55 汚冥界:賓客の間7
■システィーナの視点
赤黒い暗闇の空間に!
滴り落ちる水滴の間に!
荒ぶる闘牛の声がっ!
ヴモモモモオオオッ!!
あわわわっ!
飛び回るウィスプに苛立ち、怒り猛る!
ギョロギョロと動く巨大な目玉がっ! 気持ち悪い!
正に闘牛っ!
ブオッ! ブオンッ! ブオッ!
うああっ! 鋭利な爪が空を切る音がっ!
はち切れんばかりの重そうな筋肉なのに!
ウィスプを切り裂き叩き落とさんと動く様は俊敏で!
こ、これを五分抑えるっ!
ヴモモオオオッ!!
ああっ! 闘牛はウィスプに気を取られて!
こちらに気づいていない!?
もしかしたら、五分くらいならやり過ごせるかも!?
とその時!
「聖魔法! 波動砲っ!」
ダンッ!! ダダンッ!!
ああっ亀裂の底から! 炸裂音が!
大地が、空間が震えて!
ヴモオオッ!!
ああっ! ミノタウロスが!
音の方を見た!
気づいてしまった!
目の前を飛ぶウィスプに反応しなくなって!
「マッ!!」
マ、マズイッ!
私はマズイ展開が頭をよぎった!
もしこのままミノタウロスが亀裂の底に降りたらっ!
グールを含めて乱戦になる!?
アルシャーネさんを護りながらミノタウロスやグールと戦う!?
無理ッ!! できれば気づかせたくなかった!
「っ! そうか!」 閃いた私は、袋に忍ばせていた精霊を呼び出した! 「闇精霊! 出てきて!」
私の呼びかけに黒い球体が飛び出した!
それはウィスプの真逆の存在、闇の精霊!
「シェード! 闇を纏ってミノタウロスの顔に貼り付いて!」
私の指示に、闇の核は黒い衣を纏った!
そのまま闇の軌跡を残しながらミノタウロスの元に飛んでいく!
でもミノタウロスは明るいウィスプの空間にいるから気づいていない!
次の瞬間、シェードはミノタウロスの巨大な頭部に覆い被さった!
ボフゥッ!!
ヴモモモモオオオッ!!
突然の闇にミノタウロスは混乱の雄叫びを上げる!
そう、目隠しして見せなければ良い!
闘牛は首を左右に振ったり、手を目の前にかざしたり!
よし! そのままそうやってなさい!
私は亀裂の底を見ると!
「波動砲!」
ダンッ!
今まさにクラウディーアさんが!
ジャンプしながら虚空に後ろ回し蹴りを!
直後、左から右にグールが十数体吹っ飛んで!
さらに着地するとクルリと回転! 別の場所へ回し蹴り!
ダンッ!
ひゃあっ! カ、カッコイイ! 凄い綺麗な蹴り!
やっぱり戦闘力はコックリより上っていうのも頷けるかも!
クラウディーアさんならミノタウロスを含めた乱戦でも戦えるっ、とも思うけれど!
でも彼女も無敵じゃない! やっぱり私が抑えるべき!
と思ったその時!
ヴモモモモオオオッ!!
「うわあっ!?」
後ろから猛り狂う猛牛の声!
ああっ分厚い爪で闇を引き裂きまくる!
闇が千切れるようにボロボロと散っていくけれどすぐに新たな闇が現れて! うわわ、マズイ!
シェードの核が破壊されるまでは、この闇の目隠しは続くんだけど!
このままじゃ闇の力を使い果たす勢いで! ママッマズイマズイ!
「くっ!」
私は弓矢を番えて!
どうする!? どこを狙う!?
巨人や大型の獣人は骨が太くて硬くて丈夫で、それだけで天然の防具になってるの! 特に重要な臓器を護る肋骨や胸骨は、分厚く、隙間もないほど幅広い!
さらにはあのミノタウロスは、骨の上に分厚い圧倒的な大胸筋が!
「一か八か!」 私は弓矢を構えてガラ空きの胸部、左胸に狙いを定めた! 「はっ!」
ダンッ!!
矢は寸分違わずミノタウロスの左胸に!
闘牛が一歩後退!
片膝を着いて!
動きが止まった!
「や、やった!?」
肋骨の間から心臓まで達したっ!?
と思った次の瞬間!
ヴモモオオオッ!!
闘牛は胸から矢を引き抜いて!
頭に闇を纏ったまま巨大な手で自分に刺さったモノの形を探る!
ああっ全然血が噴き出してない!
心臓まで届いてない!
肋骨で止まった!
ヴモオオッ!!
ミノタウロスは太く吠えると、頭を床に打ち付ける!
ええっ!?
ドゴンッ!! ドゴンッ!!
地響きが! 私の元まで!
うわあっ床が壊れてる!
私は再び弓矢を放つ!
ダンッ!! 肩の筋肉に!
ヴモモオオオオオッ!!
ミノタウロスの怒りの呻り声!
怒ればいい! 冷静さを欠けばいい!!
私は再び弓矢を番えたその時!!
ヴモアアアッ!!
「えっ!?」
ミノタウロスが!
何かを掴むと!
振りかぶって!
ブンッ!!
「えっ!?」
ドガガガガッ!!
周囲に炸裂音が!
「きゃああっ!?」 反射的に思わず顔と頭を腕で防御すると! ドガッ! 「ぅあっ!!」
左腕に激痛!
痛みを感じた瞬間、ミノタウロスが何をしたか分かった!
「い、石つぶて……!」
そう、ミノタウロスは石つぶてを投げた!
頭を床に打ち付けていたのは!
シェードをつぶすだけじゃなく、床を砕いて投石用の石つぶてを!
さらに弓矢が飛んできた方向から射手の位置を推測して……!
冷静!?
野生の勘!?
どちらにせよこんな反撃をしてくるなんて……! と!
ドガガガッ!! ドガガガッ!!
「ひゃああっ!」
闘牛はもう盲滅法! 石つぶてを投げて!
私はビチャビチャの床に倒れ込みながら手早く腕のダメージを確認する!
左腕には弓矢用の小手をつけているんだけれど、運よくそこに当たった!
だ、大丈夫だ!
ヴモオオオッ!!
「きゃああっ!」
ドガガガッ!!
腹這いの私の頭スレスレに! ひゃああっ!
とその時!
「フオォッ! 何だコイツは!?」
亀裂の底からクラウディーアさんの驚愕の声が!
ええっ次は何っ!?
慌てて亀裂の底を見ると……!!
な!? 何あれ!?
今週は東京に里帰りしていました。とりあえず何とかUPできました。




