表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緑の夢、光の目覚め  作者: 月本星夢
最終章・光の目覚め
114/126

終焉~新しい神の正体

一方、精霊騎士達の間では、神龍達と少年神の遣り取りに、驚きの声が上がっていた。


 神龍達が、【我が君】と彼を呼んだ…それは、ある事を意味している。 

【神龍の王の誕生】…ジェスク神の腕の中にいる少年は、光の神の神子という特徴と、神龍王の特徴を兼ね備えている。

ふと、大地の精霊騎士・リュナンの心に、あの可憐な少年神の事が過った。

暗緑色の瞳と髪の、間違う事無い、光と大地の気配を持つ彼。

今、抱かれている少年とは、全く違う、姿と纏う気…。あの少年神は、如何したのだろう、偽物だったのかと、疑問を持った。

それは、他の精霊騎士達も、同じ思いであった。

しかし、神龍達は勿論の事、精霊騎士達の中でルシナリスとランシェだけは、平然として、神龍王である少年神を見ている。

不審に思っている精霊騎士達の視線に、気が付いた少年は、微笑を浮かべたままで、彼等の名前を呼ぶ。

「リュナン、ラン、レア、フレルにウォーレ、アレィまで、来てたのか!」

見知らぬ少年から、自分達の名前を呼ばれ、ランシェ以外は、驚きのあまり呆然としていた。その傍で神龍達が、忍び笑いを始める。

彼等の態度に少年は、首を傾げ、不思議そうな顔をしていたが、何かに思い当たったのか、溜息を()いた。

「…神龍達から、事情を聴いていなかったのか…。

そなた達、(わざ)と黙っていたな…。」

「申し訳ありません、我が君、つい…。……予想通りの反応でした…。」

「そうそう、アレィの驚く顔なんて、滅多に見られないし…。

あれ?ランだけは、驚いていない?」

「本当だ~!なぜ?ランだけは、驚いていないの~?」 

翆龍(すいりゅう)の弁明の後に、緇龍(しりゅう)緋龍(ひりゅう)から、ランシェが驚いていない事を指摘され、その理由を、彼は簡素に述べた。

「リューレライの森の…元長から我が長に、伝えられた事があるのですよ。

森の養い子の元の姿は、金髪で青い目だったそうです。」

「ラン…そなた…知っていたのか…。」

「知っていたと言うか、推測の域でしか無かったので、言うべき事では無いと判断しましたし、何故か、言えなかった節もあります。」

当時の事を追い出しながら緑の騎士は、目の前の少年神の姿に、自分の疑問の答えを見出していた。

「…神龍王の覚醒は、真の目的の自覚と、元の姿を自らの手で取り戻さなければ、意味が無いと聞き及んでいます。恐らく、私が誰にも言えなかった理由は、森の養い子が神龍王であったからでしょう。

…オーガ君…いえ、リシェアオーガ様、御無事で何よりです。」

微笑を浮かべた緑の騎士から、懐かしい呼び名で呼ばれた所為で、リシェアオーガの心に暖かい物が広がった。


何も知らず、幸せだったあの頃…。

この身を邪悪な想いに染める前の、穏やかな日々…。

思い出される記憶に、少年神の微笑が一層、優しげな、穏やかな物となる。

その笑顔に一瞬、精霊騎士達と、神龍達が無言になり、彼に見惚れていた。彼等の様子に気付いたリシェアオーガは苦笑するが、他の七神は、大いに笑い始める。

「リシェ、お前って奴は…神龍や大地や光の精霊なら、いざ知らず、他の属性の精霊まで見惚れさせるとは、大したもんだぜ。」

そう言って、リシェアオーガの頭をグシャグシャと、乱暴に撫でるクリフラールに、彼は反論した。

「伯父上、そんな事を言われても、私は何もしていません。」

「いや、リシェアが魅力的だからこそ、こうなったのだ。

…流石、我とリューの娘だ。」

「…父上まで…。私は両性体です。息子でもありますよ。」

リシェアオーガの息子発言を無視して、尚、娘扱いする父親に抗議してか、彼は、抱き上げられていた腕から、一瞬にして別の場所へと飛び、既に黄龍(こうりゅう)が控えている、神龍達の許へ逃れる。

そして、全くもう、と言う態度で両腕を組み、ジェスクの方に向き直る。その態度まで微笑ましく見え、彼の後ろでも再び、神龍達が忍び笑いを始めた。

彼の血脈の属性と異なる精霊騎士達は、自分達が彼に見惚れた事に驚き、神龍王の本質を思い出した。

【全ての属性を持ち、且つ、どの属性にも偏らない、即ち、本質的な属性を持たない王】であり、神々の一人である故に、自分達が、見惚れてしまった事に気付いた。

彼等の考えている事を知ったのか、緇龍が振り返り、自慢げに言い放つ。

「どう?我等の王は。素晴らしい方だろう?」

「…緇龍、御前な…有れ程、反抗して居たのに、其の態度か…。」

自慢げな緇龍の意見への、皚龍(がいりゅう)の突込みで、精霊達も笑い出す。

何か、文句あるのという態度の緇龍の体に、細い腕が絡みつく。

何時もの様に黄龍かと、思ったが、頬に掛る髪は、金色の直毛…。驚いて振り向こうとしたが、抱き付いた人物が、笑っている為、出来無かった。

聞こえた声は、少年の声。

「ふふ…緇龍…そなたは…面白いな。判り易いし、退屈しない。」

「……我が君……それは、どういう意味ですか?」

「緇龍様。そのままの、意味。貴方は、直ぐに、表情、変わる。

良い意味で、態度も、変わる。何、考えているか、判り易い。」

リシェアオーガの替わりに、滅多な事では、長文を喋らないアレストが、声を出す。彼の意見に周りが頷き、碧龍(へきりゅう)も同意見を述べた。

「確かに、緇龍の感情は判り易い。

喜怒哀楽が激しくて、闇の神龍である事が疑わしい位には…な。寧ろ、緋龍と同じ、炎ではないかと疑った事もある。」

「あっ、それ、判る♪

碧龍の言う通り、あたしも同族じゃあないかって、思った事ある。」

「…ひっでー!そんなこと、思っていたのか?碧龍、緋龍。」

「仕方ないと思いますよ。緇龍は、表情が豊かで、自分の感情に素直なのですから。

でも、其処が、緇龍の良い所ですね。」


優しげな女性の声が掛り、リシェアオーガが振り向くと、そこには、闇の神・アークリダが立っていた。全てを包み込む様な、優しい微笑で、彼等を見つめている。

「緇龍…おめでとう。やっと、念願の主を得たのですね。

他の神龍とも、共に居られる。…寂しがり屋の貴方が、仲間と一緒に居れるようになって、私も嬉しいですよ。

リシェア…神龍王よ、緇龍を頼みます。」

「あ、わたしも~。リシェ、緋龍を目一杯、こき使ってやってね~。」

「碧龍も、お願いしますよ。

緇龍と違い、何を考えているか、判り難い子ですが、悪い子ではないのです。誤解しないでやって下さい。」

アークリダを皮切りに、フレィリーとウェーニスが、自分達の許にいた神龍を託す為の、手向けの言葉を告げる。

言われた神龍達…緋龍と碧龍はリシェアオーガの後ろで、緇龍はリシェアオーガの横で、彼等の言い草に頭を抱えていた。

「アークリダ様…。寂しがり屋って…それ、ここで、言いますか?」

「ひっどい、フレィリー様。その言い草は、あんまりですよ~。」

「…ウェーニス様…そんな事まで、気付いておられたのですか…。まあ……我が君には、バレバレだと思っていましたが…貴方まで…。」

元仕えていた神々からの、手向けの言葉に、緇龍、緋龍、碧龍は本音、ダダ漏れの返答をしている。

そんな中、リュースとジェスクが、翆龍と黄龍に声を掛けていた。

「翆龍…リシェアを、宜しく頼みますね。

この子は絶対に、無茶をするでしょうから、その時はお願いね。」

「黄龍もだ。リシェアの事を宜しく頼む。他の神龍達も、宜しくな。」

仕えていた神龍への手向けと言うより、親が子を彼等に託す言葉で、過保護な親の一面が見えてしまい、緇龍から手を放したリシェアオーガは、溜息を吐く。

反論した処で無駄と判っていたし、これが自分の親の通常だとも、理解している。

故に無言で、溜息だけが出ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ