~第四十六話~シグルンの町~転送術~
シグルンの町で出会ったのは、ユーグレストで別れた
レインとユーリの二人組だった。
よく見てみると、レインが背中に何か大きな荷物を背負っている。
「レイン……一体何を背負っているんだ?」
「あ、これは……運送の依頼を受けていてな、今からベゼルバード王国に行こうと思っているんだ」
「ベゼルバード王国?」
「何だ、知らないのか?」
「全く知らないんだが」
「ベゼルバード王国と言うのはですね? この町から直通で行ける国で、お城があるんですよ」
「へー……でも……どうやって行くのかしら?」
「それなんだが……気になるなら、ついて来るか?」
レインがそう言うので、俺は気になったので
「ああ」
「じゃあ、ついて来るといいぞ」
そうレインが言ったので、レインについて行く事にした。レインとユーリが歩き出して、町外れの方に行く。そこの小さいスペースに魔方陣が地面に記してあって、その前に一人の魔術師姿の男がいた。
「あれが、移動手段だ」
「あれが?」
「ああ、よくは知らないんだがな……魔術だから、ユーリの方が詳しいと思うぞ」
「はい、詳しいですよ、あれは転送呪文で、あの魔方陣の上に立つ人物を魔術で、転送するんです、あの魔方陣の上に立って、あの魔術師、イブルさんに頼んで、術をかけて貰い、べセルバード王国へ転送してくれるんですよ、さ、レインさん、早速行きましょうか」
「ああ、じゃあ私達は、ベゼルバード王国に行くけど、コウ達はどうするんだ?」
「そうだな……じゃあ、レイン達を見届けるよ、ところで……」
「ん?」
「そのベゼルバード王国に行った後、この町に戻ってくるのか?」
「ああ、この町の依頼だからな? あっちの国で受取書を貰った後、戻ってくるつもりだぞ」
「そう……何とも言えないけど……気をつけてね?」
「心配してくれて、ありがとうございます、リムさん」
「じゃあ、行くか? ユーリ」
「はい」
そうレインが言うと、レインとユーリが、イブルと呼んだ男に話しかけて、数枚の銀貨を渡して、魔方陣の上に乗る。すると、イブルが呪文を唱えて、杖を魔方陣に向けて振ると、魔方陣の上に立つレインとユーリの姿が一瞬で消滅して、その場から消えてなくなった。
あれが……転送術……凄いな……そう思っていると、リムが
「コウ、銀の羽と同じ効果だと思わない?」
「あ、そうだな、あのアイテムの術バージョンって事みたいだな?」
俺は、気になったので、魔方陣の前に立つ男に話かける事にした。
「なあ」
「あ、何でしょう?」
「あんたが飛ばしたんだよな? 魔方陣の上に立った二人を」
「はい、私の術 リレインで、目的地のベゼルバード王国に飛ばしましたよ?」
「それって、何回でも出来るのか?」
「いえ……この魔術は、かなりの魔力を使うので、一日に十回が限度ですね、あと送料も取ります」
「それっていくら?」
「片道ですので、送料は200ベリカとなっておりますね、あと回数が十回過ぎると、中止にしますし、夜になってもお休みします、あと……2回出来ますから……ベゼルバード王国に行きますか?」
そう聞かれたので、俺は
「いや、いい……あと、向こうの国に到着して、このシグルンの町に戻ってくるにはどうしたら?」
「それは、この町の反対方向にある魔方陣が用意されていますので、そこにベゼルバードから、このシグルンの町に転送されますよ」
と言う事は……行きはここで、帰りは反対方向にあると言う事なのだと言う事は解った。
「解った、教えてくれてありがとな」
「はい、利用する場合は、私に声をかけて下さいね、私は朝から夜まで、毎日この場所で仕事をしていますので」
つまり……この人、転送魔術師さんと言う事なのだろう。とりあえず解った事は、このシグルンの町から、ベゼルバード王国に行けると言う事が解った。王国ね……王国と言うからには、城とかありそうだよなあ……あと豪邸とか、ありそうな感じ……まあ、この町にも家が買えそうだけど、王国と言うのも一度は訪れて見たいしな……そんな事を考えていると、リムが
「ねえ、コウ、そろそろ暗くなって来るし、宿屋に行かない?」
リムがそう言うので、俺は
「そうだな、そうするか」
そう言って、宿屋「ルーンライト」に行く事にした。町の中を歩いて、宿屋「ルーンライト」に辿り着く。中に入ると、受付にいるエリーが
「いらっしゃいませ、宿屋「ルーンライト」にようこそ、宿泊ですよね?」
「ああ」
「では、どちらの部屋を希望しますか?」
と言って来たので、俺はスイートの部屋が気になったので
「じゃあ、スイートの部屋を希望するよ」
そう言うと、エリーが
「畏まりました、では、武器を預からせて頂きますね?」
エリーに武器を預ける事にした。武器を預けた後
「スイートは大部屋なので、一緒の部屋でよろしいですか? 別々だと二倍の値段になりますけど?」
そう言って来たので、俺はリムに
「一緒の部屋でいいよな?」
と聞くと
「しょうがないわね……そういう事なら、一緒で良いわよ」
リムがそう言ったので
「じゃあ、一緒の部屋でお願いするよ」
「畏まりました、では姉さんが案内しますね? 少々お待ち下さい」
そう言われて、待っていると、明らかに子供に見えてしまっている受付にいるエリーの姉のオリフィアがやって来た。
「スイートに泊まるのは、貴方達ですね?」
「ああ」
「では、ご案内しますから、ついて来て下さい」
オリフィアがそう言うので、俺達はオリフィアについて行く事にした。
廊下を歩いて、ある一角に辿り着くと、オリフィアが
「この魔法版の上に乗り込んで下さい」
地面の色が廊下の色と違う色をしていた。オリフィアにそう言われたので、魔法版? と呼ばれる場所の上に乗ると
「では、上昇しますね」
と言うと、どういう原理なのかが全く解らなかったが、俺達の乗っている魔法版が上昇して行き、二階に辿り着いた。
「二階に着きました、ではご案内します」
そう言って、二階の廊下に歩いて行ったので、その後について行く。うん……あの魔法版って、俺が元いた世界で言わせると、エレベーターって感じなのかも知れないな……そんな事を思いながら、歩いて行くと、大きな扉の前に辿り着いた。
「ここが、スイートルームになります、中に呼び鈴がありますので、何か御用でしたら、その呼び鈴を鳴らして下さいませ、それと朝は7時に起こしに来ますので、それでは、ごゆっくりどうぞ」
扉を開けてくれて、中を見てみると……凄い広々とした部屋だった。
ベットのサイズも大きく、軽く三人固まって寝れるサイズで、椅子とテーブルがあり、脱衣所と簡易の風呂? も備え付けてあり、何というか……豪華ホテルって感じに見えてしまっている。
「凄いな……」
「ええ……」
「気に入ってくれて、何よりです、それでは私はこれで」
オリフィアが部屋から出て行った。残された俺達は、どうしようか……と考えて、早速呼び鈴らしき物があったので、それを鳴らしてみる事にした。すると、数分後、コンコンとノックする音が聞こえて
「呼び鈴が鳴ったので、来ましたけど……何か御用ですか?」
と、オリフィアの声が聞こえたので、俺は
「いや、呼んだだけ、ちゃんと来るみたいだな?」
そう言うと、オリフィアが
「……そう言う試す事はしないで下さい! お客様! では私はこれで!」
そう言って、足音が遠ざかっていく。
「コウ……? 今のはちょっと酷いんじゃない?」
「いや、気になったしな……別にいいだろ?」
「はあ……それにしても、お風呂があるのはいいわねー、ちょっと入ろっと」
「なら、一緒に入るか?」
「何言ってるのよ、一人で入るわよ! 決して覗かないでよ!」
凄い睨んで来たので、俺は
「解ったよ、と言うか……何か眠くなってきたからな、先に寝る事にする」
そう言うと、リムが
「そう、じゃあお休み、コウ」
風呂場の方に行ったので、俺はベットに潜り込む事にした。枕も備え付けてあって、布団もふかふかだった。布団の中に潜って考える事は、バッグの中にある金剛石をどうするかを考える。
この町の誰に聞けばいいのか、さっぱりと解らないから……とりあえず……冒険者ギルドに行って、金剛石を買い取ってくれる人を探す事にするかな……と決めて、眠くなって来たので、そのまま眠る事にしたのであった。




