表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/13

第4話 恭子の仮出所

《《恭子の仮出所》》


 順子よりも一ヶ月遅れで私は仮出所した。ママには連絡したが、興味なしって感じ。まあ、そうだろうね。ママはナイトクラブの経営で忙しいし、母子家庭だからね。保護司の事務所に一緒に行って、と言ったけど断られた。仕方ないね。


 保護司は区会議員で、近藤という。千住桜本町のマンションの四階に事務所があった。出所してその足ですぐ近藤の事務所に行った。


 私は、家が母子家庭で母親が水商売をしていること、今日は出所してすぐにここに来たので、母親の都合がつかなかったが、今度は一緒に来ます、ハイ、反省しています。二度とやりません。と嘘泣きをした。


 近藤が現住所を聞くので、「ハイ、住まいは母親のマンションです」とママの北千住のマンションの住所が記載されているマイナカードを彼に見せた。近藤がマイナの表面をコピーしてカードを返してくれた。


 私は、高校にはまだ復学する気が起きません、近藤議員にご指導いただき、将来復学したいと思います、と膝に両手をつきうなだれて説明した。当面は、どこかでアルバイトをして、家計を助けるつもりですと、嘘八百を言ってやった。ロリ顔の私が上目遣いで目をウルウルさせて言えばジジイなんざイチコロだよ。


 近藤はいろいろと親切に保護観察で私が何をしないといけないのか、説明してくれた。


 私は、更生保護法四十八条四号の『四号観察者(少年院仮退院者)』なのだそうだ。更生保護法六十六条で、未成年の少年少女に関する保護観察の期間は、原則として少年が二十才に達するときまでと規定されているが、保護観察に決定したときから少年少女が二十才に達するまでの期間がニ年に満たないとき、には、保護観察の期間はニ年となる。


 つまり、私は18歳半だから、20歳半まで2年監視されるってこと。クソッ!二年まるまる監視下におかれるってことじゃねえかよ。いい子のフリをしないとな。いい子だって納得させられれば、保護観察の解除があるってことだ。


 この近藤という議員は、足立区保護司会からの推薦で保護司になったボランティアだそうだ。近藤から定期的に保護観察官という公務員に報告が送られる。だから、問題がないと保護司が判断すれば、保護観察官とは会わなくていいということだ。


 保護観察対象者が、一般遵守事項や特別遵守事項を守り、社会の一員として更生したと判断された場合には、「良好措置」を取られることがあるんだそうだ。イイ子を演じて「良好措置」を目指さないと。


 一般遵守事項っていうのは、①再犯・再非行をしないよう健全な生活態度を保持すること、②保護観察官や保護司による指導監督を誠実にうけること、③住居を定め、その地を管轄する保護観察所の長に届け出をすること、④③に届け出た住居に居住すること、⑤転居又は七日以上の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察所の許可を受けること、だそうだ。


 私が苺模様のメモ帳に言われたことを書こうすると(メモなんて真面目そうに見えるじゃん!)、近藤は「鈴木さん、メモしなくても手引きをがあるから……」と言って、30ページほどのイラストでわかりやすくまとめられた冊子を渡してくれた。チェックリストも載っている。


 特別遵守事項なんてものも書いてあった。私の罪状は、「覚醒剤使用・譲渡、売春・売春教唆」で、私の生活の背景には、「母子家庭、母親の水商売、薬物依存リスク、性的指向の影響」があるから、特別遵守事項もクスリに重点を置かれる。


 しかしなあ、罪状が「覚醒剤使用・譲渡、売春・売春教唆」ってさあ、暴力行為は入ってないじゃん。紗栄子の腹に蹴りを入れて内臓破裂させたのは罪に問われないんだね。紗栄子が黙っててくれたのか、審判でバレなかったのかな?とにかく、ラッキー!だ、運が良かったぜ。


 定期的な尿検査と血液検査を受けて、薬物使用の有無を確認のために、北千住の指定医療機関で月1回実施しますって言われた。おっと、バレたら再収容だろ?チクショウ、慎重にやらねえと。


 薬物依存防止プログラムというのもあって、性被害・性的指向に関するカウンセリングも週1回、提携機関で受講するんだそうだ。めんどくせえ。


 で、保護観察中、月に数回、保護司との面接がある。面接は、保護観察対象者の生活状況を聞いたり、遵守事項を守っているかどうかの確認、悩みごと等の相談やその指導等を受けるんだって。これまた、めんどくせえ。


 近藤は、毎週金曜日の午後、予定が空いているので、月に四、五回面接しましょう、という。


 アルバイトは、出所後の立場だと雇用主に面接で落とされる場合もあるから、近藤の知り合いのコンビニでどうか?と言われた。とにかく、コンビニバイトか高校復学、どっちかやれってさ。週20時間はシフト入るか、勉強しろってさ。ママのマンション住みながら、ちゃんと働けって。やれやれだ。


 ま、親切な議員さんだよ。私はわかりました。ご紹介いただけるコンビニのバイトで構いません、と答えた。


 近藤が紹介してくれたコンビニなら、シフト守って「いい子」演じりゃいいだろ。裏で女の子調達しつつな。


《《恭子の自室》》


 近藤の事務所を出た時は夕方になっていた。携帯は、入所している間もママが料金を払ってくれていたみたいだ。ママに連絡した。


 保護司の事務所に行った、今、事務所から家に帰る所と説明した。ママは興味がなさそうに聞いていて、「私は店にいるから、今日も遅い。帰らないかもしれないから、店屋物でも取って食べてよ。お金はいつもの金魚の水槽の後ろに三万円くらいあるから、それを使って頂戴」と言われた。いつものように、私には興味がない、って感じ。どうでもいい。


 マンションに帰った。自分の部屋に行って、クロゼットの上の棚に置いてあるバービードールの箱を取り出す。箱の中身は、11インチのパソコンとメモ、現金。順子に内緒でくすねたクスリと売春の売上は、五箇所のネットバンク口座に分けて預金してある。メモはパスワードを自分だけの暗号で書いたものだ。誰にもわかりゃあしないよ。預金は合計で五百五十万円ほどある。


《《ダークウェブ上の掲示板サイト》》


 パソコンを立ち上げて、ダークウェブ上の掲示板サイトを開く。サイトは日本語掲示板「オーちゃんねる」。見た目はネット掲示板「2ちゃんねる」に似ているが、中身は隠語だらけ。さまざまな売買に利用されている。隠語で2千件以上の売り文句が並ぶ。「アイス」という言葉で検索した。


 「アイス」の売人にメールを入れてみた。返信は一時間後にきた。「直接手渡しか、郵送で購入可能」とのこと。1グラム三万八千円だ。とりあえず、十グラムを注文した。明日十一時に池袋の改札で手渡ししてくれるということだった。


(よしよし、これでアイスが手に入る。あとは、女の子を調達すればいい)


 明日は、議員が紹介してくれたコンビニに面接に行く。コンビニに電話して、明日の午後にアポを入れた。ちゃんと遵守事項は守らないといけない。コンビニだって、シフトをちゃんと守って、欠勤なんかしないようにしよう、と私は思った。仕事の合間に、女の子を調達すればいい。


《《再犯防止なんざクソ食らえ》》


 順子のおじさまの連絡先はないし、携帯も解約されただろうが、おじさまの友人のドクターってジジイの連絡先はある。ジジイに言って女の子の売りの相手を紹介してもらえばいいんだ。とりあえず、ジジイに抱かれりゃ、ジジイはイチコロだよ。ロリ好きだから、恥ずかしがって、よがり声を出してやりゃあ、言いなりになってくれるさ。早速電話してみよう。


「ドクター。お元気ぃ~?恭子だよぉ~。え?今日、出所してきたんだぁ~。そぉそぉ、ひどい所だったよぉ~。同じ部屋のデブのブスにレズのお相手させられちゃったんだよぉ。毎日、泣いてた。え?レズのお話とか聞きたいの?変態だねぇ~、ドクターは。ええ?会いたいってぇ~。いいよぉ~。いつにする?今すぐだってぇ~?恭子、どうしようぉ?あとで、夕飯を食べてからまたお電話するわね。じゃあねぇ~」


 フン、スケベジジイ。今日はいくらふんだくってやろうか?まあ、男は七ヶ月お預けだったから、ジジイがオモチャつかってくれたらサービスしてやるか?ジジイだから、立ちが悪いしねえ。


 ケッ!再犯防止なんざクソ食らえだ。片や、高校生や大学生の女の子を抱きたいジジイがいる、片や、簡単に金が入って、クスリもやりたい女の子がいる。需要と供給だ。私はその仲介をするだけだ。なんの悪いことがあるか?ママだって、商売とか言って、ジジイとホテルにしけこんでヒィヒィ言っているじゃないか?この恭子さんがやって悪いことなんざないね。


 今回は、女の子に与えるクスリも順子がやったようにうまく量を調整して、ヤク中だと周りにバレないようにしないとな。智子みたいなのは真っ平だ。敏子とか恵美子には声をかけないようにしよう。アイツラが何を考えているかわからないし、保護司にたれ込まれたらヤバいからな。新しいメンバーを揃えなきゃな。


 そう言えば、少年院の同じ部屋のおとなしいやつ、なんだっけ?名前は?真弓だっけ?あいつの実家は世田谷だったな?真弓の高校の同級生を狙うか?千住近辺の高校、大学はバレてるんでやばいしな?真弓にクスリをやらせて、いうことを聞かせるか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ