序幕・神龍~聖なる戦士達~
今回から、最終章突入です。
遥かな昔──大いなる神から、邪悪なる心が離れた。
それは大いなる神が他の世界を羨み、憎む気持ちから生まれ、最悪な事に、全てを破壊する力を持ち合わせてしまった。皮肉にも、それが離れ去ったお陰で大いなる神は”初めの神々”を生み出す事が出来た。
彼等は”姿在りし神々”とも”初めの七神”とも呼ばれている。
そして…彼等、”初めの神々”は命の神を生み、世界を生命で満たしていく。
何時しか世界は広がり、命も増えていった…だが、大いなる神から離れた心は、自らの世界の姿さえ憎むようになった。
どの位時間が経ったのであろうか、ついにその心は、自らの世界に牙を向いたのだ。幾つもの文明や星々が、この心の持つ力で消えていった。
大いなる神は、これに哀しみ、後悔した。そして、その心【邪悪】に対し、剣を向けられる者達を生み出した。
彼等は”神龍”と呼ばれ、それぞれ異なった力を、大いなる神から与えられた。光の黄龍、闇の緇龍、炎の緋龍、水の碧龍、地の翠龍、風の皚龍の6人である。
彼等はこの力を駆使して、初めの七神と共に、【邪悪】へと戦いを挑んだが、流石に大いなる神から離れた心だけに、彼等と神々は苦戦を虐げられ、完全に倒す事が出来なかった。彼等は矢も得ず、その【邪悪】を弱らせ、封印する事にする。
只、彼等の命を掛けた封印であった為、彼等の生命が尽きればそれは、容易く解ける物であった。この為彼等は、大いなる神から永遠の生命を授かる事になり、大いなる神とは別の神々”姿在りし神々”に仕える事となる。
神々に仕える間、神龍達はある事を想うようになった。
『我等の力を、一つに纏める事の出来る存在がいれば…
そうすれば、【邪悪】を倒せるかもしれない。』と。
この想いを聞いた大いなる神は、彼等に王たる者を与える事にした。
だが、人間や精霊に託されたそれは、神龍の王として目覚める事無く、その生を失い続け、試みはすべて失敗に終わった。
そうして、只…永い時間だけが、過ぎ去って行った。
そんなある日、大いなる神はある事を実行する。神龍の王たる証の玉を初めて、神々の住む場所へ投げ込んだのだ。
龍玉は、美しい流れ星となって、再び神龍達の目に映った。
その流れ星と共に、生を受けた赤子が、神龍の王となるべき運命を背負っていると知っているのは、大いなる神と神龍達だけだった。
神龍達はその赤子を護る為に、必死で捜したが、見つかる気配は無い。
唯一の救いは、その赤子・神龍王が無事である事を、感じられる事だけだった。
───16年後─── 人間の世界での、邪気が起こした大戦が終結し、平和を取り戻した頃、神龍達は、それぞれ仕える神々の下へ赴いた。
新しく神になる者達の、お披露目の儀式に出向く神々の、お供をする為だった。
皮肉にもこの日は、あの【流れ星】が流れた日であった。
『もしかしたら、新しい神々の中に、我等の王がいるのかも…』という想いが、彼等の中にあったが、その期待は裏切られ、神龍の王は見出せなかった。
かの王は輝ける髪─日光下では黄金色に、月光下では銀色になる髪─と、空を映した水面の様な昼の青と、夜の藍の瞳で、両方の性別を持つ、両生体という特徴を持っている。新しく神となった4人のうち、リルナリーナとリシェアオーガの二人が、輝ける髪と空の瞳を持つ、光の神・ジェスク神の子であったが、その姿を受け継いだのは、リルナリーナだけだった。
然も、4人の中で、唯一リルナリーナだけが、輝ける髪・光髪と空の瞳を持っていた。しかし、彼女(?)からは、龍の気が全く感じられず、彼等は狼狽える。
まさか、また神龍王が失われたのか?だが、消失した気配ない、そんな想いが彼等の心の中に渦巻いていた。
そして、彼等は、望まない選択をされ、一人の神の許へ集められてしまった。
神龍王の姿で無い、新しい神の許に彼等は集められ、戸惑う事になろうとは、誰も思わなかった。




