~第五話~依頼完了~一日の終わり~
無事に美化花をゲットして、ユーグレストの町へ戻る事になった俺
結構な距離なので、ユーグレストの町に着く頃には、夜になっているんじゃねーか?って感じがした。
とりあえず、行くしかなかったので、ユーグレストの町へ向けて歩いていると、出くわした物がいた。
草原から飛び出してきたのは、狼の姿をした物体で俺に対して、口を開いて牙を向けて、涎を垂らしている。この状態を一言で言うと……俺、食用と思われてないか? 改めて観察してみると、見た事のある生物だった。それは、ゲーム「マジカル・クエスト」に登場した敵で、名前を「ロンリーウルフ」と言う。
このロンリーウルフの特徴は、額に一本の角が生えていて狼の姿をしているのである。
確か…このロンリーウルフのHPは100だと言う事を思いだして、攻撃方法は爪を尖らせて引っかいてくる「引っかき」と一本の角で攻撃してくる、「頭突き」だった。
引っかきでのダメージは、10と結構高めになっていて、頭突きだとその倍、20ダメージを与える技でもある。この魔物、結構素早く、魔術師でプレイした時、術を選んで攻撃を加えても、約三割の確立で「ロンリーウルフは回避した」が出てしまうので、強さ的に言うと、中くらいの敵だった。
ま、俺はそんな、ロンリ-ウルフが五体も現れた状態の時に、火系の最強系呪文「エレメントフレア」ぶち込んで一撃瞬殺で、ぶち殺していたけどな? 今の状態だと、魔術師なので多分と言うか、他の系統の呪文を覚えていないのかもしれない。ロンリーウルフが、爪を前に出して、飛び掛ってきたので俺は「デス・トラップ」と、そう唱えてみると、ロンリーウルフが、飛んだ状態のまま地面に激突して、動かなくなった。十秒は動かないままなので、俺は試しにこう言って見る。
「ファイヤー・ボール」
しかし、何も起こらなかった。やっぱり、他の系統の呪文、覚えてないっぽいな……
じゃあ、今覚えているのは、デス・トラップとデットリー・レイだけかもな?
そう思っていると、時間が経過したので、再びロンリーウルフが動き始めた。
引っかき攻撃をやめたみたく、今度は頭を俺に向けて、頭突きのモーションに入ったので、俺はと言うと、突っ込んでくるロンリーウルフに「デス・トラップ」と、再び同じ呪文を唱えて、動きを封じた。
うん、やっぱ虐めだよな、この術……ま、助かってるけど、俺は動かないロンリーウルフに、別の呪文をかける。対象物をロンリーウルフに定めて、効果を毒にして、こう言う。
「デットリー・レイ!」
そう言うと、ロンリーウルフが苦しみ始めた。
ま、毒状態だし、何秒で倒れるかだが……結構しぶとく、再び動き始めたので
「ほい、デス・トラップ」
またロンリー・ウルフの動きを止める。その間に俺はと言うと、ユーグレストに向けて、歩き出す事にした。動き出したら、デストラップで動きを止めてを繰り返して、数分後、ロンリーウルフが俺に突っ込んで来る前に毒の効果が現れたのか、動かなくなり、消滅していった。
うわ、やっぱ外道だなあ……ま、魔物だからいいよな? ちなみにロンリーウルフを倒した時にたまにアイテムが現れる事がある。そのアイテムは「狼玉」と呼ばれていて、その狼玉はゲーム「マジカル・クエスト」だと一個で200ベリカで売れる品物でもあった。ま、もし狼玉が現れても、売れるかどうかはまだ解らないよな……ロンリーウルフが、消滅した跡地に何も残ってなかったので、どうやら、狼玉は現れなかったみたいであった。魔力値が極端に少ないので、魔力が無くなる前に、ユーグレストに戻る事にした。数時間後、ユーグレストの町に辿り着く。
天気は真っ暗になっていて、星の明かりが結構綺麗に見えた。
月っぽいのが、何故か二つ重なっているので、異世界っぽい感じがしてしまった。
無事に着いたのはいいんだが、気分はと言うと、最悪だった。足は痛いし、何も食っていないから、腹が減ってるし、とにかく、とっとと換金して、飯でも食いたい気分だったので、換金所に向かう事にした。
夜だから閉店してる場合もあるって事だよな……とか思いながら、換金所に辿り着くと、まだ換金所は開いているみたいなので、助かった。早速中に入ると、数人の男がいて、カウンターにいるのは一人だけだった。サリューさんがいなく、カウンターにいるのはマックと呼ばれる男だけみたいなので、俺はマックに
「依頼品を持ってきたんだけど……換金できるか?」
そう聞くと、マックが
「貴方の名前は?」
「コウ・ドリム」
「少々お待ち下さい…………ああ、コウ・ドリム様ですね? 依頼は「美化花の採取」ですか、では依頼品を提示して下さい」
俺は美化花をカウンターの上に置く。置いた後、マックが
「では、依頼品の確認作業に入りますね?………………はい、確認が取れました、では依頼料をお渡ししますので、少々お待ち下さい」
奥の部屋に行き、数分後
「依頼料、400ベリカになります、ご利用ありがとうございました」
そう言って俺に渡して来たのは、四枚の銀色のした硬貨だった。つまり、この銀貨一枚が、100ベリカの価値になるって事かな? とりあえず……その銀貨を受け取って、俺はこう言う。
「ちょっと聞きたいんだけど、このお金で飯食えて、宿に泊まれる?」
そう尋ねると、マックが
「今の時刻ですと、このユーグレストの食事所は閉店しておりますよ? 宿屋なら、「ユーグレ」がありますので、このお金で泊まれます」
「そっか、ありがとう」
「はい、ではまたのお越しをお待ちしております」
マックと会話を打ち切って、俺は外に出る事にした。すっかりと暗くなっていて、電灯に明りが灯されている。この動力ってやっぱり電気なのかとか思ったが、ま、考えても解らなかったので、早速宿屋「ユーグレ」に向かう事にした。宿屋「ユーグレ」の場所は、マックに聞いていたので、場所は解っていた。
迷う事無く辿りついて、「ユーグレ」の中に入る。
中に入ると、四十代ぐらいのふくよかな女性がいて
「いらっしゃい、ユーグレにようこそ、宿泊かい?」
「この金で、泊まれるか?」
「ああ、泊まれるよ。ちなみに一泊200ベリカになるけど、どうする?」
「それって安いんですか?」
「ああ、別の町だったら、一泊300ベリカはするな」
「じゃあ、宿として成り立たないんじゃ……」
「うちは利益を求めて営業している訳じゃないからね? この宿は私の趣味で開いたようなものだし、で、泊っていくのかい?」
「はい、泊まります」
銀貨を二枚渡すと、女将さんが俺をマジマジと見てくる。なんだ……?
「あんた……見かけない顔だけど、今日が初めてかい?」
「あ、はい」
「そうか、もしここを常連にするのなら、覚えておいてな? ここは朝の8時に朝食になっているわ、朝食はここの食堂で出されるから、部屋には持って行かないよ? 朝食を取りたければ、ここに来るようにね?」
「解りました、あの……」
「何だい?」
「時間が解らないんですが、どうしたら?」
「それは大丈夫だ、ほらあそこを見てみて」
そう言われて見てみると、壁に時計みたいなのが、装着されていた。時計に見えるので、何時かを見てみると、11時00となっているのが、解った。
「あれが時を刻む物、時物さ、時物は全ての部屋にあって、朝7時になると、音楽を鳴らすから、目を覚ますには丁度いいわよ」
「解りました、じゃあ俺の泊まる部屋は何所ですか?」
「じゃあ、案内するよ」
女将さんの後ろについて行き、一階の一部屋の前に来た。
「ここがお前さんの泊まる部屋だ、覚えておいてね? ちなみに施錠出来るから、持ち物はきちんと自分で管理しておくように、盗まれてもこちらでは関与しないからね?」
「了解」
「それと、私の名前は、クレムと言う、ここの宿屋「ユーグレ」の女将だよ、よろしく」
「あ、俺はコウ・ドリムです」
「そう、じゃあコウ、お休みなさい」
クレムさんが俺から離れて行った。部屋の中に入ってみると、小さいテーブルと椅子があって、トイレがあり、洗面所があって、ベットがあった。何というか……一人暮らしの部屋?って感じがした。
まあ、本棚と勉強机がないけどな……とりあえず疲れたので、ベットにダイブする。
シーツがフカフカでかなり気持ちよかった。
壁を見てみると、時計と思われる物、時物があった。
この世界では、時計じゃなく時物って言ってるんだな……とりあえず眠くなって来たので、腹減ってたけど、そのまま眠る事にして、一日目が終わったのであった。