~第六十七話~シグルンの町~衣装と杖を揃える事にしました~
「朝ですよ~起きて下さいませ~」
そんな声が聞こえて、目が覚める。
目が覚めて、辺りを見渡して思う事は……見慣れた部屋だな……と思ってしまった。
まあ、ここはシグルンの町の宿屋「ルーンライト」のスイート部屋ではなく、普通の部屋で、昨日仲間になったクリスは、リムと同じ部屋になっていて、俺はこの部屋で一人っきりで、泊まったのを思い出した。
じゃあ、今部屋の外から聞こえてきた声は、ここの従業員のオリフィアの声だな? と思い、部屋の外の扉を開けると、そこにいたのは、背が小さくて、小学生っぽい感じの従業員の少女がいて
「コウさん、朝になりましたので、起こしに来たのですけど……今から、食堂に行きますか?」
そう言ってきたので、俺はオリフィアの頭を撫でながら
「いや、後から行く」
「そうですか、あの……な、何で撫でてくるんですか?」
「いや、小さいのに偉いな~と思ってな?」
「こ、子供扱いしないで下さい! これでも大人なんですよ?」
「大人か?」
俺は、改めてオリフィアをマジマジと観察する。
見た目、子供、胸のサイズ、ペッタンコ、ロリコンなら喜ぶのかも知れないが、俺は別にロリコンでも無いので
「っは、これならエリーの方が、十分大人だな」
「むー! 何ですかその言い方! ムカツキますね! あれですか! 背ですか? 背が小さいから子供だと言っているんですよね!?」
「いや、背だけじゃ無いぞ、色々とあるんじゃないか?」
「色々って……ちょ、どこ見てるんですか! 何か気持ち悪い視線を感じましたよ!? 私は他にも、仕事があるので、これで失礼します!」
そう言って、オリフィアが離れて行った。
オリフィアが離れた後、俺は部屋の中に戻り、バッグの中から、魔証石を取り出して、自分の魔力を計測して見る事にした。
自分の魔力を計測して見ると、表れた数字は魔力最大値300、魔力値300と、表示されている。
と言う事は……魔術師レベルは、一レベルに対して、10上がっていくのを確認が取れているから、この数字だと、魔術師レベル30と言う事になるのか?
と言う事は……異世界生活二十六日目にして、やっと30になったと言う事か……魔術師レベルが30になったと言う事は、前に自分の事を予習して覚えているのは、魔術師レベル30で覚える、第五の術を覚えていると言う事だった。
確か……名前が……シャドウ・コピーで、効果が、相手の術を一つ奪って、自分の魔力で使用可能にして、魔力がある限り連続使用可、「クロック」と唱えて、解除可能と言う事だった。
じゃあ、俺の今の魔力が、300だから、魔力が使えなくなったら、使用不可になると言う事で、まず……この術は実験する必要があるかもな……? その実験は後にする事にして、今は朝食を取る事にするか……と決めて、忘れ物が無いかをチェックした後、俺は部屋を出て、食堂へと向かう事にした。
食堂に辿り着くと、リムとクリスの姿を見つけたので、話しかける。
「おはよう、二人とも」
「おはよう、コウ」
「二人はよく眠れたのか?」
「はい、バッチリです、ね? リムさん」
「ええ、まあ……同姓同士だから、ゆっくりと出来たわ」
「そうか、俺は別に同じ部屋でも良かったんだがな」
「な、何言ってるんですか? 恥ずかしいですし……」
「俺が何かすると思ってるのか? クリス」
「はい」
「ほーお前はそう思ってんだな?」
「だ、だって……前に私にかけた術って、強制的に足止めにする術じゃないですか……女の子なら、危険を感じますよ?」
「でも、何もしなかったじゃないか」
「それはそうですけど……でも、無理矢理は良くないと思います」
「それはそうよね、コウ、無理矢理はやっぱり駄目と思うわよ」
「リムまでそう言うのかよ……」
そんな事を話していると、オリフィアが料理を運んで来たので、頂く事にした。
朝食のメニューは、パン中心の料理で、味付けがしっかりとしているからか、結構美味しかった。
クリスが「むむむ……この味、なかなかやりますね? 母さんといい勝負かも」とか良いながら、食べていた。
あっという間に食べ終わり、宿をチェックアウトする。
ちなみに料金は、俺が払う事になった。
クリスが「ここは、男の人が払う物ですよ~」とか言ってきやがったからである。
まあ、資金はあるので問題は無いんだが、何か言い方がむかついたので、デコピンを食らわしたら「何で叩くんですか!」と、ちょっと怒っていた。
うん、クリスが怒っても、全然怖くないなあ~むしろちょっとうざく感じるし?
受付にいるエリーから、自分の武器を受け取った後、俺達は宿屋「ルーンライト」を出る。
宿屋を出てから、俺は二人に
「じゃあ、早速、ベゼルバード王国に行くんだが…………二人とも、何かこの町でやり残した事は無いか?」
そう問いかけて見ると
「私は特に無いけど……クリスちゃんは?」
「私も無いんですけど……あの、コウさんは杖を持っていないんですよね?」
「ああ、今は剣しか持っていないな?」
「なら、杖を購入した方がいいんじゃないですか? 魔術師なら、杖を持っているのが当たり前ですし」
そう言われて、ちょっと考える。
確かに、魔術大会の参加チケットを貰ったし、杖なしだと、剣士だと思われて、参加出来ないかもだし、やはり……杖を振るフリをして、なんちゃって魔術師になった方が良いかも知れないな?
俺は、そう考えて
「そうだな、資金もあるし……杖を購入してから、ベゼルバードに行く事にするか」
「了解、あ、なら……どうせなら、魔術師っぽい衣装に、着替えた方が良いんじゃないかな?」
「そうか?」
「ええ」
「そうですよ、今のコウさん、杖持ってないから、魔術師に見えないですし」
「じゃあ、杖と魔術師の衣装を購入してから、ベゼルバードに行く事にするぞ」
「そう、じゃあ、私は……杖を探す事にするわね? コウは服を探して来たら?」
「あ、リムさん、私もお手伝いします」
「じゃあ、俺は服を探す事にするよ、あ、お金は」
「大丈夫、杖は私がプレゼントするから、気にしなくていいわ」
「そうか、じゃあ……購入したら、ここで待ち合わせって事で良いか?」
「Okよ? じゃあ、クリスちゃん、行きましょうか」
「はい、ではコウさん、行って来ますね」
「ああ」
そう言って、リム達と別れて、俺は服を探す事にした。
シグルンの町の中を歩いて数分後、服を売っている店は、簡単に発見する事が出来た。
お店の中に入り、店員に「魔術師が着る服は無いか?」と聞いた所、俺の目の前に出されたのは、白い魔術師のローブと青い魔術師のローブだった。
お店の店員が言うには「色はこれだけですね、どっちを選びます?」と聞いて来たので俺は、迷う事無く青い魔術師のローブを選ぶ事にした。
何故白を選ばなかったと言うと、俺の使う術って、はっきり言うと黒のイメージが強いし、白って回復系とかそんな感じじゃないか?って思ったからである。
値段もそんなに高くなかったので、青の魔術師のローブを購入して、早速装備する。
鏡で見てみると、杖があったら、完璧に魔術師だな……と、思ってしまった。
まあ、買い物が終ったので、待ち合わせ場所に戻ると、リムとクリスが既にいて、俺は二人に話しかける。
「お待たせ、どうだ? これ」
「あ、コウ? え~っと……クリスちゃんは、どう思う?」
「え? え~っと……はっきり言いましょうか?」
「ああ」
「似合ってないです」
「うん、私もそう思ったわ、他に色無かったの? コウ」
「いや、他には白色があったんだが」
「そっちの方がまだマシだと思うわ、あ、これ、杖ね?」
そう言って、リムから小さめの杖を渡してきた。
「これは?」
「これは、私と同じような杖の、ミニ・ロッドよ? これでコウも、魔術師に見えるわね」
「そうか……まあ、格好は気にしない事にするとして、ベゼルバードに行くぞ」
「了解」
「はーい」
そう言って、俺達はベゼルバードに行く事にしたのであった。
似合ってないってな……かなりへこむんだが……




