そして出逢い
美男さんに連れられて来たのは大きな部屋だった。
「この広間で待ってな。幹部達を集めてくるからよ」
「はい」
美男さんはそのまま何処かへ行ってしまった。
1人取り残された私は一先ずまわりを見回してみる。
広間には何も置いておらず、綺麗に木目が揃った床がよく見える。
ホコリはかぶってないので頻繁に使われていることが分かるけど、傷が見当たらないから稽古場ではないみたい。
広間は建物から庭に突出した作りになっていて、隣に部屋がない三方の扉は全て明け放たれている。
そこを通る風は心地よく、太陽の光は部屋の真ん中あたりまで照らしていた。
ふと部屋の角の柱が目に入った。
「わぁ、太い柱…」
「随分頑丈そうだなぁ。何の木なんだろう?」
木をぱんぱんと叩いたりしながら独り言を言っていると背後から声がした。
「檜の木ですよ」
「…っ!!」
ビックリして飛び退いて振り向くと綺麗な若い女の人が立っていた。
その美しさに私が見惚れていると、それに気づいたのか、彼女が穏やかに切れ長の目を細めた。
(微笑みが眩しいっ!!)
「…貴女が斎藤さんの言っていた方ですか…。成る程…」
「え?」
(ん?
斎藤さん??あの美男さんのことかな?)
「もうすぐで皆が広間へ集まってきますよ。もうしばらく待っていて下さいね。では、私はこれで」
そう微笑みながら彼女は広間から出ていってしまった。
(キレイな人だったなー…
っていうか新撰組に何でいるんだろう…。
美男さんの話だと新撰組に女性はいなそうだったんだけどなぁ。)
そんなことを考えていると誰かが広間に入ってくる足音がした。
慌てて音のした方を見ると初めてみる人が6人、そして美男さんが入ってきた所だった。
先頭にいたのは朗らかそうな方。
続いて入ってきたのは短髪で明るそうな人。
その後に続く4人はというと…
長く、穏やかな波の様にうねる髪を垂らした人、
肩までの髪を頭の下の方で結んでいるちょっと厳つい人、
ボサボサした短髪と眠そうな目の人、
そして…
…な…何かものっそいムキムキな人っ…!!!
7人から出る雰囲気は平隊士とはいえないものだ。
それに気づき、私も襟を正す。
「コイツが斎藤が連れてきた入隊希望の女子か」
2番目に入ってきた人がそう言うと美男さんが頷いた。
「おっ!!女の子は大歓迎だぜっ!!」
「そうだな。屯所が華やかになるんじゃないか?」
ムキムキな人と厳つい人はそう言う。
「えぇ~、戦力にならない人が入っても僕の仕事が増えるだけじゃないッスか~。」
そう言いながらボサボサの髪を掻きむしる眠そうな男性。
「まぁまぁ待て。せっかく剣の腕を見せに来てくれたんだ。まずは、それを見せてもらおうじゃないか。」
朗らかそうな人がそう言う。
「おっと、近藤さん。その前に軽く自己紹介しといた方がいいんじゃねーか?知らない男に囲まれて戸惑ってるみたいだしよ」
2番目に入ってきた人にそう言われ 近藤さんと呼ばれたその人が苦笑いをする。
「おぉ!そうだったな。すまんすまん。私は新撰組局長の近藤勇だ」
(この朗らかな方が局長!!
意外だなぁ...)
「俺は副長の土方だ」
ニカッと笑いながらそう言うのは2番目の人。
「3番組組長の斎藤だ。」
「俺は永倉新八。2番組の組長を務めている」
「原田左之助だ!おれの筋肉ともども、よろしく頼むぜっ!」
「は…はぁ…よろしくお願いします」
(やっぱり、美男さんは斎藤さんっていうのか。
厳つい1つ結びが永倉さん、んでこのムキムキの変人が原田さん。)
頭の中で名前とイメージを繋ぎあわせてゆく。
(残る二人は……)
「山崎ッス~。監察やってまぁす」
(眠そうでやる気なさそうなこの人が監察!?
……大丈夫なのかな、新撰組…)
「…僕は沖田総司と申します。以後、お見知りおきを」
クールな美しさが漂う微笑みを見せながら、長髪の人がそう言った。
「私、佐伯千優と申します」
私は皆に向かって頭を下げた。
「よし!んじゃ腕試しを始めるかっ!!総司、平助を連れてこいっ!!」
土方さんにそう言われて、沖田さんは一礼をして部屋を出ていった。
近づく試合の予感に私はワクワクしながら、その時を待つのだった。