第十八話:黄金のマヨネーズと地下の秘密
爽やかな朝の空気が、開け放たれた窓から流れ込んでくる。
森の木々が風に揺れる音と、小鳥たちのさえずりが、最高の目覚まし時計となって俺の意識を覚醒へと導いていく。
今日も平和だ。
ふかふかのベッドから這い出し、俺は大きく伸びをした。
体の節々が小気味よい音を立てる。
昨日は色々なことがあった。
鶏を引き取り、畑を耕し、鶏小屋を作った。
労働の後の睡眠は、どうしてこうも心地よいのだろう。
俺は着替えを済ませ、廊下へと出た。
磨き上げられた床は、朝日を反射して鏡のように輝いている。
相変わらず、カエデの掃除への執念は凄まじい。
階段を降りると、すでに活動を始めている住人たちの声が聞こえてきた。
「おはようございます、アタル様! 本日の警備も異常なしです!」
リビングに入ると、セレスが直立不動で敬礼してきた。
彼女の朝は早い。
騎士としての規律が骨の髄まで染み込んでいるのだろう。
「おはよう、セレス。今日も元気だな」
「はい! それと、先ほど、カエデ殿が庭へ収穫に向かわれました。レイナ殿も一緒です」
「収穫か。昨日植えたばかりだけど、何か変化があったのかな」
俺はテラスから庭へと出た。
そこには、朝露に濡れた畑の前でしゃがみ込んでいるカエデと、鶏小屋の周りを走り回っているレイナの姿があった。
「おはよう。調子はどうだ?」
俺が声をかけると、カエデが振り返った。
彼女の表情は、どこか興奮を帯びているように見えた。
「おはようございます、天道くん。ちょっと、これを見てください」
カエデが手招きをする。
俺は、彼女の元へと近づいた。
彼女が指差しているのは、昨日市場で買ったばかりの野菜の苗だ。
植えた直後はひょろりとしていた苗が、一晩でしっかりと根を張り、青々とした葉を広げている。
「成長が早いですね。やはり、ここの土壌が良いからでしょうか。それとも、セレスさんの耕し方が絶妙だったのか」
「俺が『大きく育て』って声をかけたおかげかもな」
「……貴方のその根拠のない自信、あながち否定できないのが悔しいところです」
カエデは苦笑しながら立ち上がった。
その手には、瑞々しい葉野菜が数枚握られている。
「間引き菜です。これならサラダに使えそうですね」
「採れたてか。贅沢だな」
その時、鶏小屋の方からレイナの歓声が上がった。
「ボスー! カエデ―! 来て来て! すごいのがあるよ!」
レイナが小屋の入り口でピョンピョンと跳ねている。
俺たちは顔を見合わせ、鶏小屋へと向かった。
昨日、俺の運とカエデの浄化で覚醒した『暁の鶏』たちだ。
中を覗き込むと、ふかふかの藁の上に、鶏たちが鎮座している。
そして、その足元には。
「……なんだこれ」
俺は目を疑った。
そこにあったのは、卵だった。
だが、俺の知っている卵とは似ても似つかない代物だ。
まず、大きさが違う。
ダチョウの卵とまでは言わないが、ソフトボールくらいのサイズがある。
そして何より、その色だ。
黄金色。
殻が、まるで純金でできているかのように、まばゆい光を放っているのだ。
「きらきらしてるー! 宝石みたい!」
レイナが目を輝かせて鼻を近づける。
「いい匂いがするよぉ……。これ、絶対おいしいやつだ!」
「……魔力を感じます」
カエデが真剣な顔で杖を向けた。
「ただの卵ではありません。魔力と、生命力が凝縮されています。これが、伝説の希少種の卵……」
「金貨と同じ価値があるって話、本当かもしれないな」
俺は恐る恐る、その黄金の卵を一つ手に取ってみた。
ずっしりと重い。
ほんのりと温かく、殻の表面は滑らかで、本当に金属のような質感がある。
「アタル様、それは……!」
遅れてやってきたセレスが、俺の手にあるものを見て息を呑んだ。
「これはっ……! まるで何かの秘宝にすら見えます。まさか、それが朝食になるのですか?」
「ああ。飾っておいても仕方ないしな。食ってこその卵だろ」
「なんという贅沢……。しかし、これほどの食材、どう料理すればよいのでしょう」
セレスが困惑するのも無理はない。
見た目が凄すぎて、目玉焼きにするのも気が引けるレベルだ。
だが、カエデの目は違った。
彼女の瞳の奥で、料理人としての情熱の炎が燃え上がっているのが見えた。
「……決めました」
カエデが静かに、しかし力強く宣言した。
「この卵を使って、あれを作ります」
「あれ?」
「はい。私たちがこの世界に来てからずっと、喉から手が出るほど欲していたもの。食卓に革命を起こす、あの調味料です」
カエデの視線が俺に突き刺さる。
俺はピンときた。
昨日、彼女が市場で油と酢を買い込んでいたことを思い出したからだ。
そして、この新鮮で濃厚そうな卵。
答えは一つしかない。
「まさか……マヨネーズか?」
「その通りです」
カエデが不敵に微笑んだ。
「サラダ、肉料理、揚げ物。あらゆる料理を極上の味へと昇華させる魔法のソース。それを、この最高の素材で再現します」
◇
場所をキッチンに移し、カエデの調理が始まった。
俺とセレス、レイナはダイニングテーブルに座り、その様子を見守る。
テーブルの上には、先ほど収穫したばかりの新鮮な野菜スティックが並べられている。
キュウリのような野菜と、大根のような野菜だ。
カエデはボウルを用意し、黄金の卵を割った。
コン、と硬質な音がして殻が割れる。
中から滑り落ちたのは、太陽を凝縮したようなオレンジ色の黄身だった。
白身も盛り上がっており、弾力が凄まじい。
「黄身の色が濃いです。これなら、濃厚な味が期待できますね」
カエデは手際よく黄身だけを取り出し、ボウルに入れた。
そこに、市場で買った酢と、少量の塩を加える。
「ここからが勝負です。分離させずに、しっかりと乳化させなければなりません」
彼女は泡立て器を構えた。
だが、手動で混ぜるのではないらしい。
彼女は杖を振った。
「『風よ、我が手となりて旋回せよ』」
微弱な風魔法がボウルの中で発生し、高速で黄身を撹拌し始めた。
これなら手も疲れないし、回転速度も一定に保てる。
魔法の有効活用だ。
「少しずつ、油を足していきます」
カエデは慎重に、糸を垂らすように油を注いでいく。
撹拌される黄身と油が一体となり、徐々に白っぽく、もったりとしたクリーム状に変化していく。
「マヨ……ネーズ? それは何なのだ?」
セレスが不思議そうに首を傾げた。
「こちらの世界にはないのか?」
「聞いたことがない。卵と油を混ぜるなど、想像もつかぬ料理法だ。分離してドロドロになるだけではないのか?」
「ふふっ、見てろよセレス。腰を抜かすぞ」
俺は勝ち誇ったように言った。
マヨネーズを知らない人生なんて、人生の半分を損していると言っても過言ではない。
この濃厚で、酸味とコクが絶妙なバランスで同居する奇跡の調味料を、彼女たちはこれから知ることになるのだ。
しばらくして、カエデが杖を止めた。
ボウルの中には、黄金色がかったクリーム色の物体が完成していた。
ツヤツヤと輝き、滑らかな質感を持っている。
「完成です。名付けて、『ゴールデンマヨネーズ』」
カエデが小皿に取り分け、テーブルに運んできた。
その瞬間、鼻をくすぐる酸味と卵の香りが広がる。
「くんくん……なんか、酸っぱい匂い?」
レイナが鼻を動かす。
「さあ、まずはこの野菜スティックにつけて食べてみてください」
カエデに促され、俺たちは野菜を手に取った。
俺は迷わず、たっぷりとマヨネーズをすくい取る。
黄金色のソースが野菜に絡みつく。
そのまま口へと運ぶ。
……衝撃が走った。
「んんっ!?」
口に入れた瞬間、濃厚なコクが舌の上で爆発した。
卵の旨味が凝縮されている。
そこに酢の爽やかな酸味が加わり、油のこってり感を中和しつつ、後を引く味わいを生み出している。
普通の卵で作ったマヨネーズとは次元が違う。
味が濃いのだ。
それでいて、くどくない。
魔力を帯びた卵だからだろうか、体中に活力がみなぎるような感覚さえある。
「美味い……! これだよ、俺が求めていた味は!」
俺は叫んだ。
野菜の瑞々しさとマヨネーズの濃厚さが、口の中でダンスを踊っているようだ。
「……では、私も」
セレスが、野菜の先に少しだけマヨネーズをつけて口に入れた。
彼女の目がカッと見開かれる。
「な……っ!?」
彼女は絶句した。
手にした野菜を見つめ、それから口元を押さえる。
「なんという……濃厚さ……! 卵と油が、これほどまでに調和するとは! ただの野菜が、宮廷料理の一皿に変わったかのようだ!」
「でしょ? 止まらなくなるだろ?」
「ええ、信じられません! これは、なんという……悪魔的な味……!」
セレスの箸、ならぬ手が止まらなくなった。
次々と野菜をディップし、口へと運んでいく。
「おいしー! なにこれー!」
レイナも大興奮だ。
彼女は野菜につけるのがもどかしいのか、指に直接マヨネーズをつけて舐め始めた。
「甘くて、酸っぱくて、とろとろ! お肉につけても絶対おいしいよこれ!」
「ふふふ。大成功ですね」
カエデが満足げに腕を組む。
彼女自身も一口味見をして、うっとりと目を閉じた。
「やはり素材の力は偉大です。前世で食べたどの高級マヨネーズよりも、深い味わいがあります」
食卓に革命が起きた瞬間だった。
たかが調味料、されど調味料。
これがあるだけで、俺たちの食生活レベルは数段跳ね上がったと言えるだろう。
俺たちが夢中で野菜スティックを食べていると、不意にレイナが動きを止めた。
彼女は鼻を上に向けて、クンクンと匂いを嗅ぎ始めた。
そして、視線を下に向ける。
「……ん?」
「どうした、レイナ。マヨネーズのおかわりか?」
「ううん、違うの。……なんか、いい匂いがする」
「マヨネーズの匂いだろ?」
「違うよぉ。もっと別の……なんか、古くて、でもすごく美味しそうな匂い」
レイナは椅子から飛び降りると、キッチンの床に這いつくばった。
犬のように床の匂いを嗅ぎながら、奥へと進んでいく。
「こっち。ここから匂いがする!」
彼女が止まったのは、キッチンの奥、食器棚の前の床だった。
一見すると、ただの木の床だ。
だが、レイナは確信を持って床板を叩いている。
「この下! 絶対になんかある!」
俺とカエデは顔を見合わせた。
レイナの鼻は、数キロ先の獲物を嗅ぎつけるほどの性能だ。
彼女がそこまで言うのなら、間違いはないだろう。
「床下……ですか。確かに、この屋敷の構造上、地下室があっても不思議ではありません」
「前の主人は変人貴族だったしな。隠し部屋の一つや二つ、作っていてもおかしくない」
俺はレイナが指差す場所に近づいた。
床板の継ぎ目をよく見てみる。
埃ひとつない綺麗な床だが、不自然な隙間は見当たらない。
「どこかに開閉装置があるはずです」
セレスが騎士の顔つきになり、周囲の壁や棚を調べ始めた。
隠し扉のスイッチ探しだ。
本棚の本を引くとか、燭台を回すとか、そういうベタな仕掛けがあるかもしれない。
だが、俺はもっと単純に考えた。
面倒な仕掛けを探すより、俺の『勘』に頼った方が早い。
「んー、この辺かな」
俺はなんとなく、足元の床板の隅を、つま先でトントンと叩いてみた。
特に理由はない。
ただ、そこが「怪しい」気がしただけだ。
カチッ。
小さな音が響いた。
俺が踏んだ床板の一部がわずかに沈み込んだのだ。
「あ」
次の瞬間、ゴゴゴゴ……と重低音が響き始めた。
俺たちが立っていた場所のすぐ横、食器棚ごしに床の一部がスライドし、下へと続く階段が現れたのだ。
「……開きましたね」
「アタル様、まさか隠しスイッチの位置をご存知だったのですか?」
「いや、適当に踏んだら開いた」
セレスが呆れたような、尊敬するような、複雑な顔をした。
まあ、いつものことだ。
開いた穴からは、ひんやりとした冷気と共に、レイナが言っていた「いい匂い」が漂ってきた。
カビ臭さはない。
むしろ、熟成された芳醇な香りだ。
「行ってみようぜ。お宝の予感がする」
俺は階段に足をかけた。
カエデが魔導杖を掲げ、明かりを灯す。
セレスが剣の柄に手をかけ、俺の前に出て護衛の体勢をとる。
レイナは「ごはんの匂い!」と尻尾を振って一番乗りに飛び込んでいった。
階段を降りると、そこは予想以上に広い空間だった。
石造りの壁と床。
天井には魔石が埋め込まれており、俺たちが足を踏み入れると自動的に淡い光が灯った。
空気は澄んでいて、地上よりも涼しい。
まるで巨大な冷蔵庫の中にいるようだ。
「ここは……」
カエデが周囲を見回し、感嘆の声を上げた。
「『魔導保冷庫』……いえ、それ以上の設備です。強力な保存魔法が部屋全体にかかっています。これなら、何百年経っても中の物が腐ることはないでしょう」
広大な地下室には、整然と棚が並べられていた。
そして、その棚には、俺たちの想像を超える「お宝」が眠っていた。
「うわぁ! 見て見て! でっかいチーズ!」
レイナが指差した先には、車輪のような大きさのチーズが積み上げられていた。
その横には、天井から吊るされた生ハムの原木が何本もぶら下がっている。
どれも熟成が進み、最高の食べ頃を保ったまま保存されているようだ。
「こっちはワインセラーだ。年代物っぽいぞ」
俺は壁一面に並んだワインボトルを手に取った。
ラベルの文字は読めないが、瓶の形や埃の被り具合からして、相当なヴィンテージものであることは間違いない。
変人貴族のコレクションか。
いい趣味をしている。
「……残念ながら、俺たちにはまだ早い代物だな」
俺はボトルを棚に戻した。
異世界とはいえ、俺とカエデはまだ高校生だ。
飲酒はルール違反だ。
まあ、セレスへのいい土産にはなるだろう。
「あら、こっちには果実水のようなものもありますよ」
カエデが隣の棚から、美しい琥珀色の液体が入った瓶を見つけた。
ラベルには果物の絵が描かれている。
どうやら、ノンアルコールのシロップ漬けのようだ。
「アタル様、こちらには木箱が山積みになっています」
セレスが部屋の奥から声を上げた。
彼女が開けた木箱の中を覗き込む。
「これは……穀物でしょうか? 見たことのない形ですが」
俺とカエデは顔を見合わせ、急いでその木箱の元へ向かった。
中に入っていたのは、白くて小さな粒。
間違いない。
俺たちの魂に刻まれた、あの主食だ。
「……米だ」
「お米……! まさか、こんなところにあるなんて!」
カエデの声が震えている。
彼女は両手で米を掬い上げ、愛おしそうに見つめた。
保存魔法のおかげで、虫も湧いておらず、新米のようなツヤを保っている。
『東方の穀物』として、この世界でも一部で流通しているとは本で読んだが、まさか自宅の地下に大量備蓄されていたとは。
「これで……これで、勝てます」
カエデが力強く握り拳を作った。
何に勝つのかは分からないが、その気持ちは痛いほど分かる。
パンも美味いが、やはり日本人のDNAは米を求めていたのだ。
「黄金の卵に、マヨネーズ。そして米」
俺の脳裏に、ある献立が浮かび上がった。
それはシンプルにして至高。
素材の味を極限まで楽しむための究極系。
「カエデ。今夜は宴会だ」
「ええ、異存ありません。最高のご飯を炊いてみせます」
◇
その夜、森の洋館はかつてないほどの熱気に包まれていた。
ダイニングテーブルには、地下から運び出したご馳走が所狭しと並べられている。
切り分けた巨大チーズ、薄くスライスした生ハム。
そして中央には、湯気を立てる土鍋――代わりに厚手の銅鍋が鎮座していた。
カエデが慎重に鍋の蓋を開ける。
ふわり。
甘く、芳醇な湯気が立ち上った。
炊き立ての米の香りだ。
一粒一粒が立ち、真珠のような輝きを放っている。
カエデの水魔法による水分調整と、適切な火加減により、申し分ない炊き上がりを実現したのだ。
「……いい香りです。パンとはまた違う、優しい香り……」
セレスが興味深そうに鍋を覗き込む。
レイナは「ごはん! ごはん!」とカエデが作った箸を持って待機中だ。
「さあ、まずはこれを味わってもらおう」
俺はそれぞれの茶碗に、ふっくらとしたご飯をよそった。
そして、その中央に窪みを作る。
そこに落とすのは、もちろん『暁の鶏』の黄金卵だ。
コン、パカッ。
黄金色の黄身が、白米の雪原に着地する。
そのコントラストの美しさたるや、芸術品のようだ。
「これが……『卵かけご飯』……!」
カエデが感極まった声で呟く。
「本来なら醤油が欲しいところだが、今日はこのままでもいけるはずだ。卵自体の味が濃厚だからな。足りなければ、塩を少し振るか、さっきのマヨネーズを足してもいい」
俺は手本を示すように、黄身を崩した。
とろりと溢れ出した黄金が、白米に絡みついていく。
まずはそのまま一口。
……言葉が出なかった。
濃厚な卵のコクと、炊き立てのご飯の甘み。
それらが口の中で混ざり合い、至福のハーモニーを奏でる。
醤油がなくても、卵が持つ微かな塩気と旨味だけで十分に成立している。
むしろ、調味料がない分、素材の力がダイレクトに伝わってくる。
「美味い……。生きててよかった……」
「んーっ! なにこれ、トロトロでおいしー!」
レイナがかき込むようにして食べる。
セレスもおっかなびっくり口に運んだが、すぐに表情を輝かせた。
「なんと……! 穀物を炊くと、これほど甘みが出るとは! それに生卵がこれほど合うとは思いませんでした。喉越しが良く、いくらでも入ります!」
「次はマヨネーズを足してみてくれ」
俺のアドバイスに従い、彼女たちは『ゴールデンマヨネーズ』をご飯にオンした。
邪道と言うなかれ。
TKGにマヨネーズは、禁断の扉を開く、ヤバい組み合わせなのだ。
「……っ! これは、罪の味がします」
カエデは衝撃を受けている。
「卵に卵を重ねる暴挙。ですが……ご飯の熱でマヨネーズが少し溶けて、酸味がまろやかになり……コクが倍増しています!」
宴は深夜まで続いた。
生ハムでご飯を巻いて食べたり、チーズにマヨネーズをつけておかずにしたり。
地下パントリーの食材はどれも絶品だった。
セレスは地下で見つけた年代物のワインを開け、「これは王家の儀礼で使われるレベルの古酒です!」と顔を真っ赤にして堪能している。
俺とカエデは、同じく地下で見つけた果実のシロップを水で割った、特製のブドウジュースで乾杯した。
濃厚な果物の甘みが、疲れた体に染み渡る。
満腹になり、程よい満足感が広がる。
レイナはすでに俺の膝の上で丸くなって寝息を立てている。
セレスはカエデと、この世界の料理と日本の料理の違いについて熱く語り合っている。
俺はグラスを傾けながら、窓の外の月を眺めた。
「……悪くないな」
俺は呟いた。
そのまま、グラスの中のルビー色の液体――最高級のブドウジュースを飲み干し、心地よい眠気と共に、賑やかな宴の余韻に浸った。




