~第七十一話~ベゼルバード王国~魔法実験~
俺達は、ベゼルバード王国で、依頼「ウルフデビル」の討伐依頼をする為
クリスに案内させて、国の外に出る事にした。
国の外に出て思う事は、何と言うか……草花が少なく、地面も舗装されていないので、土の色が目立っていた。
「なあ、クリス……方角は本当にこっちであっているのか?」
「む……コウさん、本当に信用してない感じの顔ですね? 大丈夫ですよ、こう見えても、私は方角を見失った事は、一度も無いので、目的地と決めたら、そこに辿り着く確立がかなり高いんですよ?」
「そうなのか?」
「はい、だから安心して、私に任せて下さい! あ……でも」
「でも?」
「私、術が使えない状態なので、戦闘には役には立たないですね」
「そうなの? クリスちゃん」
「はい」
「自信持って言う事か? それ」
「こうなったのも、全部コウさんのせいじゃないですか、私の術を封じたんですよ?」
「それもそうよね」
「二人とも、そんな目で見るなよ、俺が悪いみたいじゃないか?」
「うわ、自覚が無いみたいですよ……うう……一体いつになったら、私の術……戻るんだろ……」
そんな事言われてもな……俺には治せないのだから、どうしようもないんだがな?
そんな会話をしながら、ベゼルバード王国から、西に進む事にした。
西に行くと、沼があるらしいので、歩いていると、地面に穴が開いて、中から何かが飛び出して来た。
飛び出してのは、三メートルはあると思われる、巨大なミミズっぽい生き物だった。
「なあ、リム? あれなんだ?」
「あれは……サンドリューね、土の中に生息する魔物よ? 攻撃方法は、あの口みたいな所から発射される粘液攻撃と、体を使って巻きついて来る、巻きつき攻撃ね、あのサンドリューは、火系の術に耐性が無いから、私の術でやっつけるわ」
そう聞いて、俺はリムに
「待った、ちょっと俺の術の実験をするから、攻撃魔法をちょっと待ってくれないか?」
「実験?」
「ああ、とりあえず、あのサンドリューとか言う魔物で、実験したいと思う」
俺がそう言うと、リムが
「解ったわ、コウに従うわね」
「わ、私は攻撃手段が無いので、離れてますね」
そう言って、クリスが俺達から離れて、見守るみたいだった。
うん、何と言うか……クリス、術が使えないと、役に立たないな……
ま、そんな考えをやめて、俺はサンドリューと対峙する。
サンドリューには、目らしき物が無く、うねうねと動いているので、かなり気持ち悪かったが、俺は自分の術を試して見る事にして、術を発動する事にして、指先をサンドリューに向けて、呪文を言う。
「デス・トラップ」
俺がそう言うと、サンドリューの動きが止まったので、時間を計る。
この術は、十秒間だけ動けなくする術なので、十秒間後、再びサンドリューが動き出したので、俺は再び
「デス・トラップ」
そう言って、二回目のデス・トラップを発動して、動きを止める。
動きを止めた後、俺は心の中で、目標をサンドリューにして、効果を睡眠にしてから、こう言う。
「デットリー・レイ!」
俺の二番目の術が発動、この術の効果により、サンドリューが睡眠状態になるので、動かないサンドリューに近づいて、睡眠状態になっているかどうかを確認する事にした。
ちゃんと術にかかっているらしく、触っても動こうとしなかったので、睡眠状態に入ったんだと思われる。
この状態から、俺は対象物をサンドリューにして、別の術を発動する事にした。
「ハーデス・ドライブ!」
この術の効果は、一分間だけ操る事が出来ると言う術で、前にクリスに試してみた術でもあった。
クリスには、ばっちりと効いたけど、この魔物にもかかるのか……? と思ったが、サンドリューの周りに黒い靄が現れて、吸い込まれていくのを確認、これで操れる状態になったのか……? と思ったので、早速命令してみる事にした。
「サンドリュー、踊れ」
そう言うと、動かなかったサンドリューが動き出して、体を揺らす。
うん、見た目は巨大ミミズなので、かなり変な踊りに見えた。
「ねえ、コウ……これが実験?」
「ああ、俺の術は、魔物にも効くかどうか、実験してみたんだが……どうやら、魔物にも効果があるみたいだな、ほら、踊ってるだろ?」
「確かに……でも、どうするの? この魔物」
「そうだな、実験は出来たし……リム、火系の術で倒せるんだよな?」
「ええ、火系術のファイヤーボールじゃ無理だけど、フレイ・バーストなら、一撃で倒せるわ」
「なら、そのフレイ・バーストを使って倒してくれ」
「了解、じゃあ、行くわよ」
そう言って、リムが杖を構えて、術を発動する。
「フレイ・バースト!」
リムの火系の術が発動、杖から大きな火の玉が出現して、サンドリューに命中、叫び声をあげる事もなく、一瞬で蒸発して、サンドリューが跡形も無く消滅した。
俺は、この術を新しく覚えた俺の術で、奪えるのか? と思ったので、使用方法がよく解らなかったので、心の中で「フレイ・バースト、シャドウ・コピー」と念じた瞬間、リムが異変を感じたみたいだった。
「な、何? 今の……」
「どうかしたのか?」
「なんか……体から力が抜けていくような感じがしたのよ……」
と言う事は、もしかして……今、念じた事で、俺がリムの術「フレイ・バースト」を使用可能になったと言う事か?
とりあえず俺は、リムにこう言う事にした。
「リム、もう一回、同じ術を発動してみてくれ」
「え? でも……魔物は、今の一撃で倒しちゃったわよ?」
「いいから、じゃあ、空に向けて、一発放って見てくれ」
「よく解らないけど……まあいいわ」
そう言って、リムが杖を構えて、空に向けて、さっきと同じ術を発動する。
「フレイ・バースト」
しかし……時間が経過しても、術が発動する事は無かった。
「な、何で? 術が使えなくなってるのよ?」
「もしかして……仲間が増えたんですか?」
離れていたクリスが、いつの間にか戻って来ていて、そう言ったので、俺は
「いや、フレイ・バーストだけ、使えなくなっているだけだと思うぞ、他の術をやってみてくれ」
俺がリムにそう言うと
「じゃ、じゃあ……ライト・アップ」
そう言うと、術が発動して、光の玉が出現した。
「本当みたい……他の術は、問題無く使えるみたいだわ、でも何で、フレイ・バーストだけ使えなく……?」
「俺が奪ったからな」
「は……?」
「コウさん……奪ったって?」
「まあ、見ていろ」
俺は、せっかく購入したので、杖を取り出して、術を言ってみる事にした。
「フレイ・バースト!」
俺がそう言うと、杖が反応して、俺の持っている杖から、火の玉が発動、特に目標を決めていなかったので、上空に打ち上げて、地面に落下して、消滅した。
「な?」
「な、何で……コウが私の術、使えるのよ!?」
「よし、実験成功だな、俺の新しい術はな? 相手の術を奪って、自分で使用出来る術なんだ、まあコピーだな、とりあえず……実験は出来たし、返すな? クロック」
これで、リムがフレイ・バーストを使える事になった筈なので
「リム、これでフレイ・バーストが使える筈だ、ちょっとやってみてくれ」
「わ、解ったわ……フレイ・バースト」
リムが杖を構えて、術を発動、何も問題も無く、リムの杖から火の玉が、出現した。
その光景を見て、俺は
「な? 戻っただろ」
「コウさん……貴方の術って、かなり嫌な感じですね……」
「ええ、私もそう思うわ、と言うか……相手の術を奪うって、かなり卑怯じゃないかしら」
「そうか?」
「はい、敵に回したくないって感じです」
「ええ……」
「ま、とりあえず……実験はしたし、依頼のウルフデビルの討伐に行こうぜ」
「……そうね、そうしましょうか」
「はい、そうですね」
うん、実験もとりあえずやったし、これは……かなり使える術かもな……?
と、思いながら、ウルフデビルを探す事にしたのであった。




