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緑の夢、光の目覚め  作者: 月本星夢
最終章・光の目覚め
97/126

覇王~偽りの破壊神

※残酷と思われる、場面がございますので、15歳未満の方の閲覧は、ご遠慮して下さい。


次回から、副題が変更となります。

 先程の舞台の場所から、一瞬にして、白黒正反対の色の服装の二人の少年は、白い服装の少年の力によって、ルシフから他の場所へ飛んだ。

余りにも素早い行動だった為、黒い服装の少年・黒き髪の王は、今の状況を把握出来なかったようで、唖然として口を開く。

「な…?ここは?」

今、彼等のいる場所は、広い草原だった。

他に何も無い、草だけが広がり、地平線が望める草原。

緑一色の場所に、二人はいた。

ここはルシフの街道の入り口であり、結界の外でもあった。

「此処なら、誰も邪魔は出来無い。存分に暴れられるぞ。」

そう言って、リシェアオーガは自らの剣を抜いたが、少し違和感を覚える。

しかし、気にせずに構えた。

相手の様子に、黒き髪の王も剣を構え直し、対峙する。彼は、今まで同じ様に向かって来た敵に、これ程、怒りを覚えた事が無かった。

手塩に掛けた手玉を取られただけで無く、自分を馬鹿にした態度。畏怖で無く、本当に馬鹿にした態度の相手に対し、憤怒(ふんぬ)している。

「破壊神・リシェアオーガを甘く見るなよ。」

黒き髪の王が言い放った言葉に、リシェアオーガは再び笑う。何が可笑しいと、王は尋ねたが、その笑いは止まらなかった。

「くくく…破壊神・リシェアオーガだと?名を騙る者が。

あの方は、貴様では無い。そもそも自ら喜んで、破壊神─ファムアリエ・ルシムとは、名乗らないのだからな。」

確信を突かれた黒き王は、更に激怒する。

「そうか…君は、それを知っているのか…って事は、神に頼まれて、僕を倒しに来たって訳だね。だったら、尚更…消えて貰うよ。」

繰り出された一撃を、リシェアオーガは、受け止めた。難なく受け止められ、王は一瞬驚いたが、直ぐに狂気の微笑を浮かべる。

「そう、来なくっちゃ。すぐに壊れるなんて、楽しくないよ。

さあ、存分に遊ぼうよ。」

「此方も腕が鈍って、仕方が無かったんでな。望む処だ。」

構え直したリシェアオーガは、再び黒き髪の王と戦いだした。

力は、二人とも互角。

狂気と狂気が、ぶつかる様な戦いは、終わりが無いかに見えた。

何十回と、打ち合った2人だったが、不意に、黒き髪の王に余裕が浮かんだ。 

「精霊の剣か…そんな鈍らじゃあ、僕に勝てないよ。」

言葉と共に、強い一撃が、リシェアオーガの剣を襲う。それを受け止めた途端、精霊の剣が折れ、王の持つ黒き剣が、彼の右肩を貫く。

そのまま心臓を貫こうとしたが、何かに弾かれ、出来無かった。

チィと、舌打ちした王は、剣を引き抜いた。相手から流れ出て、大地を染める血に、満足したのか、あの狂気の笑みを、再び浮かべる。

「そんな剣じゃあ、僕を倒すなんて、無理無理。

神剣でも、持って来れば別だけど。まあ、それでも僕が作った、特別製のこの剣に、何処まで持つかは判んないけど~。」

そう言って、黒い刀身の剣を掲げる。禍々しい気を放つ剣に、リシェアオーガは眉を潜め、邪悪な剣の担い手に、負けたくないと思った。

「さあってと、邪魔者は動けないし、ルシフを滅ぼそうっと。」

さらっと、言いのけた王に、リシェアオーガは怒り、折れたままの剣を構える。気が付いた王は、余裕で振り返り、微笑む。

「そんな剣で、何が出来るの?

精々そこで、護ろうとした者が滅ぶさまを、見るのが精一杯じゃあないの?」

挑発とも取れる言葉は、怒りに身を任せている彼の耳には、届かなかった。目の前の敵を見据え、剣を左手で構え直す。

「名を騙る者よ…許さん。」

「な~に、負け犬の遠吠えをしているの?…やっぱり、止めを刺しちゃお。」

如何にも楽しそうに、黒い剣を振るう黒き髪の王へ、リシェアオーガは、折れた剣を向けた…筈だった。しかし、その剣の先には、光が集まった様な輝きがあり、それが刀身と化していた。

驚いた王は、慌てて剣で受けたが、その刀身は剣を通り抜け、その身を貫く。

「な…なんで?こんな事が…ある訳な…い…」

光の刃は王を貫くと消え、リシェアオーガもその場に倒れた。黒き髪の王は、傷を庇って後ずさりし、倒れた精霊を見据えた。

「その顔…覚えておく…ぞ。絶対に…許さないから…。」

そう言い残し、王はその場から消えた。 


 一方、リシェアオーガの方は、風の精霊により、彼の様子を知ったサニフラールとルシナリスにより、保護された。

ルシフから近い、広々とした草原に、リシェアオーガは倒れていた。

その場所に辿り着いた彼等は、リシェアオーガの怪我に驚く。只、草と大地に血の跡は無く、体に付いていた血も、何時間もそのままだった様に乾いている。

「これは一体…。」

「恐らくは、精霊の治癒の力でしょう。

でも…時間が、掛り過ぎている様に見えます。」

リシェアオーガの体を抱き上げたルシナリスが、サニフラールの問い掛けに答える。時間が掛り過ぎるという言葉で、彼は絶句した。それは、黒き髪の王と戦って命は助かったが、依然、危ない状態である事を知らしめている。

「光の精霊騎士殿。オルガ殿…いや、リシェアオーガ様は、大丈夫なのか?」

ルシフ王の言葉に、ルシナリスは驚くが、直ぐに悲しそうな顔になった。

「判りません。手を尽くしてみますが、リシェア様は、神に成り立てで、まだ、治癒も十分に出来無い様なのです。

ですから、他の神々の意見を聞かない事には、何とも言えません。」

そう言い終ると、ルシナリスは、リシェアオーガの体を優しく抱きかかえ、ゆっくりとルシフの方へ、歩みを進めた。

「ルシフ王、取り敢えず、リシェア様を安全な所へ運びましょう。

それから、色々と手を考えましょう。」

「ああ。」

彼等はリシェアオーガを伴い、草原から去って行った。


 彼等が到着したルシフでは、大騒ぎになっていた。

黒き髪の王と対峙した、精霊剣士が、大怪我を負い、運ばれてきた為だった。祭り処の騒ぎでは無いと、国民は中止を呼びかけたが、サニフラールがそれを止めた。

せめて、屋台だけは機能するようにと、命を下したのだ。特に食料を扱っている屋台は、そのまま継続、舞台は、直せるだけ直して置く様にと告げる。

理由は簡単だった。

食料は傷むし、この日の為に仕込まれた物だから、無駄に出来無い。舞台は直して、精霊剣士の傷が癒えた時に、使用したいという事だった。

尤もな理由だったが、納得出来無いでいる者達に、彼は付け加えた。

「あの精霊剣士は、生誕祭を護る為に、戦ったのだ。

それなのに自分の所為で、祭りが中止したとなると、彼は悲しむだろう。」

この言葉で皆が納得し、祭りは舞台以外、再開した。舞台に参加予定だった者は、引き続き、ルシフにいる事を希望する者が多かった。

彼等の事を、その身を犠牲にしてまで、護り抜こうとした精霊剣士に、感謝したいが為だった。ルシフ王は、この希望を快く承諾し、彼等もルシフで、精霊剣士・オルガの目覚めを待つ事となった。


しかし、深い傷を負ったリシェアオーガは、未だ深い眠りの淵に沈んだまま、目覚める様子は全く無かった。  

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