~第四十九話~依頼を完了して、宿屋に戻りました~
化け物屋敷の一階で、幽霊だったレイナから、化け物は二階にいると言う情報を得たので、お屋敷の二階へと行く事にした。古ぼけた階段があったので、それを登って、二階に辿り着く。
二階も一階と同じような作りになっていて、一階とは違い、壁に窓が備え付けてあった。
「コウ……化け物退治だけど……本当に二階にいるの?」
レイナに憑依されて、元に戻ったリムが、そう言って来たので
「そうだな……まあ、二階にいる事は間違いはないと思うしな、とりあえず……探してみようぜ」
俺がそう言うと、リムが
「そう……解ったわ、探しましょう」
そう言ったので、一つ一つ捜索して行く事にした。二階は、五部屋あって、全て扉で閉ざされている。
最初に入った部屋は、鍵が掛かっていなく、簡単に開いたので、中に入ってみると……
中は子供部屋なのか、小さいベットと箪笥しかなかった。
「他に何もないみたいだな……」
「そうね……何かがいる気配も感じないし……別の部屋に行きましょう」
「ああ」
別の部屋へと向かう事にした。別の部屋も鍵がかかっていなく、簡単に開いたので、中に入ってみる。
中に入ってすぐに、部屋の中に何かがいる事が確認できた。
「これが……悪霊か?」
「多分……」
部屋の中にいたのは、顔が骸骨でフードを被り、手に鎌みたいな武器を持っていて、半透明で、しかも浮いていた。うん……見た目は思いっきり死神だな……って、こいつ……見た事があるな……と思ったら、ゲーム「マジカル・クエスト」に登場した魔物、デリスと呼ばれるアンデット系の魔物じゃないか……?って思ってしまった。デリスと思われる魔物は、俺達に気がついて、鎌を構えて、投げつけて来たので、俺とリムは一直線に飛んできた鎌をしゃがみ込んで避けると、鎌が壁に突き刺さる。
うわ……危ねえ……刺さってたらと思うと、ぞっとした。
「コウ……どうやって倒す……? あれ、魔物よね……?」
リムがそう聞いてくるので、俺は
「ああ、多分……デリスと呼ばれるアンデット系の魔物だと思うぞ、弱点は光系の術だ、リム、光系の術を使ってみてくれ」
「コウがそう言うなら、解ったわ、ビーム・レイ!」
リムが杖を振って、光系の術を発動したが、デリスがその動きを察知したのか、簡単に避けられてしまった。
「もう一回だ! リム!」
「え、ええ! ビーム・レイ!」
二回目の術が発動したけど、これも簡単に避けられてしまい、壁に刺さっていた鎌が動きだして、デリスの手元に戻ってきてしまった。
「駄目! 動きが早すぎて、私の術が当たらないわ!」
「なら……やってみるしかないな……!」
俺は、アンデット系に俺の術が効くかどうか、解らなかったが……試して見る事にして、対象物をデリスに設定、効果を麻痺にして、術を唱えてみる。
「デットリー・レイ!」
俺が術を発動すると、効果が現れたのか、空中に浮かんでいたデリスが、地面に落ちて、動きが止まったみたいなので、俺はリムに
「今だ! リム!」
「解ったわ! ビーム・レイ!」
リムが術を発動すると、俺の術で動かなくなっていたデリスにリムの術が命中して、叫び声のような奇声をあげながら、消滅したので、どうやら……倒せたみたいだった。
それにしても……俺の術……アンデット系にも効くんだな……? これならアンデット系退治も何なくこなせるよな……と、そう思った。デリスを倒した後、俺達は別の部屋を捜索する事にした。
別の部屋は普通の部屋って感じで、全部の部屋を見てまわったけど、他に怪しい所は全くなかったので、これで依頼完了なのか……? と思ったので、俺はリムに
「リム、とりあえず……他に何もないようだし、これって依頼完了だよな?」
「そうね……そうかも知れないわね……じゃあ、冒険者ギルドに向かいましょうか?」
「ああ」
そう言って、俺達は屋敷を出る事にした。一階に行き、入った時に入り口が閉ざされていたのだが……
戻った時に何故か開いていたので、閉じ込められたと言う事はなくなっていた。
お屋敷から外に出ると、夕方になっていて、もうすぐ夜に突入しそうだったので、俺達はお屋敷から冒険者ギルドへ向かう事にした。
冒険者ギルドに辿り着き、 受付にいる男の人に
「お屋敷の退治依頼、終わったんだけど?」
そう言うと
「早いですね……では、調査団が確認しに行くので、その確認が取れ次第、依頼料をお支払いしますね?」
「解った、ところで……あのお屋敷って、結局どうなるんです?」
「そうですね……壊すのも勿体無いので、売りに出されると思いますよ」
「じゃあ……俺が買う事って出来る?」
「……金額にもよりますが……では、家を売ると知らせが来た時に、貴方に教えましょうか? この町にはずっと滞在予定で?」
「とりあえず、そのつもりだけど……」
「では、お名前は?」
「コウ・ドリム」
「では、コウ様、家が売りに出すと知らせが入りましたら、コウ様に教えますね?」
「ありがとう」
「では……コウ様、他に依頼を受けますか?」
そう聞いてきたので、今日はいいかな……と思ったので
「いや、いいよ、また明日来る事にする」
「畏まりました、ではまたのお越しをお待ちしております」
そう言ったので、俺達は冒険者ギルドを出る事にした。冒険者ギルドを出た後、リムが
「コウ……まさか、あのお屋敷……買うつもりなの?」
「ああ、化け物屋敷だったけど、あの家って結構大きいからな~はっきり言って、豪邸に近いしな? 今あるお金で買えるんだったら、買うつもりだな……リムは反対なのか?」
「だって……化け物が住んでいたのよ……? 気味が悪くない?」
「そうか? 俺は特にそう思わないな」
「あ、そう……」
そう話していると、暗くなって来たので、俺達は、宿屋「ルーンライト」に行く事にした。
宿屋ルーンライトに辿り着き、受付にいるエリーに話しかける。
「今日も泊りに来ました」
「あ、コウ様にリム様ですね? 今日は……どちらの部屋に致しますか?」
エリーがそう聞いてきたので、どっちにしようか……と迷っていると、リムが
「じゃあ、普通の部屋で」
と言ってしまい、スイートではなく普通の部屋に決定してしまった。
「いいよね? コウ」
「まあ、別にいいけどな……部屋は一緒で?」
「別々よ」
「あ、そう……」
別に一緒でも良かったんだがな? まあいいか……エリーに武器を預けて、従業員のオリフィアに部屋を案内されて、リムと別々の部屋になったので、部屋の中に入る。
オリフィアが「ごゆっくりどうぞ」と言って、離れて行き、一人になったので、考える事はと言うと、リムの事だった。そういや……リムに憑依しているレイナだけど……リムが眠ったら、出てくるのか……? とか思っていると、外から「お客様!?」と声が聞こえてきたので、部屋の外に出ると、そこにいたのは……
「あ、コウ……ここ何所よ?」
そんな事を言っているので、レイナが出て来たんだと思う。
リムの姿を借りたレイナが、リムの体を乗っ取っているみたいだった。なので俺はリム(レイナ)に
「とりあえず……何してんだ?」
よく観察してみると、リム(レイナ)がオリフィアを抱きしめて、撫で回していた。
「いやーこの子、凄い小さくて可愛いからさあ~ちょっと撫でてみたくってね? えらいよね~こんな子供でもしっかりしているわ、うんうん」
「お、お客様~撫でないでください~あと、子供じゃないです!」
何というか……和むなあ……今はレイナが表に出ているみたいなので、俺はレイナに
「リム、とりあえず……離してやれ」
俺がそう言うと、レイナが
「解ったわよ、それじゃあね?」
そう言ってオリフィアを離すと、オリフィアが「では、失礼します!」と言って、立ち去っていった。
さてと……とりあえず……どうするかだが……
「えっと……レイナでいいんだよな?」
「ええ、そうよ、リムだっけ? リムが眠りについたと同時に私が出て来たのよ、で、コウ……ここって何所?」
「シグルンの町の宿屋」
「ふーん……宿屋は、入った事無かったけど、こんな風になっているのね?」
「で……お前は何で出てきたんだ?」
「別にいいでしょ? ところでコウ?」
「何だ?」
「町の中を見てみたいんだけど……いいわよね?」
「……それはリムの体だからな? 俺も一緒に行くぞ」
「解っているわよ、じゃあ、行きましょう?」
リム(レイナ)がそう言うので、俺は、トラブルがおきなきゃいいけどな……と、そう思っていたのであった。




