~第十三話~シリルの町の出来事~
俺とリムは、スペルゴンの討伐の為、ユーグレストの町から、別の町へ行く事にした。
町の外に出て、リムに案内して貰い、一時間後……町が見えてきた。
「あれが、シリルの町よ」
「あれが……そうなのか……」
見た感じを言うと、まず目に付いたのが、巨大な風車だった。風車の羽がゆっくりと回転していて、他にも、小さいけど、風車があったので、風車の町?って感じがした。
「さ、早速、町の中に入りましょうか?」
「ああ、そうだな」
町の中に入ってみると、戦闘が行われていた。戦っているのは、魔術師の格好をした人達で、町の中だと言うのに、火系の術を発動していたり、風系の術を発動している、魔術師がいたりしている。戦っているのは、沢山の黄色い生物で、その生物に魔法を当てているみたいだった。
しかし、呪文を当てていても、消えるどころかピンピンしている。
うん、ゲーム「マジカル・クエスト」で見たとおり、あの黄色い生物が、スペルゴンなのだと思う。
「なんか……思った以上に、沢山いるわね?」
「ああ、でもサイズが小さいだろ?」
「ええ、ビック・グリーみたいな大きいサイズじゃなくて、よかったわ……ところで、コウ?」
「ん?」
「あれがスペルゴンでしょ? その攻撃方法は知っている?」
「ああ、知っているぞ、あのスペルゴンは、単純に一つの攻撃方法しかない、それは、体当たりだな」
「あら、そうなの?」
「ああ、ほら見てみろよ」
そう言って見てみると、スペルゴンが魔術師に向かって、突進、体をぶつけられて、魔術師が吹っ飛ばされていた。
「結構攻撃力が高いのかしら……?」
「まあな、でも動きが一直線にしか飛ばないから、避けるのも簡単だけど、さすがに沢山いて、突進してきたら、よけられそうにもないよな」
「ええ、そうね……見た感じ、全然減ってないみたいだけど……魔術が効いてないんじゃない?」
「ああ、このスペルゴンはな……ある術しか、効果がないんだ、だからリム」
「何?」
「スペルゴンには、水系の術しか効果がないぞ? いっぱいいるし、水系の最弱の術でやってみてくれ」
「……コウが言うなら、やってみるわね?」
リムが杖を構えて、呪文を言う。
「アイス・アロー」
リムの水系の術、アイス・アローが発動、スペルゴン一体に氷の矢が命中したら、スペルゴンの姿が消滅した。
「あ、本当ね……水系の一番弱い術で、スペルゴンが消えたわ」
「な? 俺の言ったとおりだろ? だから……水系の術で、攻撃してくれ、俺はこっちに襲いかかってくるのを足止めするから」
「りょーかい」
俺達の作戦が決まった。俺が、術「デス・トラップ」で動きを止めて、リムが「アイス・アロー」で退治する作戦に出た。その作戦が成功して、どんどん数が減っていく。
他の魔術師も、俺達のやっている姿を見たからか、同じ水系の術を発動して、スぺルゴンを退治していった。十分後、大体70体ぐらい退治した時、町の住人らしき人の声で「広場にあと、数体いて最後だ!」と聞こえて来たので、広場の方に行ってみると、確かに数体生き残っている、スぺルゴンがいた。
「リム、あれが最後のようだぞ、まだ呪文は、使えるか?」
「ええ、まだ使えるわ、でも……あと数発程度ね……さっきの戦闘で、かなり魔力を使ったし」
「そうか、なら十分だ、ほら、見てみろよ?」
見てみると、他の魔術師が呪文を発動させて、あと一体になっていた。
「あと一体だぞ? リム」
「りょーかい、アイス・アロー!」
リムが言って、最後の一体に命中。スぺルゴンが消滅していった。スぺルゴンが消滅したら、町の住人の歓声らしき声があちこちから、聞こえてきた。
「どうやら……終わったみたいだな」
「ええ……はー……結構疲れたわ……こんなに連続で魔術を使うのなんて、初めてだしね……」
「そうか……ところでな……今から、ユーグレストの町に戻って、換金所に行ってな? お金……貰えると思うか?」
「そうね……まあ、無理なんじゃないかしら? 明日になれば、連絡が入って、換金してくれると思うわよ?」
「だろうな……じゃあ、今日の泊まる所をどうするか……だよな……」
そんな事を話していると、俺達に話しかけて来る者がいた。
「あの……もしかして……泊まる所をご所望ですか?」
俺達に話しかけてきたのは、金髪の女の人で、何というか……あきらかに異質なのが、胸のサイズだった。と言うか……でかすぎじゃね? レインより、かなり大きく見えるし、リムと比べると、かわいそうな感じがしてしまった。
「はあ……とりあえず、そうなんだが……」
「そうですか、あの、私、この町の住人です、貴方達は、この町に大量発生した魔物を多く退治していましたよね? ずっと見てましたから」
「まあ……退治したと言われれば、そうよね? 結構倒したんじゃないかしら?」
「ですから、泊まる所がなかったら、私の家に来ませんか? この町を救ってくれた人に恩返しがしたいので」
「ねえ、コウ……この人、こう言ってるけど……どうする?」
「もちろん、Okだぜ! さ、よろしくお願いします!」
「は、はや!? もうちょっと考えたりしないの!?」
だって~美人で巨乳の女の人が、自宅に招待してくれるんだぜ? これは引き受けるしかないでしょう!
俺は、そう言って、家にご招待して貰う事にした。もしかしら……「好きです!」とかあるかも知れないしな? そんな事を考えていたら、リムがジト目で「何か、コウ……変な事、考えてない?」とか呟いていたが、気にしない事にした。彼女の名前を聞くと、キャシーさんと言うらしく、キャシーさんに案内されて、キャシーさんの家に辿り着いてショックを受けてしまった。何故なら……キャシーさん、既婚者で、しかも、子供までいやがった。しかも旦那さん、滅茶苦茶イケメンで、子供も女の子で美少女に見える。
っち……はかない夢だったな……おい……
「キャシー、この人達は?」
「町に現れた魔物を退治してくれた人達よ? 泊まる所を探していたから、ご招待したの、いいよね?」
「ああ、そう言う事か……お客様、この町に現れた魔物を退治してくれて、ありがとう」
「いえ、依頼だったので、引き受けたまでですよ」
「そうか、今日は泊まって行ってくださいね?」
この旦那さん、結構いい人みたいだった。
夕食もご馳走になって、メニューを見てみると、感激した。
何故なら……スープの中にうどんが入っているからである。
この異世界にうどんなんかないだろうな……とか諦めていたけど、この中に入っている太い麺は、あきらかにうどんだった。
「これ、うどんですよね?」
そう聞いてみると
「ええ、そうですよ? この町で流行っているんですよ、材料費も安いですし、美味しいですから、どんどん食べて下さいね?」
キャシーさんがそう言うので、お言葉通りに大盛りで戴く事にした。
夕食を食べ終わり、俺はキャシーさんの夫、アルゴさんと会話する事にした。
「アルゴさん、羨ましいですね」
「ん? そうかい?」
「ええ、あんな美人の奥さんと子供までいて」
「まあ、キャシーは幼馴染だったからね? そのまま一緒になったのだよ、えっと……コウ君だったよね?」
「はい」
「彼女とはどうなっているんだい? 一緒に旅をしているんでしょ?」
「そうですね……、今の所、旅仲間ですし、嫌いだったら一緒に旅なんかしていませんよ、と言うか彼女に出来るんだったら、しますね、うん」
「そ、そんな考えなのか君は……」
「当たり前ですよ、だって見た目が可愛いし、胸は残念だけど、俺が育てられるかもしれないじゃないですか?」
「そうか……まあ、俺がとやかく言う事ではないが……頑張れ……」
そう二人で話していると、リムと娘のレミーちゃんが
「お姉ちゃんの胸、なんで小さいの? 病気?」
「う……え~っと……」
とか言われていて、リムが困っている風に見えた。改めて観察すると、レミーちゃんの方が、少しばかり、リムより大きく見えてしまっている。明らかにレミーちゃんの方が年下なので、これってやっぱり、遺伝的な関係か? と思ってしまった。
実際、キャシーさん、巨乳だしな? うん、リム……ご愁傷様だな……ほんと……
夜になったので、ベットを使わせてもらい、そこで眠る事にして、一日が、終了したのであった。




