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今日は、めずらしく式典があるようだ。天界は、朝から大忙しだ。
例によって、部署にいない上司を探すのも私にとって大忙しだ。
「もう30分前なんですけど?!」
一度、部署に帰ってくると、めずらしく上司は部署に滞在していた。
「お、おはようございます」
そこには、キレイな女の人がいて、上司の髪型を結っていた。
「あら、おはよう」
上司の真っ黒い長髪を華麗に編み込みにしている。紫色の瞳とよく合う宝石の髪飾りでまとめられていく。
息を呑むほどの美しさだった。ベアリエル様とは、また違った。まるで魅了するかのような美しさだった。
「あ、ごめん。いつも外から人を呼んでいて、席を外していて悪かったね」
「あ、いえ」
この女の人を出迎えに部署を離れていたのか。
「この方は、いつも式典の髪型をされる会社の人なんです」
「あ、あぁ、なるほど」
新しく入ったばかりで、勝手にわからない事にモヤモヤする。
「なんかーいつ見てもキレイな髪でうらやましいです」
「それは、どーも」
あんなに綺麗な人を前に上司は、全然嬉しそうな顔をしていない。
「はーい。出来上がりですよー」
「うん。どうもありがとう」
髪型のセットが終わり、上司がクローゼットの中から、銀色の洋服を取り出そうとした。
「あ、あのっ今日の式典は紅いやつですっ」
「あーそうだったね。ありがとう」
上司は、私の指摘にすぐさま紅いほうの服を羽織った。
「前をちゃんとしめてくださいっ」
正装を着崩していてもなんだか様になっていることが驚きだが、偉い人が集まる中でだらしなさだけ目立ってしまうようで、気が気ではなかった。
「大丈夫、大丈夫。俺なんて見てる人いないから」
「そういう問題でわっ」
神様にお会いになるのに、その前の開き具合はどうなんだろうか?と思わずにはいられない。
「それじゃ、行ってくるから」
いつもとは違ったシャンとした上司を見送る。
これがベアリエル様だったら、あんなちゃらんぽらんな格好で式典には絶対に出ない。
しっかりと前をしめた正装で、銀色の髪と吸い込まれそうなほどの紫色の瞳で、優しく微笑まれることだろう。
「そういえば、どことなく2人って似ているような気がするけど…気のせいよね」
ベアリエル様と真面目じゃないうちの上司を比べるなんて、そもそもありえないことだと思った。




