夜明け
※これはフィクションです。
また、結構従来のキャラのイメージとは違うと思います。
※乙女ゲームの文章形式のつもり書いてます←
(乙女orギャルゲーをやったことがある方は分かると思うんですが、)
改行はページ切り替えのつもりです。
※あらすじではざっと戊辰戦争の所まで書きましたが、
そこまでは長い道のりとなりそうです(^-^;)
気長にお付き合いしていただければ嬉しいです。
※史実と異なる部分も多いと思います。
(出来事(戦とか)は史実に合わせるつもりですが。)
ご了承下さい。
‐時は幕末、動乱の時代‐
「はぁあー、これからどうしよう…」
天井を見ながらため息をつく。
(もうこんな生活何日目?
持っていたお金も底をつきそう…)
「今更家にも帰れないしなぁ」
そう言いながら家出をした日を思い出す。
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「ちょっとお父さん!!私の木刀どこにやったの!?」
「そんなものは捨てた」
鬼の形相でわめく私に、父はお茶をすすりながら興味無さそうに答える。
「なんですって!?私の…宝物だったのに…」
「いいか?千優。お前は女だ。女は結婚をして子を生むのが仕事だ」
「!!」
「剣を振るなど許さん」
「…………」
「それより千優、結婚相手は決めたか?あの豪商の子息さんからの求婚とは…しかも7人も…お前の美貌は我が一族に栄光をもたらすぞ」
「…………」
「ん?どうした?その様子だとまだ決まっていないようだな」
「……いの」
「……え?」
「私は剣術がしたいの!!!!」
「お...女がそのようなことをするものではない!」
「女だから何よ!!今まで何百回と木刀を交えたことがあるけど、結局私に勝った奴なんか一人もいないわ!!!」
「女子の役目はだなぁ…」
「家で大人しく家事をしてるなんていやよ!!女だって剣をふるえるのに!!」
「言うことを聞けぬのならば勘当だぞ!!!」
「いいわよ!こんな家、こっちから願い下げだわ!!」
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(そんなこんなで今は京都にいるんだっけ。
元々裕福な家庭だったから、持ってきたお小遣いだけで何とか1ヶ月間生活できたけど…
……そろそろ限界。)
女の私を剣客として雇ってくれる所などあるわけもなく…
『ぐぅぅうぅ~』
「………そ、そろそろご飯食べに行くか」
私は身支度をして宿の広間に向かった。
ここの宿は、宿泊の一貫でご飯も出してくれるのだ。
その分、他の宿より割高だが、外に出なくていいので
江戸出身の私には慣れない京都弁の人とあまり話さなくてすむ。
「はい。どうぞ」
ニコリと笑って膳を持ってきたこの人がここの主人。
京都には珍しく、江戸出身の方。
「ありがとうございます! わぁ!美味しそう!!」
「千優さんはよく食べますなぁ。作りがいがあるというものです」
「この宿のご飯、とっても美味しいんですもの!」
むしゃむしゃと噛みながら話す。
「そういえば、千優さんを雇ってくれそうな所は見つかりましたか?」
「いえ、それが全っ然」
ふと外に目をやると青い羽織の集団が目に入った。
(まだ訪問してない所で、確かぁ…名前は…えっとー…)
「新撰組です」
「わっ!ご…ご主人…。って!何で私の考えてる事、分かったんですか!?」
「ずっとあの羽織を見て難しそうな顔をしていたものですから。千優さんのことです、また名前が思い出せないのではないかと…」
(う゛…私の特性を見抜かれてる…
そう、私は名前を覚えるのが苦手なのだ!…ははは…)
「新撰組は浪士集団です。強ければ誰でも雇うとか…」
「……ぇ」
「もしかしたら、女の千優さんも入れてくれるかもしれないですねぇ」
「!!…わ…私…早速行ってきます!!!」
「あ!千優さん!!新撰組は京都では嫌われてますよ!!覚悟を決めて入りなさい!!」
振り返って主人に深いお辞儀をし、飛ぶように部屋へ戻る。
部屋のモノを全て袋に詰め込む。
「とうとう見つけた…私の力を認めてくれそうな所!!」
超特急で走って屯所に向かう。
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(うーん……
勢いで来ちゃったはいいけど、何て言えばいいんだ?!)
私は何故か道の角に隠れるようにして新撰組とやらの屯所の入り口を見ている。
(だって門番が何か怖いんだもんっ!!
いかつい!!)
しばらく様子を伺っていると鋭い眼光の男性が出てきた。
(あの人に話せば…!)
とっさにそう思った私はその人の前へダッシュで行き、息をつきながら...
「……っ、あのっ…!」
「あっ!コイツです!」
話しかけた瞬間、目付きが鋭い人の後ろにいた平隊士》らしき人に指をさされる。
そしてかの人の目つきはますます鋭くなって私を睨む。
(あ。始めて真正面から見たけど…この人すごく美男!!!
っじゃなくて!!)
「……は?」
(え!?何!?
私何かした!?)
そしてその人が始めて口を開いた。
「お前、どこの間者だ」
低く、体に響くような声。
とても素敵な声なんだけど彼が何を行っているのか分からない。
「か…かんじゃ?…あぁ!!患者!!いえ、私健康です!!」
「………………」
「………………」
「あ…あの?」
(あれ?二人とも黙っちゃったけど、私なんか変なこと言った?)
沈黙を破ったのは美男さんだった。
「おい、こいつ間者じゃねーじゃねーか。しっかりしろよ」
「す、スンマセン。あ、でもこういう演技かもしれないっすよ」
「んな訳あるか。このアホ面が」
(あ…アホ面!?
私のことだよね!?
この人、顔はかっこいいのに性格悪いんじゃない!?!?)
「そ…そうっすね。ははは…すみませんでした」
(平隊士さんも何か納得してるし!!)
「じゃ、俺は中に戻るわ」
そういって門をくぐろうとする美男さんにハッとなる。
「あっ!待ってください!!」
「……何だ?」
その人は面倒くさそうに目を細めながら振り向く。
「何か用か?」
「えっと、入隊したいんですけど…」
鋭い目つきにたじろぎながら答える。
「は?入隊?」
彼はポカーンとして私を見ていたがやがてニヤリと笑い、
「ふん、女子供は家で飯事でもしてな」
(カチーン。
どこぞの親父を思い出すぜ!)
「あのねぇ!女だからって見くびってると痛い目見るわよ!!大体!!何で女が家事やるなんて決めてんのよ!!そんなの男だってできるじゃない。それとも何か?女が剣も出来て男の地位が下がるのが嫌ですか?え?」
(……ハッ!!
ここで怒ってどうすんのよ私!!)
「すっすみませんでした!!あの…その…ついカッとなってしまって、その…」
頭を深々と下げ言い訳を探す。
上を見上げると、初めは呆気にとられていた美男さんが不敵ともいえる笑顔を見せていた。
「面白ぇ、入りな。局長》達を呼んできてやるからよ」
屯所の中へ顎をしゃくりながら美男さんはそう言った。
どうやら入隊試合をやらせてもらえるらしい。
「はいっ!!」
私は喜びに胸をふくらませながら、後ろ姿まで美しいその男性に続いて屯所の門をくぐるのだった。