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「中枢を担っていると言うと聞こえはいいかもしれませんが、ただの雑用的な部署です…本当にいいんですか?まだ引き返せますよ?」
ソルトさんが、なにやら私に気を使っている。
「いえ、大丈夫です。私は、ココで頑張ります」
「アナタが憧れているベアリエル様のいる場所とは、天地のような所ですが…」
憧れは憧れ、自分がそんなにすごい部署に行けるなんて思ってはいない。
とにかく、ここで頑張ることを決めたのなら、やっぱり上司の名前をちゃんと聞こう。
「あの!なので、アナタ様の名前も教えてくださいっ」
私が上司に向き直ると、上司はとてもバツの悪い顔をした。名前を聞いただけなのに、いったいどうしたのかしら。
「ぇ……あーうん…………俺は」
上司が何かを言おうとした時、部署の扉が豪快に開いた。
「ねーねー!レアル!!聞いてよ」
扉から入ってきた人は、私の上司に飛びついた。
「え、えぇ?!えーーーー!!」
私は、入ってきた人にビックリして悲鳴のような声が上がった。
それは、7階層以上でしか仕事していないルシフェル様だったからだ。
「ミカエルがこの髪飾りが私には似合わないとか言ってきてイチャモンつけてくるだけどぉ」
……なんか、想像していたよりオネェだ。
「そもそも私と同じ顔してるんだから、私に似合わないならお前も似合わないだろ!とか思わない??」
ミカエル様とルシフェル様は双子の天使様だ。
「……ルシフェル様って、普段あんな喋り方なんですね…」
「ここでの上官同士の喋っていることはオフレコでお願いしますね」
私の上司は、いろんな人に頼りにされる人って事なんだろうか?こんなわざわざ下の階層にまでやってきてお話する相手なのだとするなら。
「ルシフェル様が天界の番長だとしたら、うちの上司がその裏番長みたいな感じです」
番長って言葉を久しぶりに聞いた気がするわ。
「あの2人が天界で手を組んで、抜けられない法はない。とさえ言われています…(脱法の悪友です」
「すごい。でも、逆を返せばこの2人がトップにいるから高い水準の法律が出来上がっているんですね」
「……リリナさんは、すでにあの2人に買収とかされてます?優しさのド塊みたいな人ですね…」
ソルトさんがため息をつきながら私に呆れ果てている。
「あら、やだ可愛い♫新しい人が入ったのね」
ルシフェル様がこちらへやってきた。
「え、あ、あの、は…はじめましてっ」
「そんなに緊張しないでwきっとこれからよく会うことになるから」
どこで?と思わず口にしそうになって、開きかけた口をチャックした。
「それじゃ、またね!レアルも」
ルシフェル様が私にウインクすると、文句を言いたいだけ言い終えたのか帰っていった。
「あ…えっと、私もレアル様とお呼びすればよいでしょうか?」
「こんな奴、オイッで十分ですよ」
ソルトさんの妙に冷めた物言いがなんでなのか、よくはわからないけれど、上司も困ったような顔を私に返した。
「うーん…あまり俺を上司として捉えて欲しくはないんだけど…レアルは上の方の階層の人達のあだ名なんだよね。下位の人が口にするのはちょっと、いろんな意味での誤解を招きかねない」
「それでは私が困ります」
一歩も引かない私に対して上司は譲歩してくれようとしていた。
「普通に上官とかでいいよ」
「分かりました。それでは、上官。あの書類の山はいったい何なのでしょうか?」
今日、仕事をサボっていた分の書類がまた天井にまで届いてしまっている。
「おやおや、これは手厳しいね」
そう言いながらも、上司は机へと向かった。
「リリナさん、あの人のサボリ癖は常習犯なので、何とかしてくれると助かります」
今日から上司を追いかける日々が始まりそうだ。




