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01 プロローグ

週1~2回ペースくらいで掲載する予定です

 


 その世界は剣と魔法の世界

 人と妖精、幻獣と魔獣、様々な種の生命が暮らす世界



 神はその世界に、奇跡の力を持つ三つの霊威の世界を創造した

 一つは善良なる霊威 聖霊が存在する『 聖霊界 』

 一つは邪悪なる霊威 魔霊が存在する『 魔霊界 』

 一つはそのどちらでもない自然物の大いなる霊威 精霊が存在する『 精霊界 』



 神はさらに一つの生命の世界『 物質界 』を創造し、同時にその生命が滅した時に逝く様々な魂の世界を創造した



 物質界には多くの国が興り、人々は慎ましくも穏やかに暮らしていたが、邪悪な存在がひき起こす不可解な事件、<怪異>に悩まされていた



 聖霊信仰の中心法王庁は聖霊の奇跡『 聖魔法 』を駆使し、不可解な怪異を解決する特殊な騎士『 神殿騎士 』を組織し、怪異解決の任を与えた



 この物語は、一人の若き神殿騎士コークリットのお話



 綴るのは、彼とともに旅をする森の妖精エルフの娘、システィーナ



 ―――――――――――――――――



 その怪異の舞台は、広大な大陸ユーロピアの西

 大陸の中央を横断する峻嶮なリートシュタイン山系の西に位置する、フランシス王国



 王国のノンマルディー地方の海岸沿いに、遠浅の海が広がる

 潮の満ち引きにより、海岸線を大きく変える遠浅の海が……

 その遠浅の海に、一つの大きな岩山がそびえる



 今から約千年前、その岩山に慈愛を司る聖霊が舞い降り、多くの奇跡を顕現した

 聖霊は疫病で苦しむ人々を治し、蔓延する死者の怨念を清め、世界に平穏と安寧を与えた



 慈愛の聖霊が物質界から去ってなお、その岩山には大いなる力が満ち溢れた

 人々は、その岩山を聖なる山として崇め、岩山の上に修道院を建てた

 慈愛の聖霊を祀る修道院を……



 人々は、その岩山を聖地として崇め『 聖なるミシェリアの山 』と呼び巡礼する

 モン(山)・サン(聖)・ミシェリア(慈愛の聖霊)と



 ■怪異のはじまり



 暁闇あかつきやみの頃

 夜明け前の、ほのかに明るくなりつつある闇の頃

 暁闇の空には星々が小さく瞬く



 空の闇を映した遠浅の海



 暗く沈む遠浅の海に、浮かぶようにそびえる美しい岩山

 その岩山の頂に座する清廉な姿の修道院



 モン・サン・ミシェリア女子修道院



 ゴシックの粋を極めた壮麗な修道院が夜の海にひっそりとたたずむ

 慈愛の聖霊の舞い降りたそこは、邪悪な存在を寄せ付けない守られた地

 世界に数少ない『 安息の地 』



 そしてそこは魔法でも治らない生まれながらの病や傷病を持つ者たちの終の棲家

 宿命の人生の『 終焉の地 』



 遠浅の外洋を眺める修道院の中層の階。装飾の美しい窓が並ぶ長い通廊に、ロウソクのほのかな瞬きがいくつも浮かび上がり、窓からこぼれる。



 光の中心には美しい修道女たち

 石造りの壁に映る修道女たちの影



 朝の巡回

 毎朝変わらず続く、朝の光景

 修道女たちは真心を込め、その最期を看取る



 ロウソクの灯りが散り散りに離れていく

 百を超える看護房への巡回のはじまり



 密やかな寝息。苦しげな呻き。静かな寝息。咳き込む寝息

 修道女たちは入所者一人ひとりの容態を看て、世話にいそしむ



 看護房の一つ

 薄い布で仕切られた室内。仕切り布に浮かぶロウソクと修道女の影。いそいそと動く修道女の影



 夜明けの頃

 夜尿した入所者の濡れた衣服を取り換える修道女。服を着させていたその時……



「あっ」



 刹那に響く小さな声



 布に映ったロウソクの灯りと影が……



 突然消え失せ……



 室内は暗闇に包まれた……




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