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緑の夢、光の目覚め  作者: 月本星夢
最終章・光の目覚め
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決戦~迫り来る決戦の時

今回から、新しい副題に変わります。

 黒き髪の王の陣営では、やっとの思いで、彼の傷が癒えた。

あの精霊剣士のお蔭で、思った以上、ルシフを落とすのに時間を取られた事は、かの王にとって、屈辱でしかなかった。

忌々しい、精霊剣士の顔を浮かべ、かの王は策を練っていた。

如何(いか)にして、あの剣士を苦しめるか、いや、あれだけの怪我を負わせたんだ、もう、その命は尽きているかもしれない。

ならば神々へ、如何にして、最大の屈辱を与えるかを考えていた。

「まずは、ルシフを四方から、囲い、一気に攻めるよ。……一人残らず、殺せ!」

何時もより、残虐で、冷酷な声で、黒き髪の王は、部下に命令す。

「この屈辱…倍にして、返してあげるよ。」

不敵な笑いを浮かべ、かの王は、これから始まる惨劇に、思いを馳せる。

只、再び、あの精霊剣士と、相対峙する事になるとは、彼は思わなかった。





 一方、ルシフでは、黒き髪の王の動きを、精霊達の言葉によって把握していた。

かの王の傷は、思いの外治りが遅く、リシェアオーガがあの件で全回復してから、一週間程遅れていた。

その間、彼と神龍達、ルシフの周りにいる精霊達は、出来る限りの策を尽くし、黒き髪の王を出迎える準備をした。

ルシフの人々も、残っていた舞踊家達を安全な国に避難させようとしたが、彼等はそれを拒み、未だここに留まっている。

持って生まれた舞踊家の(さが)か、時代の流れを、この目で見ようとしていた。そして、ここにいる、ルシフの騎士達とリシェアオーガ神、神龍達を信じている。

必ず護る、と告げた彼等の言葉に感動し、信じ、留まった事に後悔は無い。

まあ、いるからには、何か手伝いを…いう事で彼等は、戦う者達への食事の用意を、進んでやっていた。


 黒き髪の王を、迎え撃つ準備の最中、リシェアオーガは神龍達に、彼等の王の成り立ちを聞いた。

大いなる神が創った、王の龍玉を体の内に持って、生まれる事。

親から離され、他の者に育てられる事。

その後、自らを邪悪な想いに任せ、自らの力で、それに打ち勝つ事。

敵を知り、護るべき者を得た者が、王として目覚める。

…その手順を聞いたリシェアオーガは、自分の身に起こった事が、全く以てその通りだと悟った。それとと同時に神龍達は、もう一つの事をリシェアオーガに告げた。

「今まで大いなる神は、人間の赤子に、それを託されたのですが、誰一人、王として目覚めず、その命を失うか、邪悪なるモノとなってしまいました。

それを踏まえて、大いなる神は、今回の事を試みたのでしょう。…神々の赤子に、龍玉を託す…リシェア様とご家族の事を思えば、心苦しいのですが…。」

「世界の事を思うと、仕方のない事だ。そうだろ、翆龍(すいりゅう)

…もう一つ、聞くが、精霊では駄目だったのか?」

「彼等は、生まれ持った単体の属性が有り、混血は非常に珍しい為、我等が王を生み出す事は、無理だった様です。

獣人も精霊と同く、単体の属性を持ちます。其れ故、偏った属性を持たない我等の王・神龍王は、人間か、神々にしか、託せなかったのです。」

リシェアオーガの問いに皚龍(がいりゅう)が答え、それを聞いた彼は納得した。確かに、自分の持つ神龍王の剣は、決まった属性を持たない。

故に、全ての属性を持ち得る剣、とも言える。

抜いた時のあの、刀身がそれを物語っていた。様々な属性を示す色に、全体を染める刀身…全てを持ち、(かたよ)らないからこそ、その属性は定まらない。

それを持つ、王も然り。

リシェアオーガ自体、光と大地の血脈を持つ為、普通の精霊と違い、元々一つの属性に偏っていない。この事に加え、全ての属性を持つ龍玉の影響で、一つの定まった属性を持たない事となるのだ。

皚龍の返答を受け、翆龍(すいりゅう)がその続きを告げる。

「それと今回の様に、双子に別れて、お生まれになった事はありませんでした。

大抵はお一人で、お生まれになっていました。

その事も、リシェア様が王として、目覚められる事が出来た起因と思われます。」

「確かに、リーナとは、全てを分け合っている様に感じる…。

只、私の心臓にある、別の鼓動だけが、分け合えていない気がする。」

そう言って、リシェアオーガは胸に手を置く。

心臓の鼓動とは違う、全く別の鼓動に意識を向けた。

神龍王の剣と共鳴した物…、自分の中にだけ、これはあると思える物…。

その答えを翆龍が口にした。

「それは、龍玉です。神龍の私達の胸中にも、その鼓動はあります。龍玉は私達の心臓と同化して、体の中に存在しているのです。」

翆龍も自分の胸に手を当て、その鼓動を感じていた。目の前の王と共鳴する龍玉は、彼女等に更なる力を与えている。

神龍の王…神龍を纏め、その力を強める存在…。

今、目の前にいる幼い神が、その存在である。


ふと、翆龍が、思い付いた事を話し出した。

「リシェア様が、双子でお生まれになったのは、恐らく、リュース様が、単一の属性をお持ちなので、そのお体に、全ての属性を持つ龍玉が入った為でしょう。

そうしないと、リュース様のお体が龍玉自体を拒絶して、お生まれになる事が、出来なかったのかもしれません。」

「単一の精霊では拒絶反応が出て、龍玉を持つ赤子が流れ、生まれる事が出来なかったと、聞き及んでいます。その場合も、独り子だったそうです。

ですから、我が君が無事、御生まれに成られたのは、リュース様の御力が御強く、その御意思も強かった所為でしょう。神と精霊では、その御力も天地程、違います。

それにリュース様は、大地の女神。あの方の母性が、我が子を拒絶する事を阻み、育む為に、二人に分けられたのでしょう。」

翆龍の見解の補足を、淡々と述べる碧龍(へきりゅう)に、全員が納得する。リュース神でなければ、リシェアオーガ達は、生まれて来なかった。

大地の女神という母性の強い神故の、無意識の行動…母なら遣りかねないと、リシェアオーガは思った。

初めて会った時も、いきなり抱き付かれ、一時も母の傍から、離される事がなかった。漸くして、罰として行われた、兄の説教が始まると、やっと離してくれた。

その時でも嫌々ながら離し、終わった頃を見計らって、迎えに来た位だった。しかし、兄との口論の末、結局兄の許に留まる事となったが、兄の行動も、母と同じだったのは言うまでも無い。

まあ、その場に常に、リルナリーナが居り、二人とも、兄と義姉に構われ放しだった。母の時も、父とリルナリーナが、一緒ではあった。


蛇足だが、翆龍の見解は、あくまで憶測に過ぎず、後に事実を母から聞いたリシェアオーガは、その真相の返答に脱力したのだった。 

以下、蛇足ですが、後にリシェアオーガが、大地の神である母へ、この事を質問した時の会話です。エピソードとして入れられなかったので、ここで晒します。


「母上、神龍達から聞きましたが、母上のお体に龍玉が入った時、私を拒絶する反応はなかったのですか?」

真剣な顔で尋ねられた母は、不思議そうな顔で答える。

「?何のことかしら?あの時は…たしか、私の中に光が入って、驚いただけだったわ。」

「え??驚いただけって…。」

母の回答に驚く子へ、更なる驚愕の事実を暴露する。

「そう、驚いて気が付いたら、お腹の子が二人になってたのよ。余りにも嬉しかったから、ジェスやリダ達に話した事を覚えてるわ。」

嬉しそうに当時を振り返る母へ、リシェアオーガはもう一つ、質問する。

「龍玉が入った事で、拒絶反応はなかったのですか?」

「変な事、言うのね。大いなる神の御業の産物でしょう?邪気以外の産物で、私達に、拒絶反応が起こる訳無いでしょうに。」

当然と言う顔をして答えた母へ、子は脱力してしまった。

「…神龍達の見解は…想像でしかなかったんだな…。七神は、大いなる神から生まれし神々…親である神が創ったものに、拒絶反応なんて…する訳なかったんだ…。」


重要な事を思い出した彼は、悩んだ己の馬鹿さ加減に頭を抱えたのであった。


…と言うのが、本文にある真相でした。では。

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