気づいたら増えていた
掲載日:2026/04/10
「ねえ、この本の山はなに。」
姉は僕を睨んでいる。
「気づいたら増えていたんだよ。」
僕は本から顔を上げずに答えた。
「そんなわけがあるか。」
姉は鼻で笑った。
「本が勝手に歩いてあんたのとこに来るって?そんな馬鹿な話があるもんですか。」
返す言葉もない。
「もう本は買ってくんなって言ったよな。」
姉の声が一段と低まる。
嵐の予感。これはまずい。
「自分の金だろうがなんだろうが使うのはたしかにあんたの自由。でも、本だけはやめろって言ったじゃないか。なんでまた増えてんの。」
「街を歩いてて目があったんだ。」
僕は弁明した。
「仕方なかったんだ。一目惚れだった。本も僕が好きで、僕も本が欲しかった。」
「うるさい。あんたの本のせいで、人間の居住スペースが廊下と風呂場とキッチンしかないんだよ。もーお願いだから処分して!」




