~第七十六話~ベゼルバード王国~魔術大会、第二回戦~
無事に一回戦が終わって、俺の今の状態はと言うと……無傷で相手を一撃で倒したと言う事だった。
もしかして俺……術の使い方によっては、楽勝で勝てんじゃね?って思うんだが? だって、俺の術で、足止めしたり、術禁止の術を使ったり出来るからな? ゲームで言う所の、チートじゃね? 俺の術って?
ま、使用魔力が、今、どれくらいあるのかが鍵だよな……だって、魔力切れになると、術が発動しないしな? そこは気をつけないといけない。
とりあえず俺は、手持ちの荷物から、魔証石を取り出して、自分の魔力を計測してみる事にした。
さっきの試合で使った術は、相手の動きを止める「デス・トラップ」と、相手の術をコピーする「シャドウ・コピー」そして、ビルベルブが使った術、ライジン・ハンドの三つなので、今の魔力がどのくらい残っているかが、問題なので、早速調べて見る事にした。
魔証石で計ってみると、現れた数字は
魔力最大値310
魔力値209と表示されている。
これはつまり……デス・トラップの使用魔力量が1なので、1引いて、シャドウコビーを使用して、ライジン・ハンドを使ったので、内訳で言うと、デス・トラップ1+2、シャドウコピー50+3、ライジン・ハンド50と言う事になるのか? と言う事は……
一回のライジン・ハンドの使用魔力量が、50と言う事になるみたいだな?
魔力回復アイテムを持っていないし……今ある魔力で、残り何試合あるのかが、解らないが……魔力を節約して、戦っていくしか無いな?
俺は、そう決める事にして、次の試合まで、待機する事にした。
三十分後、部屋の中に、ユコがやって来た。
「コウさん、お待たせしました、今から二回戦を始めたいと思いますが……何か質問は、ありますか?」
「ある」
「はい、何でしょうか?」
「一回戦で戦って、俺勝っただろ? その分の使った魔力は、回復してくれないのか?」
「あ、そうですね、忘れてました……こちらをどうぞ」
そう言って、ユコは懐からオレンジ色の液体の入ったビンを差し出して来た。
「これは?」
「魔力回復ポーション強化版です、これを飲むと、魔力がかなり回復します、では、飲んで下さい」
と言われたので、これって……ユーグレストの雑貨屋で売っていた「桃色吐息」の色違いの物か? と思いながら、飲んでみる事にした。
味に関しては、何と言うか……フルーツミックスに近い味がして、結構おいしく、全部飲み干してしまった。
飲み終わった後、なんか……力が沸いて来た気がするので、この感覚が、魔力が回復した事になったんだと思う。
「これで魔力は回復したと思います、他に質問はありますか?」
「あと、もう一ついいか?」
「はい、何でしょう」
「戦闘を行って、死亡した場合、それってどうなるんだ? 戦闘開始前に戻すとか、言っていたけどな?」
「はい、あのマジック・シールド内は、魔力が充満しているので、そこでリミットブレイクと言う術が使用可能なんです、その術は、数十分だけ時間を戻す事が出来ると言う術で、あのマジック・シールド内でしか、使用不能なんですよ、なので時間制限を設けて、その間に死亡した場合、蘇生出来ると言う訳です、ここで注意点ですが、マジック・シールドの外で死亡した場合、それは蘇生出来ませんので、死亡扱いになります、では、他に質問はもう良いですね? では、試合会場に案内しますので、私の手を握って下さい」
「解った」
俺は、そう言って、ルコの手を握った。
「では、行きますよ? スピードリレイン」
そうルコが言うと、術が発動して、その場から移動して、試合会場内に辿り着いた。
「では、コウ様、先にマジック・シールド内に入って下さい」
「解った」
そう言って、俺はマジック・シールド内に入る。
中に入って、待つ事数分後、一人の魔術師の格好をした男がやって来た。
「っふ、君が私の相手かね? 見るからに弱そうですね」
こいつも、俺の事を下に見ている気がする……と言うか、この魔術師、衣装が派手じゃねえか?
現れた魔術師の服の色が、金色に光り輝いていて、杖も金色になっているので、何と言うか……金持ちっぽいんだが? こいつ……
そう思っていると、ユコが
「では、今から二回戦を始めたいと思います、一回戦と同じく、ルールは同じで、時間制限も十分間とします、では、コウ様対ゴンオウ様の対戦を始めたいと思います、それでは、始め!」
そう言って、ユコが再び銅鑼を取り出して、叩き込む。
名前がゴンオウね……って、名前を分けて読むと、黄金になるんじゃね?
ま、まずは……相手の出方を伺うか……
俺は、杖を取り出して、構える振りをしてみる。
すると、ゴンオウが
「おや、攻撃して来ないのですか? それとも何か秘策が? まあ……なんにせよ、私から行きますよ、これは避けられますかね!」
そう言って、ゴンオウが杖を振って、術を発動してきた。
「レイン・ゴールド!」
聞いた事の無い術が発動し、杖から無数の金色をした針が、俺に向かって飛び出して来たので、吃驚した。
しかも、かなりの速度なので、その場に立ち止まっていたら、貫通する恐れもあったので、素早く動いたのだが、数本食らってしまい、かなり痛かった。
「っく……」
「っふ、どうやら……この術を防ぐ術は持ち合わせていないようですね? なら棄権しないかな? 今の術をもう一発喰らわせて、串刺しにしてあげますよ?」
そう言われて、俺はこう言う。
「なら、やってみろよ」
「解りました、死にたいようですね? では、行きますよ!」
そう言って、ゴンオウが再び術を発動しようとしたので、俺は対象物をコンオウに設定、そして術を発動する。
「デスト・ドリード!」
俺の術が発動、コンオウが「喰らいなさい! レイン・ゴールド!」と言っていたが、術が発動しなかった。
「な……何故、術が……」
「ああ、俺が止めたから、さて……」
「ひぃ」
「こっからは、俺の番だよなぁ? どうやってやろうか?」
「ま、まだだ! 私には他に術があるのだ! 喰らえ! ヒート・ボール!」
ゴンオウがそう言うが、術が全く発動しなかった。
ま、俺の術で使用禁止にしたしな?
まあ、こいつが全ての術が使えない事、まだ気がついてないっぽいしな?
「で? その他の術と言うのは、いつ発動するんだ? ん?」
そうからかうような声で言ってやると、ゴンオウが
「………何故なのだぁ……何故私の術がぁ……使えなくなったのだぁ……」
と、か細い声で言っていたので、普通なら可愛そうと思うのだが、俺は全くそう思わなかったので、杖を構えて、こう言う。
「じゃあ、俺から行かせて貰うぜ? ライジン・ハンド」
俺がそう言うと、俺の両拳が光輝くの見届けた後、ゴンオウに向かって
「それじゃ、行くぜ!」
と言って、突っ込んで行くと、ゴンオウが
「待った! き、棄権する!」
と言って来やがった。
それを聞いたユコが
「ゴンオウ様、棄権を提示しました、よって、この試合はこれで終了です、この勝負、コウ様の勝ちとします!」
と、ユコが試合終了の宣言をしてしまったので、結局殴り飛ばす事が出来なかった。
試合が終わった後、ゴンオウが
「あのー、失礼な態度を取って申し訳ないです……それで何ですが……私の魔法、戻せます?」
と、聞いて来たので、俺は一言
「いつかな」
「そんなあああ!」
と、叫んでいたが無視する事にした。
試合が終わったので、ユコに案内されて、控え室に戻ると、ユコが
「それにしても、コウさん……なんか強くないですか?」
「そうか?」
「ええ、強力な術を使っている風には、全く見えないんですけど……」
「そうかもな?」
「まあいいです、試合お疲れ様でした、魔力ポーション改を渡して置きますね?」
そう言って、ユコが魔力ポーション改を渡してきた。
「では、第三試合まで、待機して下さいませ」
そう言って、ユコが部屋から出て行く。
ユコが出て行った後、考える事は、これって俺、使い方によっては、優勝出来るんじゃね?って思っていたのであった。




