~第五十八話~違う国で、一泊泊まる事にしました~
俺達は、依頼を完了した後
ベゼルバード王国へ行って見る事にした。前にレイン達が、シグルンの町から転送の魔法を使って、旅立って行った所を見たので、俺達も同じ方法を取る事にして、転送陣のある場所へと向かう事にした。
町の中を歩いて、数分後、転送陣がある場所に辿りつく。
転送してくれるのは、前に会話をした男の人で、名前がイブルさんだった筈だった。
俺は、イブルさんに話しかける事にした。
「すいません」
「はい、何でしょうか」
「今からベゼルバードに行こうとしても、大丈夫ですかね?」
そう聞いてみると、イブルさんが
「そうですね……はい、時間的に大丈夫ですが……今から行きますか?」
俺は返事をして、イブルさんに料金を支払って、リムと一緒に、転送陣の上に行く事にした。
転送陣の上に辿り着くと、イブルさんが
「じゃあ、準備が出来ましたので、今から飛ばしますね? 一瞬ですので、すぐに終わりますよ? では、良い旅を」
そう言ってから、呪文を唱えて、転送陣が光り輝いたと思ったら、目の前が真っ暗になって、気がつくと……目の前に女の人がいて、町の風景もシグルンの町から、変わり果てていた。目の前にいる女の人が
「ベゼルバード王国へようこそ、十分に楽しんでいって下さいね」
と言っていたので、もうここはベゼルバード王国なのか……? とか思ってしまった。
「コウ、何か……えらい早く着いたって感じよね?」
「ああ、もうベゼルバード王国らしいな」
「そうみたいね……とりあえず……」
「とりあえず?」
「この国の中を見て回りましょうか? 何があるのか全く解らないしね?」
「そうだな、そうするか」
そう決めて、俺達はベゼルバード王国と呼ばれている国の中を探索する事にした。見た目を一言で言うと、黒かった。何が黒いのかと言うと、壁の色がどの建物も黒で統一されているらしく……屋根だけが銀色をしていて、かなり変わった感じの国だな……と思いながら、お城があったので、お城を見ても……白亜の城と言うより、何と言うか……魔王がいそうな魔王城みたいに、城の概観も真っ黒に染められていた。
「この国って……えらく黒を強調しているって感じね……」
「ああ……どの建物も黒いしな……これは夜になったら、どうなるんだろうな……」
「さあ……それはなってみないと解らないけど、街灯があるんだし、結構明るくなるんじゃないかしら?」
「ま、確かにそうかもな……とりあえず、何の店とかあるのか、確認する事にしようぜ?」
「そうね」
俺達は何の店があるのか、探す事にした。国の中を歩き回って、見つけたのは、武器屋と防具屋、それと冒険者ギルドに宿屋だった。国と言うだけあって、どの建物も他の町と比較してみると、結構大きくて、値段も高そうな感じがしてしまった。
とりあえず……宿屋を見つけたので、俺はリムに
「リム」
「何?」
「今日はどうする? この国で一泊してから、シグルンの町に戻る事にするか?」
そう聞いてみると
「そうね……じゃあ、そうする事にしましょうか?」
「じゃあ、決まりだな? 早速中に入って見る事にするか」
二人で話した後、この国の宿屋に入る事にした。
宿屋の名前は「リラクベゼル」と書かれていて、中に入ってみると、タキシード姿の男性が俺達を見て、こう言って来た。
「いらっしゃいませ、宿屋「リラクベゼル」へようこそ、このお店は初めてですか? お客様」
「ああ」
「では、この宿屋のご説明をしますね? このベゼルバード王国には、この宿屋ともう一つの宿屋があります、ちなみに値段はそんなに変わっておりません、あとこの宿にしかない物もありますよ」
「この宿にしか無い物?」
「はい、この宿屋には……温泉があります」
「温泉?」
「はい、ベゼルバード温泉と言いまして、疲労回復の効果がありますよ、この温泉目当てで、泊まりに来る常連客もいたりしております」
温泉……確かに、他の宿屋には温泉と言う物は、存在していなかった。
なら……入ってみるのもいいかもな?
「お客様、宿泊されますか?」
そう聞いて来たので、俺はこう言う事にした。
「ちなみに値段はいくらなんだ?」
「この宿の値段は、全て同じ設定してありますので、食事付で一泊500べりカとなっておりますが? 初めてのお客様と言うので、サービスとして、一人500ベリカですが、二人纏めて500ベリカとしてもいいですよ? 但し、その場合、同じ部屋となりますが……それは、よろしいですか?」
そう聞いて来たので、俺はリムに
「リム、同じ部屋でいいよな?」
俺がそう言うと、リムが
「……解ったわよ、コウがそう言うなら、同じ部屋で構わないわ」
「なら決まりだな、じゃあ……同じ部屋で」
「畏まりました、では、防犯の為、所有武器を預からせて貰いますが、よろしいですか?」
そう言ってきたので、俺とリムは受付の男に、持っている武器を預けた後、部屋に案内して貰う事にした。部屋に辿り着き、中に入ってみて驚いたのは、思いっきり和室だった。
畳っぽいのが敷き詰められていて、木の椅子に木の卓袱台もあるので、これにみかんとかあれば、思いっきり和室っぽく見えてしまった。
「ここが部屋となります、朝はこの宿のスタッフが起こしに来ますね? それと温泉は、案内板がありますので、それが指し示す方向を歩いて行って下さいませ、では、ごゆっくりどうぞ」
そう言って、部屋から出て行ったので、俺は自分も荷物を置いた後、早速温泉に行く事に決め、移動しようとすると、リムが
「コウ、もしかして……温泉に行ってみるの?」
「ああ、リムはどうするんだ?」
「私も行くわ、どんなのか気になるしね」
「解った、じゃあ一緒に行こうか」
「ええ」
部屋から出て、二人で温泉に向かう事にした。案内板があったので、迷う事なく進んで行き、温泉に辿り着く。もしかして、混浴か……? とか思ったが、男女に別れていたので、混浴じゃないみたいだった。
うん、ちょっと残念かもな……とか、思っていると
「じゃあ、私はこっちだから」
と言って、先に行ってしまったので、俺も男の方へ入る事にした。中に入ると、籠の中に布があったので、この籠の中に服を入れて、この布を風呂場に持って行っていいみたいだったので、早速着ている服を全て脱いで、全裸になった後、布を持って、温泉の方へ行って見る事にした。裸になったからか、風を感じて、ちょっと寒かったが、湯船を見てみると、湯気が立ち込めていて、結構あったかそうだった。
誰かしらいるかと思ったが、誰もいなかったので、貸切状態って感じだった。
早速湯船の中に入ってみると、丁度良い温度に設定してあるのか、かなり気持ちよくて、誰もいないので、泳いだりして、はしゃいでしまった。
柵があるので、あの柵の向こう側に女湯があるのか……? とか思いながら、石鹸らしき物があったので、それを使って体を洗って、洗い終わった後、再び湯船の中に入り、温まる。
数十分温まった後、逆上せてしまいそうになったので、逆上せる前にあがる事にして、温泉を出る事にした。服を着込んで、元の姿に戻った後、宿泊している部屋に戻る事にした。
部屋に戻ると、先にリムが戻っていた。
「リム、どうだったんだ?」
そう聞いてみると
「結構気持ちよかったわよ? これならまた入りに行きたいと思うわね」
結構ご機嫌な感じに見えている。リムも楽しめたみたいだな……とか思っていると、リムが
「コウ、見て、部屋の外」
リムに言われて、部屋の外を見てみると、夜になっていて、街灯が照らされていて、かなり綺麗に見えていた。
「綺麗ね~いい国かも、この国って」
「そうか?」
「ええ、まあ……まだ行ってない所もあるし、何があるのかちょっと解らないけどね?」
「そうだな、とりあえず……何か眠くなって来たし、寝る事にするよ」
「そう? じゃあ……先に寝てて、私は後から寝るわ」
「解った」
そう言って俺は、布団が敷いてあったので、先に寝る事にして、今日の一日がやっと終わったのであった。




