~第二話~ユーグレストと言う町~
レイン・スノウと出会って、俺は今の状況を何となく理解した。
多分と言うか……俺は、ゲームキャラの俺の作ったネクロマンサー「コウ・ドリム」になってしまったのだと思う。なってしまって、元の体に戻れるか……と思うのだが……戻り方がさっぱりと解らないし、戻れなかったら、この姿で生活していくしかないんだと思う。
で、森で出会った、レインさんに色々と聞いてみて、解った事は、ここが「ホーマ」と呼ばれる大陸で、俺がいた森は、そのホーマ大陸にある、ユーグレストの森と呼ばれている森だった。
レインさんが言うには、結構有名な森で、ホーマに住む人なら、ほとんど知っている森なのだと言う。
そう言われても、俺は知らないんだがな……レインさんに詳しく聞いてみると、レインさんは冒険者と呼ばれる者らしい、冒険者……まさにファンタジー要素満載の職業じゃないか?
じゃあ、さっきの熊モドキは、討伐対象生物だったって事か……あの熊モドキが消滅した現象は、魔物だからと聞かされて、俺はある事を思い出す。そう、前作、マジカル・クエストにも魔物は現れていて、その魔物を倒すと、消滅するグラフィックなのを思い出した。
と言う事は、あの熊モドキ……魔物だったのか……魔物なあ……その魔物が現れていると言う事は
魔王グレイトニブが健在と言う事なんだと思う。
前作マジカル・クエストでは、魔王グレイトニブを倒すと、魔物が全て、消滅するとかゲームの説明書に記されてあった。エピローグにも「魔王が支配していた魔物が全て倒され、世界に平和が訪れたのである」とも書かれてあったしな……だから……魔物が現れているのなら、魔王も健在と言う事に確定って感じだった。
ゲームのコンセプトは、魔王グレイトニブを倒す事が目的なので、冒険に出かけて、魔物を倒しながら、魔術を覚えて行き、最後に魔王城に辿り着いて、そこで魔王を倒すと言うストーリーとなっていた。
と言う事は、今の状況をよく考えてみると
「魔王グレイトニブ」を倒しに旅立とうなのだが、別に今、倒さなくてもよくね? せっかくこの異世界に来たんだし、色々と試してみようと思うしな。それに……魔術ってあこがれるしなあ……
せっかく魔術、と言ってもネクロマンサーなので、死霊術だけど、それが使えるんだし、まず……そうだな……生活費を稼ぐ事だろうな……今の所、お金なんか持っていないしな……しばらくの方針は、生活費を稼ぐ事に決めて、レインさんに助けて貰う事にした。
「ここが、ユーグレストだ」
レインさんと森の中を歩いて、数時間後、町に辿り着いた。
町の概観は、何と言うか……巨大ビルが一軒もなく、大きい建物が遠くに見えて、その大きい建物の、頂上付近に大きな鐘が存在していた。
「ユーグレストね……ユーグレストの森と何か関係が?」
「ああ、あの森はユーグレストの近くにあるから、ユーグレストの森と呼ばれているんだ」
「ほう、そうなんだ、ところで……」
「ん?」
「この町の大きさって、結構大きいほうなのか?」
「そうだな、いや、そんなに大きくは無い町だぞ、この町は下町といった感じの町だしな」
「じゃあ、他に大都市とか、あったりするのか?」
「ああ、この町の他に、シグルンと呼ばれる町があってな? そこが商業都市だから、この町より大きいぞ」
商業都市ね……何があるのか、楽しみだな?
ま、いつかは行ってみたいと思う。
「ところで、私は早速、ビック・グリーを討伐したから、換金所に行くのだが……コウ、お前はどうする?」
「換金所?」
「何だ、そんな事も知らないのか……換金所と言うのは、冒険者にはかかせない店だな。そこで、依頼を受けて、成功したら、成功した証を受付に見せて、賃金を貰うんだ」
と言う事は、ゲーム風に言うと、換金所は、ギルドと言う事になるみたいだな……なら、生活して行く為には、必要なお店だよな? うん
「じゃあ、俺も一緒に行くよ」
「そうか、じゃあ、案内するぞ」
そう言って、レインについて行く事にした。町の中を歩いてみると、色々な格好をした人がいて、特に多かったのが、俺と同じような格好の魔術師姿が、結構沢山いた。あれって、マジカル・クエストで言うと、魔術師の連中なのだろーか……?
そんな事を思い浮かべながら、数分後、大きな建物に辿り着く。
看板にでっかく「換金所」と書かれてあり、文字が普通に読めるので、文字が読めないとか、困った事にはならないみたいだった。
「ここが、換金所だな」
「ここが……レインさんが、いつも利用しているのか?」
「レインでいいぞ」
「了解、じゃあ俺もコウって呼び捨てで構わないよ」
「まあ、利用していると言われれば、利用しているぞ、ここは、欠かせない場所でもあるし、さ、中に入るぞ」
そう言ったので、一緒になって、中に入っていく。
中に入ると、数人いて、カウンターに二人いて
片方は、金髪の男で、片方が水色の女性だった。
レインは、金髪の男の前に立ち
「依頼完了したから、これが証拠品だ」
と言って、懐から何かを取り出して、カウンターの上に置く。
金髪の男は、それを見た後
「これは……グリム結晶ですね? では、ビック・グリーを討伐したと言う事になります、換金作業に入りますので、少々お待ち下さい」
そう言って、奥の部屋に行き、数分後
「お待たせしました、依頼「ビック・グリー」の討伐報酬、1000ベリカになります」
レインに大きめの袋を渡していた。
「ありがと、それじゃあ、また何かあったら依頼を受けるよ」
「了解しました、では、またのお越しをお待ちしております」
袋を受け取った後、レインがやって来て
「私の用事は済んだが……コウ、お前はどうする?」
「レイン、俺も依頼を受けるには、どうしたらいいんだ?」
そう聞いてみると、レインが
「じゃあ、あの受付にいるマックか、サリューに話しかけてみろ」
改めて受け付けにいる二人を観察、多分、マックが金髪の男で、サリューが水色の女だと思われる。じゃあ、どっちに話しかければと考え、女の方に向かった。別にマックでも良かったんだが、サリューがどんな人物が気になったので、こっちを選んだのである。俺が、カウンターの前に立つと
「いらっしゃいませ、何か御用ですか?」
「俺も依頼を受けたいんだが……」
「こちらを利用するのは、初めてですか?」
「ああ」
「では、名前と年齢を言って下さい」
「名前は、コウ・ドリム、年齢は十七だ」
「コウ・ドリム様ですね。私は、ここの換金所の受付をしている、サリューと申します、では換金所のご説明をしますね。この換金所では、常時依頼を受けておりまして、その依頼を選んで、コウ様が引き受けて下さい、その依頼が完了しましたら、成功の証として、依頼品をこちらに提示して頂き、確認が取れ次第、代金をお支払いと言うシステムになっております、解りましたか?」
「解った……じゃあ、今はどんな依頼があるんだ?」
「そうですね……今は、こちらの依頼があります」
そう言って、紙を取り出して、俺に見せてきた。書かれてある内容は
「美化花の採集、400ベリカ」
「レッド・デモンズの討伐、700ベリカ」
「ミニ・サンドワームの討伐、500ベリカ」となっていた。
どうやら……一つは採取系、二つは討伐系の依頼みたいだな……一番高いのは、レッド・デモンズの討伐だが、どんなものなのか、全く解らないし、ミニ・サンドワームも、ワームと言うからには、虫っぽい感じがする。と言うかだな……この金額って、ここだと高いのか、安いのか、全く不明だな?
じゃあ、ここは安全策をとって、こう言う事にした。
「じゃあ、この美化花の採取にする」
「畏まりました、美化花の採取ですね、美化花は、このユーグレストの町から、西に行き、そこのナール川付近に生息している黄色い花です、この美化花を十束持ち帰って下さいませ、期限は、三日中にお願いします、期限以上過ぎた場合、依頼は無効となりますので、ご了承して下さい」
「はい」
「では、頑張って下さいませ」
お辞儀してくれて、思った感想、この人、仕事に忠実で結構、優しい人なんだな……と思った。とりあえず……三日までに、美化花を十束採取すればいいみたいなのだが……困った事に俺……土地勘が全然ないんだよな……なんせ初めて来たしな。あと、辺りを見渡すと、いつの間にかレインいなくなっていたので、一人ぼっちになってしまっていた。
「しょうがねえ……一人でやってくしかねえよな……ま、何とかなるだろ」
そう思う事にして俺は、初めての依頼をこなす事にした。