63 汚冥界:賓客の間15
⬛システィーナの視点
赤黒い濡れた賓客の間に!
清廉な力が! 光が! 迸る!
うああっ! 目が! 光で潰れる!
体が! 引き千切れる!
バラバラになるっ! うああっ!
それでも! 私たちは! しがみつくっ!
「アルシャッ! 一緒にっ! 帰るんだああっ!」
「フオォッ!」
離れてっ! 離れてっ!
「「嫌だあああっ!」」
こっ怖い! 怖い!
遠くの方に! 巨大な何かが!
とてつもない巨大な何かが!
いる! いる!
こちらを! 見ている!
怖い! 怖い!
でも! 離れる訳には!
いかない!
くうぅっ!
アルシャから! 無念の声!
と急激に、清廉な力が小さくなって!
波が! 引くように!
「「ああっ!」」
急激に力が!
急激に力が!
ああっ!
目の前の光が! 薄く!
ああっ! ああっ! 光体が!
光体が! 普通の肉体に!
ああっ! 思い止まって! ああっ!
私たちはそのまま抱きついたまま!
「ああっ良かっ! アルシャーネさ!」
「フオォ! アルシャーネ様! 良かった!」
「『良かった!』ではございません! 皆が助かるためには! これしかな」
「違う!」 私は遮る! 「『 皆 』の中にアルシャがいない!」
「その通りだ!」
「ですが!」
「後! 言い争いは後!」 私はピシャリと言い放ち! 「今のうちに! 逃げよう!」
私の言葉に二人もハッと!
アルシャーネさんは私とクラウディーアさんに肩を貸して!
逃げろ! 逃げろ!
くうぅっ! 足が! 痛い!
治ってるけれど!
とその時! 右前方、上から!
キチキチキチッッ!!
ああっ! ムカデが!
うああっ! 鎌首をもたげて!
ムチ! ムチ!
ああっ! ムチ! ムチがない!
ああっ!
「クオォ!」 クラウが! 戦棍を構え!「来いっ!」
「くぅっ! やはり私が!」
「ダメッ!」
その時! ドスドスドスドスッ!
重い足音!
同時に!
人の影がムカデを殴る! ゴンッ!!
ああっアレは!
「ノームッ!」 残りの一体が! 来てくれた!「今のうちに!」
「よし!」
ムカデに背を向け! 逃げる!
くうぅっ! 足が! 痛い!
でも逃げろ! 治ってる!
痛みに負けるな!
少しずつ逃げて! と!
キチキチッッ!!
「フオォッ!」
こっ今度は前方! 十数メートル先!
ああっ! マッマッ、マズイ!
私たちの行く手を! 壁のように!
左右に! 行く手を遮る節!
うああっ! 長い長い体が延々と!
前には行けなっ! ひぃっ!
無数の! 列なる目がっ!
ニタニタニタニタッ!
ひゃああっ! ききっキモ! 目が合っ! 背筋! ゾゾゾゾッ!
マズイマズイ!
長い体で! 通せんぼ!? マズイ!
う、迂回!!
キチキチキチッッ!!
キチキチッッ!!
「フオォッ!」
「ひゃあっ! そっ!」
そんなっ! そんなっ! ゾワッ! 背筋が!
後ろにも! 壁……! 無数の目が私たちを……!
「かっ!囲まれたっ!」
ひゃああっ! かかか囲まれた!
ぜ全身に! おお悪寒がっ!
ああっ!
ゾロゾロゾロゾロ! ら、らせん!? 描くような動き!
きき気持ち悪っ! 並んだ足が波打つように!
うああっ! ゾロゾロ円を描くようにっ! 奥の方までっ!
うああっ! 列なる目が! わわ私たちを! うああっ!
逃げ道が……! ああっ!
「フオォッ! 下がって!」 クラウが! 私たちの前に! でも周りを囲まれ! 下がってもムカデ!
「と、飛び越えは!?」
平べったいムカデ! 体高一メートルくらい!
飛び越えられる!?
ああっ! でも!
三重四重五重のらせんで! グルグル!
うああっ! ま、まるで台風っ!
台風のようにっ!
グルグルッ私たちを回りながらっ!
「な、何っ!? グルグルッ何!?」
「わ、我々を警戒!?」
グルグルグルグルッ!
とその時、背中の目がっ!
列なる目がっ!
「ああっ違う! 違う! 警戒じゃないっ!」 私は、震えっ! 真意にっ! ブルブルしてっ!
「フオオッ!」
そう、警戒じゃない!
警戒じゃないっ!
これはっ! これは……!
誰が最初に行くか……!
誰が最初に喰らいつこうか……!
お互いが、お互いを牽制しながら……!
ニタニタニタニタッ……
ワシャワシャ足を動かしながら!
背中の目で私たちを見上げながら!
うああっ! 足が……足が……震え……うああっ!
「大丈夫……怖がらないで」 アルシャーネさんが……私の手を……「やはりミシェリアしかありません」
アルシャーネさんが……! 覚悟の……ああっ!
「まっまだ何かっ! ほ方法がっ!」
「嫌だ! アルシャーネ様!」
「ありがとう……でも……」 アルシャーネさんが! 凛々しい表情で「覚悟を決めましょう」
ああっ! 嫌だ! 嫌だ!
ここまで来てっ! ここまで来てっ!
「~~~~~っっ!!」 ここまで来てっ!
台風がっ! 勢いを増すっ!
うああっ!
と! その時!
一匹のムカデが!
台風のっ! 端の方!
奥の方のムカデが!!
鎌首を上げ!
「え!?」
あらぬ方を!
私たちとは別の方を!!
次の瞬間!
ダンッ!
え!?
ダンッ!
炸裂音!?
ダンッ!
炸裂音!!
ダンッ!
遠くからっ!
ダンッ!
近づいて来っ!
ダンッ!
あの音はっ!!
「「あの音は!!」」
ダンッ! 一際大きく! 響いっ! 瞬かっ!
キュイイィィンッ!
甲高っ!
直立のムカデ!
光るっ亀裂!
縦横無尽!
太刀筋!!
ドガドガドガガガンッ!
「「ああっ!!」」
ムカデ! バラバラッ! 破片っ! 吹き飛んっ!
次の瞬間っ!
ダンッ!
奥からそれが飛び上がり!
台風の渦を越えっ!
グルグル回転してっ!
私たちの前にっ!!
ズシャッ!
降り立った!
「「ああっ!」」
太く長い足!
ドッシリしたお尻!
キュッとした腰!
逆三角形の背!
逞しい腕!
肩に担いだシュヴァイツァーソード!
反対の肩に! サラマンダー!
そして……栗色の柔らかそうな! 髪!
「「ああっ! あああっ!」」
どっどうして!?
「探したぜ!」 彼は首を回してニカッと! 「よく! 頑張った!」
左手で親指を立てる!
サーコートを纏った! 神殿騎士!
「「し、神殿騎士様!」」
「コックリ!!」
「ああっ!!」
ああっ! コックリが!!
コックリが!!
コックリが!! 来てくれたっ!!
うわあああああぁぁんっ!!
久しぶりに神殿騎士が出てきました




