光姿~新たな誓い
次回から、副題が変わります。
結界の強化も終わり、日も傾きだした頃、リシェアオーガは、その髪を暗緑色に変え、服装を精霊剣士に戻した。
そして、ルシナリスと神龍達、大神官を伴い、ルシフの広場へと向かう。そこには、奏者、吟遊詩人、踊り子達と共に、ルシフの騎士が集まっていた。
ルシフの民人も彼等の為に、大量の夕食を用意して待っている。多くの人々が集まる広場には、既に、サニフラールとヴァルトレア、騎士長と神官達もいる。
リシェアオーガ達の登場で、歓声の声が上がり、口々に無事を祝っていた。その完成を、ルシフの王、サニフラールが止める。
「ここに集まった者達に、伝えたい事がある。オルガ殿、前へ。」
そう言って、リシェアオーガに場を任せた。任された彼は、サニフラールの思惑に気付き、自らの気を精霊のそれから、元の物へと変化させる。
気配を読み取れる者は驚き、それに気付いた普通の者達は、彼等に理由を聞こうとしたが、リシェアオーガの言葉で、それは果たせなかった。
「皆の者に心配を掛けて、申し訳ない。
我はこの通り、全快した。それと、そなた達に、伝えたい事がある。
諸処の理由で、今まで本当の名を告げる事が、出来無かった。だが、今、我は、本当の名を告げる事が出来る。
…我が名は、ファムエリシル・リュージェ・ルシム・リシェアオーガ。ジェスク神を父に、リュース神を母に持つ。
故に、この姿も仮の物。我の真の姿は、こちらとなる。」
そう言ってリシェアオーガは、自らの姿を元に戻した。まだ、日暮前の為、一層金色に輝く長い髪と、徐々に深みを増す青い瞳。
ルシフの民なら良く見知っている、光の神・ジェスク神に似た面立ちと、後ろに控えている異形の者達……龍人の姿をした神龍達を従え、傍らの光の精霊騎士は跪き、彼へ最敬礼を送っている。
突然の神の降臨に、その場にいた人々は言葉を失くし、只々、眼の前の、自分達が望んだ神に見入っていた。
その様子に、リシェアオーガは破顔し、微笑を浮かべる。
「…そんなに緊張しなくても良い。
我は何も、取って食おう等と思っていないし、ここには、ルシフ王達の願いを叶える為にいる。既に、黒き髪の王の件は、七神から我に託されている。
故に我は、ここを護りたい。いや、必ず、護る。」
きっぱりと、言い切るリシェアオーガに、人々の歓声が再び起こった。
リシェアオーガ様、万歳、本物のリシェアオーガ様だ、と各々口にする彼等に、リシェアオーガは優しい笑顔を向けていた。
護りたい、護ってみせる。そんな思いが、彼の心を満たす。
同じ事を神龍達も思った。
我が王を受け入れてくれている、人間達を護ってやりたい。
我が王と共に、あの王から必ず護り抜く。
神龍の想いが一つになり、眼の前の自らの王を見つめていた。その視線に気付いた、リシェアオーガが振り向き、彼等に微笑を向ける。
その、清々しいまでの爽やかな微笑に、彼等は息を呑んだ。
憂いを失くしたリシェアオーガの微笑、穏やかで優しいそれは、リルナリーナ神やジェスク神の物と良く似ていた。
「「「我が王よ。我等神龍、何処までも貴方に従い、付いて行きます。」」」
神龍達の誓いに、リシェアオーガは一瞬驚いたが、直ぐに先程の微笑を浮かべ、こちらこそ、宜しく頼むと、再度口にしていた。
リシェアオーガの話が終わり、ルシフ王の、食事開始の合図を機に、広場は宴会場と化した。精霊剣士だったリシェアオーガの帰還と、神としての降臨を祝い、人々はお互いに笑いあい、喜び合っている。
やがて宴が酣になり、何時の間にか日が沈み、星が瞬きを始める頃、リシェアオーガの髪と瞳も銀色と藍色へと変化し、光髪と空の瞳だった事を証明する。
光の精霊であるルシナリスと同じ、銀色の髪と、父であるジェスクと、双神であるリルナリーナ神と同じ空の瞳と髪。そして、神龍の王の証し。
腰の物は既に、精霊剣では無く、神龍王の剣になっている。
この事に気付く者は、いなかった。神の降臨……それに人々の意識が向き、真実を知っている者以外、気にも掛けない。
この場に、邪悪なるモノと戦う為に生まれた、神龍の王がいるという事は、一部を除き、知られる事は無かった。
その後、ルシフでの、黒き王を迎え撃つ手段は、着々と進んで行く。
何時でも、あの邪悪なる黒き髪の王を、迎え撃つ事が出来る様、ルシフの人々と神龍達、獣人と精霊達の手によって………。




