~第七話~ユーグレストの森での戦闘~
リムが仲間になった後、俺達は、依頼を受ける為、換金所へと向かった。
向かう前に、リムが、ある袋を取り出して
「コウ、貴方にこの袋をあげるわ」
「袋?」
「この袋はね、コイン袋と言ってね、この中にお金を入れる袋なのよ、まあ見てて」
リムがそう言うと、一枚の硬貨を袋の中に入れた。
「はい、中を見てみて?」
袋の中を覗きこんでみると、何も入っていなかった。
「何も見えないけど」
「この袋の中って、魔法がかかっていてね、それで見えなくなるのよ、手を入れると、ちゃんと入っているから、大丈夫よ」
「へー結構便利何だな?」
「ちなみに、百枚までしか入らないから、注意してね」
リムから、コイン袋を貰った後、換金所に辿り着く。換金所に辿り着いて、中に入ると、カウンターにいるのは、女性だけなので、サリューさんしかいないみたいだった。
サリューさんしかいないみたいなので、俺はサリューさんに話しかけてみる。
「あの」
「あ、えっと……コウ・ドリム様ですね? どうかされましたか?」
「依頼を受けたいんだけど、いいかな?」
「依頼ですか? 少々お待ち下さい」
そう言って一度、奥の部屋に行った後、紙を持って、戻ってきた。
「はい、コウ様ですね? コウ様は、昨日、美化花の採取依頼を完了していますので、新しい依頼をご希望ですよね?」
「はい」
「では、新しい依頼はこちらになります」
紙を渡されたので、俺は中身を見てみる。書かれてある内容は
「レッド・デモンズの討伐、700ベリカ」
「ミニ・サンドワームの討伐、500ベリカ」
「スコルピオンの討伐、800ベリカ」
となっていた。うん……全部討伐系の依頼になってるみたいだな……あと、高いか安いかの基準が解らん……そう考えていると、黙っていたリムが
「ねえ、コウ、引き受けるなら、これにしない?」
指差したのが、スコルピオンの討伐だった。
「これか……?」
「ええ、貴方の実力を知りたいしね? いいでしょ?」
そう言われて考えてみる。一体どんなモンスターか、全く解らなかったが、まあチャレンジしてみるのもありかと思ったので、俺は
「じゃあ、このスコルピオンの討伐を依頼するよ」
「畏まりました、では……詳細を教えますね? ユーグレストの森に最近出没するようになった、スコルピオンと呼ばれる物で、節足が六つあり、目が三つある生物でもあるので、それが特徴です、この討伐依頼で、依頼証明にスコルピオンを退治した際、緑色の宝石「緑石」と呼ばれている品物が出現します、その「緑石」を6つ持ってきて下さい、期限は三日とします、前にも言いましたが、期限を過ぎると無効になりますので、お気をつけて」
「解った」
依頼が決まったので、俺とリムは、換金所から出て、俺は早速、リムにこう言った。
「リム」
「何? コウ」
「ユーグレストの森って、どっちだ?」
「……え?」
「いやな……俺……土地勘とか全然ないからな、どっちの方角にユーグレストの森があったか、忘れたんだよ」
「は~……しょうがないわね? 私が連れてってあげるわ、感謝しなさいよ?」
「ああ、すっげー感謝する」
「で? 何か必要な物は、持って行くの?」
「持っていくと言われてもな……俺の全財産、これだぜ?」
そう言って俺は、コイン袋を見せる。
「リム、100ベリカで、買えると思うか?」
「買えないわね、少なくとも武器は買えないわよ?」
「やっぱりそうか、だったらそのままの格好で行くしかないよな」
「そうなるみたいね」
「あ、ところで」
「何?」
「レインが言ってたんだが、リムって転送魔法とか使えるのか?」
ちなみに俺がゲーム「マジカル・クエスト」をプレイした時、魔術師にした時、転送魔法が存在した。その転送魔法は「リレイン」と呼ばれる術で、この術は一度行った町に、魔力がある限り、行ったり来たり出来る結構便利な術だと言う事を覚えていた。町から町へのショートカットとして、役に立つ術でもある。
「転送魔法ね……そう言うコウはどうなの?」
「俺は覚えてない、と言うか……今の所、呪文って二つしか覚えてないぞ?」
「それで魔術師と言えるのかしらね……まあ、いいわ。ちなみに、私も転送呪文は覚えてないわね? まあ、覚えようとはしたのだけど、難しくて理解出来なかったのよ」
「じゃあ、地道に行くしかないって事か?」
「そう言う事ね、ユーグレストの森の場所は、私が知っているから、案内してあげるわ、さ、行きましょう」
俺はリムについて行く事にした。ユーグレストの町から出て、草原を歩き続けて、数時間後、森が見え始める。
「ここが、ユーグレストの森よ? コウ、ここから来たのでしょ?」
「そう言う事になるけど、俺、はっきり言って転送魔法で飛ばされたようなもんだからな……だから、ユーグレストの町もこの森も全く知らなかったんだ」
「そう言う事……じゃあ、森の中を探索して、依頼のスコルピオンを探しましょう」
「了解」
そう言って森の中に入っていく。森の中を探して、数分後、早速何かを見つけた。
足が八本あって、目が三つある生物なので、これが「スコルピオン」だと思われる。
見た目を一言で言うと……巨大蜘蛛じゃね? 思いっきり虫だな?
赤茶色をしていて、目らしき物が三つあるので、思いっきり化け物に見える。子供が泣き出すレベルじゃね? この生物……こんな奴が町の中に現れたら、すっげー嫌だと思うな……
「コウ、こいつが、スコルピオンみたいね? さ、貴方の実力を見せてもらうわよ?」
「って、リムは加勢してくれないのかよ?」
「一度、貴方の術を見てみたいしね? さ、やってみて」
どうやら、手伝ってくれないみたいだった。しょうがねえ……やってみるか!
俺はそう思う事にして、指をスコルピオンに向ける。
そして、小手調べとして、この術を発動してみた。
「デス・トラップ!」
そう言うと、足を動かしていたスコルピオンの動きが、ピタっと止まった。その様子を見たリムが
「今のが術?」
「ああ、どう見える?」
「相手の動きを封じる術みたいだけど、驚いたわ……本当に杖を使わないのね?」
「ああ、でな? この術の効果って、約十秒だから、ほら」
俺がそう言うと、再びスコルピオンが動き出したので、俺は
「はい、デス・トラップ!」
再びスコルピオンの動きを止めた。その光景を見たからか、リムが
「……こんなにあっさりと術にかかるなんて、完全命中って事なの?」
「今の所、そうだな? 一度もミスってないし」
また十秒たったので、再びスコルピオンが動き始めたので
「ほい、デス・トラップ!」
動きをまた、止めてやる。
「はー……その術が、かなり強力なのは解ったわ、でも止めるだけじゃ倒せないわよ?」
「それは解ってるから、俺の二番目の術を使うんだ」
「へえ……どんなの?」
俺は、対象物をスコルピオンに設定、効果を毒にして
「デットリー・レイ!」
そう言った瞬間、スコルピオンの体の色が緑色に変色し始めた。
「い、今のは?」
「俺の第二の術だ、これでこのスコルピオンは、毒状態になったって事、リムは解るか?」
「ええ、あの色は、毒を現しているわね?」
毒状態のまま、再び動き始めたので、俺は
「デス・トラップ!」
そう言って動きを封じた。
「これが俺の戦い方だな」
「かなり、卑怯じゃない? 動かない相手に、毒を浴びせて倒すって」
「そうじゃないと倒せないからな、これが俺のやり方だな」
二人で話していると、スコルピオンが消滅していく。どうやら、毒で体力を全て奪ったみたいであった。
スコルピオンが消えた跡地に、緑色に光る石が3つあった。
「これが、依頼品の緑石かな」
「多分そうね、あと三つで依頼完了だから、もう一体見つけましょう」
「ああ」
俺とリムは、森の中を彷徨い、数分後、もう一体のスコルピオンに出くわした。俺は、リムに
「リム、今度はお前の術を見せてくれないか?」
「そうね、せっかくだし、私の術を見せるわね?」
リムが小さめの杖を取り出して、杖を振るってこう言う。
「フレイ・バースト」
聞いた事のある術だった。
「フレイ・バースト」
ゲーム「マジカル・クエスト」の魔術師が覚える術でマジシャンレベル20で覚える術である。火系術の3番目の術で、対象物一体に火の攻撃で、ゲームだと、70ダメージを与える、結構強い術でもあった。
リムの術「フレイ・バースト」がスコルピオンに命中
一撃で消滅したので、効果は抜群な感じがした。地面に緑石が、三個落ちていた。
「どう? これが私の実力よ?」
「ああ、解った、でもな……?」
「何よ?」
「森の中で火系の術使うなよ、ほら、見ろよ! 木に燃え移ってるじゃねーか!」
そう、さっきのフレイ・バーストの攻撃によって、森の木に引火していた。このままじゃ、火事になるって感じだった。
「あ……い、急いで消すわよ! アクア・ウォーター!」
リムが杖を振って、水系の呪文「アクア・ウォーター」を発動
何とか鎮火したので、火事にならなかった。
「ま、たまにはこういう事もあるわよね? あはは……」
「いや、ねえだろ……術を使うときは、よく考えて使えよ?」
「う、うん、そうするわ……ところで、緑石が6個集まったから、これで依頼は完了よね?」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、ユーグレストの町に戻りましょう?」
「そうだな」
依頼「スコルピオンの討伐」を完了したので、俺とリムは、ユーグレストの町へと戻る事にしたのであった。