~第六十三話~紅蓮の森~ワンバンキング討伐~逃走~
俺とリムは、紅蓮の森にいると思われる魔物、ワンバンキングの討伐に行く事になった。
シグルンの町を出て、西の方角にあると聞いたので、西の方角に歩いていく。
歩いている途中、草むらから魔物が飛び出して来たので、戦う事にした。
飛び出して来たのは、前にも戦った事のある魔物、狼に似ている魔物で、カイザーウルフと呼ばれる魔物が現れたので、俺は武器を構える。
「コウ、私の魔法でやっつける?」
と、リムが聞いてきたので、俺はちょっと考えてから
「いや、俺一人でやってみる、危ないと思ったら、リムも戦ってくれ」
「解ったわ」
俺はそう言って、目の前に現れたカイザーウルフを見据える。
相手は一体だけなので、まず様子を伺う事にして、俺の所有している武器、光夢を構えて、様子を伺う。
カイザーウルフは、俺に気がついたからか
牙を剥き出して、攻撃態勢に入っている様で、俺に向かって突進してきた。
真っ直ぐ向かって来たので、それほど移動速度は遅く感じたので
俺は、まず指をカイザーウルフに向けて、呪文を発動する。
「デス・トラップ」
俺がそう言った瞬間、カイザーウルフに術がかかり、一時止まったので、その隙を突いて、持っている剣で斬り付けた。
あっさりと攻撃が命中して、真っ二つに切断し
カイザーウルフが倒れて、消滅する。
地面に何も落ちていなかったので、ドロップアイテムは無いようだった。
「リム、他に魔物がいるか、解るか?」
「待って…………うん、近場にはいないみたいね、一体だけみたい」
「そうか」
そう言ってから、剣を仕舞い込んで、紅蓮の森へと移動する事にした。
次に現れたのは、鳥型の魔物で、銀色の鳥で目が一つ目だった。
リムがその魔物を知っているらしく「あれは、ワンバードね? ここは私に任せて?」と言って、杖を構えて、火系の術を発動
弱い敵なのか、あっさりと倒してしまった。
倒した後、リムが「あのワンバードは、火が弱点だから、また現れたら、私がやっつけるわね?」と言っていたので、攻略方法は解っているみたいだった。
そんな感じに西へ進んでいく事、数時間
木が赤色の森に辿り着いた。
まず驚いたのが、木の樹も葉も全て赤色なので、結構不気味だった。
「ここが、紅蓮の森なのか?」
「多分、そうなんじゃないかしら……? コウ、ここからは慎重にいきましょう? 森の中だしね」
「ああ、そうだな」
そう言ってから、俺達は紅蓮の森の中に入る。
中に入って感じた事、それは……
「コウ、なんか……暑いわね」
「ああ」
森の中と外との温度が、まるっきり違って、結構暑く感じてしまった。
歩いているだけで汗が滲み出て来るので、気温……40℃超えてるんじゃね?って感じだった。
そんな森の中を彷徨っていると、森の奥から、何か音が聞こえてきた。
何の音だろうな……と、近づいてみると
「ねえ……あれが、ワンバンキングかしら?」
「かもな……じゃあ、そのワンバンキングと戦っている者がいるのか」
俺達が見つけたのは、ニメートル以上の四つ目の巨人と、戦っている男二人だった。
町で聞いた限りだと、あの巨人がワンバンキングだと思う。
「ねえ、コウ……? どうする?」
リムがそう聞いてきたので、俺は
「まず、様子を見てみようぜ? あの戦っている二人には悪いが……研究させて貰おう」
「え、加勢しないの?」
「ああ、無闇に突っ込んで行ったって、こっちがやられたら意味無いだろ?」
「まあ、それもそうよね……」
そう決めて、俺とリムは、ワンバンキングを観察する事にした。
まず戦っている男二人を見てみると、一人は剣を持っているから
あの男が剣士で、一人が杖を持っているし、魔術師の格好をしているので、魔術師だと思われる。
剣士の方が、ワンバンキングに向かって、切り付けているが……効果が無いのか傷一つ付いてないみたいだった。
あの感じだと……俺の持っている剣でも傷がつかないかもな?
そう思っていると、魔術師の方が杖を振って、術を発動
俺は、リムに
「なあ、リム? あの魔術師が何の術を発動したか、解るか?」
「ちょっと待って? あれは……氷系の術ね、アイスニードルね」
リムがそう言ったので、改めて見てみると
魔術師の男が、氷系の術を発動、氷の槍が何本も現れて
ワンバンキングに命中した。
けど、よく見てみると……ダメージを受けたようには見えなかった。
「なあ、あれって効いてないみたいじゃないか?」
「ええ、全然効いてないみたいよ?」
そう話していると、ワンバンキングの四つの目が赤色に輝いたので
何か不味いと思ったので、俺はリムの頭を掴んで、伏せる事にした。
すると、俺達の上を赤い光線が発射されて
その光線が当たった木が、一瞬で石の木に変わってしまった。
「い、今のが石化光線か!?」
「え、ええ! あ、ありがと、コウ」
「まだ油断出来ないぞ、ちょっと確認してみる」
そう言ってから、俺はそーっと伏せの上体から起こしてみて、辺りを確認してみる。
確認してみて解った事は、さっきの光線が三方向に発射されて
別の方角の木が石になっていて、あと剣を持っていた男が、石像になっていた。
石像になった男を見て、魔術師を方が「うわーーー!」と叫び声をあげた後、懐から羽を取り出したと思ったら、魔術師の男が、一瞬でその場から消えた。
その場に残されたのは、隠れた俺達と石になった男
あとワイバンキングだけで、ワンバンキングは四つある目を動かして
辺りを捜索している風に見えた。
俺は、どうしようか……と悩んでいると、四つある目が俺を発見したからか
ワンバンキングがこちらに向かって来たので、俺はリムに
「リム! とりあえず逃げるぞ!」
「え、う、うん!」
そう言って俺は、来た道を引き返す事にした。
追いかけてくるワンバンキングを後ろを確認しながら逃げていると
再び目が光りだしたので、あれが石化の合図かと思い、俺はリムに
「リム、左右に散れ!」
「解ったわ!」
そう叫んで、石化光線の射程から外れる事にした。
俺達がいた方角に石化光線が発射されて、その光線が当たった木が石化していく。
危ねえ……真っ直ぐ進んでいたら、確実にあの光線を喰らっていた。
リムも石化光線の射程から外れたらしく、無事だった。
光線が発射された後、目の色が元に戻ったので
その隙に俺とリムは、森を出る。
森を出ると、何故かワンバンキングが追いかけて来なかった。
「はあ……はあ……コウ……どう思う?」
「ああ……あの敵はヤバイな……危険指定の魔物だと言う事は、十分に解ったぜ……あのワンバンキングの倒し方をどうするかだよな?」
「ええ……見た感じだと、武器は効果なし、あと氷系の術も全く効かないようよ?」
「そうだな……じゃあ、他の魔術だが……とりあえず……」
「とりあえず?」
「まず逃走ルートの確保をしといた方がよさそうだな……あの魔術師が使っていただろ? 魔術師が使っていたのって、俺が前に使用した銀の羽だよな? まずは……その銀の羽を手に入れてから、再び挑んでみようぜ?」
「そうね……そうしましょうか」
「ああ」
そう決めて、俺達はワンバンキングを倒す前に
銀の羽を持っているホーンラビットを探す事にしたのであった。




