。

もう我慢できない。


今日こそは・・今日こそは、母さんの様子がおかしい訳を突き止めてやる。


突き止めて・・・

突き止めて?

俺はどっさりとベットの上にうつぶせで倒れこんだ。

突き止めてどうすりゃいいんだろう?


浮気していたら、辞めさせればいいのか?

浮気じゃなかったとしたら、暴走族に入っているとか?

俺の貧困な脳みそでは、いったい何なのか、浮気以外では浮かんでもこない。

突き止めて、どうするかは、突き止めてからだ。


俺はベットから起き上がって、黒っぽいジャージに着替える。

靴下も黒だ。

闇に紛れるなら黒がいい。

警官や大人に怪しまれて、職質されなきゃ良いけれど。

東京とはいえ、片田舎。

夜中に人はそんなに歩いていない。そんなに・・ではなく、ほとんどか。

車もまばら。


それでも、たまに夜中にコンビニに行くことはある。

だから大丈夫だ。


何が大丈夫かよくわからないが、職質されたら「コンビニに夜食を買いに」って言えばいい。


気持ちが固まった。


俺は今日、母さんの後を追う。


きぃ。

玄関のドアが開いて閉まる音がした。


俺は急いで自分の部屋から飛び出して、階段を下り、玄関に向かった。

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