~第一話~ゲームキャラに転生……マジですか?~
ここは、何所だと聞かれたら……それは、こう答えてやる。
はい、異世界です……とな……
まず、俺の自己紹介から話して行くとするか、俺の名前は、夢野光輝何所にでもいる普通の男子高校生だった。だったと言うのは、俺が異世界に入ってしまったから、もう高校生でも何でもねえだろ?って感じだから、だったと言うしかない。事の始まりは、こうである。
学校の帰り道、俺は走って下校していた。何故なら、昨日手に入れた新作のRPGゲーム、「マジカル・クエスト2」をやる為である。このマジカル・クエスト2と言うのは、魔法世界、ホーマと呼ばれる大陸から始まり、魔術を駆使して、魔王グレイトニブを倒すと言う、ファンタジー要素満載のRPGだった。
前作のマジカル・クエストをやりこんだ俺は、その続編のマジカル・クエスト2を昨日、お店で並んで購入。次の日に学校があるので、昨日はキャラ設定をした後、セーブして、今日、ストーリーを始めようと思っていたからである。マジカル・クエストのコンセプトは、魔法なので、それにちなんだ職業設定から選ぶ事だった。職業は、魔術師、魔術師、魔術師、魔術師の四種類で魔術師、魔法をメインにした装備、魔術師は、回復を専門にした装備、魔術師は、死霊術をメインにした装備、魔術師は、召喚術をメインにした装備となっていた。俺は、この四種類の中からどれにしようか……と悩みまくって、前作のマジカル・クエストでは、魔術師を選んで、ほぼ全ての魔法を覚えて、魔王グレイトニブを倒したから、新作のマジカル・クエスト2では、別のやり方でやってみようと思い、キャラ名も遊び心を入れて、コウ・ドリムと名づける事にした。性別は男にして、見た目は今の自分と同じ容姿、百六十五cmに設定し、髪の色を黒にして黒目、職業を魔術師にした。
キャラ設定が終わり、テレビ画面上に現れたのは、黒のローブを着込んでいる、俺の作った、キャラアバターが現れて、名前にコウ・ドリムと書かれている。
装備名を見てみると、黒衣のローブと冒険者のズボンとなっていて、どうやら……これが初期装備だった。
そして呪文欄には、デス・トラップと書かれてある。
このデス・トラップの効果が書かれてあったので、見てみると、相手の影を縛り、十秒間動けなくすると、書かれてあった。
えらく物騒な術だな……と思いながら、ゲームを進めていき、ある程度、進んだ所で、夜中になってしまったのでセーブして、電源を切ったのである。
そして現在、俺はマジカル・クエスト2の続きをやる為、走って家へと帰っている。
携帯で、攻略サイトを見て、ネクロマンサーが何の呪文を覚えるかをばっちりと予習したし、帰ってから楽しみだぜ!と思っていたんだが……
気がついたら、森の中にいました。
「……はい? ここ……何所だよ?」
そんな事を言ってみても、状況は全く変わらなかった。確か……覚えているのは、走っていて、信号を渡っていた所までは覚えているのだが、それ以降の記憶がどうなったのかが、全くの不明。気がつくと、この場所にいるという事だった。と言うか……何所からか金属かなんかの、ぶつかり合う音が聞こえてきたりしている。何の音だ……と気になって、とりあえず……音の出る方向へ歩いて行くと
そこに見た光景は
「……っく!」
金髪の姉ちゃんが、二メートルは超すかと思われる、熊っぽい生物と戦っていた。
この場合、俺はどうするか考える。
1、関わりたくないので隠れる。
2、見つかったらやられそうなのでやっぱり逃げる。
3、戦う。
さあ、この三択だが、勿論俺が選んだのは、1の関わりたくないので、隠れる事だった。
この外道!とか言われそうだが、しょうがないと思う。森なので、隠れ場所には困らないので、草むらに素早く隠れようとしたが
「……ぐはっ!」
金髪の姉ちゃんが、熊モドキに吹っ飛ばされたのか、俺の隠れている場所に、どんぴしゃりと落ちてきやがり、目があってしまった。え~っと……この場合、どうすれば……と言うか、武器を持っているし、この姉ちゃんって、剣士なのかなーとも、思ってしまう。
「そこのお前!」
もしかして、俺に言ってます? この人?
辺りを見渡しても、俺と金髪の姉ちゃんしかいなかったので、俺に言ったみたいだった。
「もしかして、俺?」
「そうだ、お前は魔術師だろ! 加勢してくれ!」
「いや、魔術師じゃないんだけど?」
「その格好で、何を言ってるんだ!」
そう叫ぶと、金髪の姉ちゃんが、怒っていた。
その格好って……え……もしかして俺……魔術師と思われてる?
改めて自分の服装を確認してみると、なんか見た事あるような服装って、これ、俺が作った魔術師の格好じゃね!? 俺の今の服装、学生服からネクロマンサーの衣装に、ジョブチェンジしていやがった。
と言う事は俺……ゲームキャラのコウ・ドリムになった事か……? そう考えていると
「っく、来るぞ!」
そう金髪の姉ちゃんが言うと、剣を構えて、俺達の所にやってきた熊モドキと対峙した。
姉ちゃんが剣で攻撃すると、熊モドキが腕を振るって、剣を弾いていく。
……ここは逃げた方がいいのか……とか思っていると
「頼む! 手伝ってくれ!」
そう言っているので、俺は、どうするかを考えて
「解った、なるべくやってみる」
そう呟いてから、行動する事にしてみた。もし、俺がゲームキャラクター、コウ・ドリムとなっていたら、魔術師の術が使えるかも知れない。物は試しなので、発動方法が解らなかったが、とりあえず指を熊モドキに指差して、叫んで見る。
「デス・トラップ!」
そう言った瞬間、指先から黒い霧が現れて、熊モドキに命中、熊モドキの動きが、固まった。その隙に金髪の姉ちゃんが、剣を振るって、首を刎ねる。血飛沫が出たので、リアルスプラッタな状態だった。
熊モドキは、頭を失って、体が支えきれなくなったのか、倒れて動かなくなり、数秒後、光の粒子となって、消滅した。消滅した地面に、何か現れて、金髪の姉ちゃんがそれを拾って、懐の中に入れていた。
改めて思うのだが、消滅って……ありえなくね?って思ってしまった。
「ふう……助かった、礼を言うぞ」
「はあ……あの」
「ん、何だ?」
「ここ、何所?」
「は?」
「いや、だからここ何所かって事、森の中なのは解るんだが」
「お前……このユーグレストの森を知らんのか?」
「知らない、この森、ユーグレストの森って言うのか……初めて知ったな」
「おいおい……じゃあ、この森にどうやって入ったんだ?」
「どうやってって……気がついたら、ここにいたって感じなんだが」
「……転移魔法か?」
「転移魔法? 何それ?」
「何にも解らないのか……よし、解った、私が色々と教えてやろう、それでいいよな?」
「こんな所に一人でいるのも、さすがにやばいからな、あんたについて行く事にするよ」
「そうか、とりあえず自己紹介しとくな? 私は、レイン・スノウだ、よろしく」
そう言ったので、俺は本名を名乗ろうとしたけど、せっかくなんで、この名前を使う事にした。
「俺は、コウ・ドリムだ、よろしく」
こうして、俺の異世界探訪が始まったのであった。
私の名前は、レイン・スノウ、冒険者をしている。
最近、ユーグレストの森で、魔獣が現れたと聞いたので、討伐依頼が発行されたから、退治しに向かった。一人で森の中に入ったのはいいのだが……さすがに早まったかもな……けど、依頼「ビック・グリー」の討伐したら、かなりの金になるしな?
そんな訳で森の中に入って、数十分歩き回り、お腹がすいて来たので、持参していた弁当を食べようとしたら「グルルル」と音がしたので、食べるのをやめて、辺りを経過してみると、大きめのビック・グリーが現れた。
っく、結構な大物だな! だが、この剣で倒せる筈!
私は剣を抜いて、ビック・グリーに攻撃する。
しかし、弾かれてしまい、思うようにダメージを与えられなかった。
何とか攻撃を加えようと近づいたら、動きが変化して
「……ぐはっ!」
油断してしまい、吹っ飛ばされてしまった。
かなり痛かったが、何とかまだ動けるみたいなので、再び戦おうとすると、草むらの中に隠れている、見るからに怪しい人物を見かけた。黒色の髪に黒いローブ姿で、黒目をしている。
何でこんな場所にいるのだ? こいつは……
このような格好をしているのは、魔術師と知っているので、私は
「そこのお前!」
私がそう言うと、男が辺りを見渡した。
お前に言っているんだが、何で目を逸らす? お前に話しかけているに決まってるんだが?
「もしかして、俺?」
「そうだ、お前は魔術師だろ! 加勢してくれ!」
「いや、魔術師じゃないんだけど?」
「その格好で、何を言ってるんだ!」
そんな格好で、魔術師じゃないとか、ふざけているのか? そう思ったが、ビック・グリーがこちらにやって来たので
「っく、来るぞ!」
私は、剣を構えて、相手の動きを読んで攻撃を加えてみる。しかし、全くといっていいほどダメージを与えられなかった。こうなったら、仕方がないので、私は
「頼む! 手伝ってくれ!」
そう言うと、男が何か考えたみたいで
「解った、なるべくやってみる」
そう言うと、男が指をビック・グリーに突き出した。何をしているんだ? と思ったら
「デス・トラップ!」
そう男が言うと、指先から黒い霧が現れて、ビック・グリーに突撃して、ビック・グリーの動きが止まった。今のが術か……? と思ったが、動かない今がチャンスなので、私は、ビック・グリーの首を刎ねる。
いとも簡単に殺す事が出来て、ちょっとあっけなかったが、ビック・グリーが消滅した後、討伐の証となる「グリム水晶」が現れたので、それを懐にしまった。ビック・グリーの討伐依頼が完了したので、私は男に話かけてみる事にした。
「ふう……助かった、礼を言うぞ」
「はあ……あの」
「ん、何だ?」
「ここ、何所?」
「は?」
「いや、だからここ何所かって事、森の中なのは解るんだが」
「お前……このユーグレストの森を知らんのか?」
「知らない、この森ユーグレストの森って言うのか……初めて知ったな」
「おいおい……じゃあ、この森にどうやって入ったんだ?」
「どうやってって……気がついたら、ここにいたって感じなんだが」
「……転移魔法か?」
「転移魔法? 何それ?」
何か、本当に知らないみたいだな……仕方が無いな……
「何にも解らないのか……よし、解った、私が色々と教えてやろう、それでいいよな?」
「こんな所に一人でいるのも、さすがにやばいからな、あんたについて行く事にするよ」
「そうか、とりあえず自己紹介しとくな? 私は、レイン・スノウだ、よろしく」
私が、そう自己紹介すると、男が考えた後
「俺は、コウ・ドリムだ、よろしく」
これが、私とちょっと変わった男、コウとの始めての出会いだった。