序章 -The begining-
--月が街を照らしている。今宵は新月だ。
眠らない街、東京。丑三つ時を過ぎても街の光は消えない。
丑三つ時、現世と冥府の狭間が最も近くなる時間帯。この時間帯にはとても奇妙なことがこの世界には起こる。
--立川のとあるビルの上に一人の少女が髪をたなびかせながら立っている。
彼女は、身長は150cmほどで肩までに揃えた黒髪に赤い髪飾り、それに巫女のような格好をしている。その中で一際異彩を放っているのが彼女が腰につけた一振りの真っ白い『太刀』だ。
彼女は持っていた巾着から何か黒い食べ物ーーどうやらかりんとうのようだ--を取り出し口にした。
すると彼女は、おもむろに鞘からその太刀を抜き、10階はあるだろうビルから飛び降り、そのまま地上にふわりと舞い降りた。その場にいた人々は驚きを隠せないようだった。
彼女は一人の長身の男と向き合った。
その男は夜とはいえ、夏の蒸し暑い夜には似つかわしくない紫色のスーツとワイシャツを着ていた。
僅かなの沈黙の後、彼女が突然口を開いた。
「出たな怪物、覚悟しろ。貴様らの血の最後の一滴が消えるまで浄化してやる。」
「来ましたか、浄化人 -エクソシスト-。返り討ちにしてやりますよ。」
「貴様ら怪物にやられるほど私はひ弱ではない。」
そして彼女は刀の切っ先をその男に向けた。
「さあ来なさい、1分でお前を浄化してやります。」
「でかい口を叩けるのも今のうちですよ。行きなさい!死者共!!」
そう言った瞬間アスファルトの下から突然人の形をした何かが現れた。その場にいた人間達は悲鳴をあげて逃げ惑う。
「いくら出てこようが同じだ……行くぞ!」
--浄化せよ、聖辻風!!