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そして、パスを貰ったことにより自分が考えていたよりも早めに仕事を終わらせることが出来た。
空になったカバンを下げて自分の部署へと戻ってきた。
すると、パソコンくんはまだパソコンと向き合っていた。
「ただいま戻りました」
「ああ、お疲れ様です。大変でしたね」
めずらしく手を止めて私の方に顔を向けてくれた。
「いえ、途中でこのパスを届けてくれたおかげです」
「…………?誰がですか?」
パソコンくんに頭を下げると、相手がハテナ?という顔をした。
「アナタ様がですよ」
「(なんで、帰ってきたら渡そうと思った物をコイツは持っているんだ?」
私は、パソコンくんから受け取ったパスを掲げてみせた。
「(僕は、今日ずっとこの部署から出ていないのだが……もしかして、あの人…会議に参加しないで今日も遊んでいたんだろうか…?」
パソコンくんは、自分が私にくれたパスをしげしげと眺めている。
「(偽物ではなさそうだし、本人がコレを使ったと言っているのだから本物なのだろう」
「あの、カバンもありがとうございました」
「これから、書類を届ける仕事になると思うので、持っていてもらって大丈夫です。あと、お渡ししたパスで、ポータルの利用と倉庫の開閉など普段できないような事が出来るようになります」
「はい。受け取るときにそうおっしゃっていましたよね」
私がそういうとパソコンくんが何故か苦笑した。
「そ、そうでしたよね(やりづらいな…」
「あの!今日みたいな二重に経費をもらおうとしてた事とか、このパソコンとかで調べているんですか?」
「……経費を二重取り…?(聞き捨てならないような事を言いだしたぞ?どこの部署だよ」
私が、パソコンを覗き込もうとした時、部署の扉が開く音がした。
「あーーーー疲れた。ソル、飲み物ちょうだい?」
そこへ、上司が帰ってきた。
「あ、リリナさん奴の対応お願いします」
「え?」
いきなりバトンを渡されて焦っていると、上司がコチラへやってきた。
「お疲れ様。何ちゃんだっけ?ソルは俺のこと無視するのやめて?」
上司は私の前を通り過ぎると自分でポットからお湯を注いでいる。
私が、パソコンくんと呼んでいた人はどうやらソルという人らしい。
「無視もなにも、また仕事サボってたらしいじゃないですか」
「あれ?情報早いなwでも、会議には出たよ?最後の10分だけね」
最後の10分だけで会議に出たことになるのだろうか?
「あの頼まれた仕事を終わりました。リリナです!」
「ありがとう、リーにゃん♫ほんで、こっちがソルトで俺のことはオイ!でも何とでも呼んで?」
「(わ、私の名前、なんか簡略化された」
そして、何故か上司は名前を教えてくれなかった。たしかにソルトさんからは奴って言われていたけれど、ここで働くことになったのだから、ちゃんと名前で呼びたいような。
「初日はどうだった?」
「ソルトさんが助けに来てくれたので、助かりました」
私がそれを言い終わると、ソルトさんが上司を睨んでいるような気がする。なんでだろう?
「上の階層でも迷わずに届けられたの優秀だね」
「地図を制作しながら行ったので、次に行くときもスピーディーに行けると思います」
私の言葉に上司は振り返ってフッと笑った。
「ようこそ、実は天界の中枢を担っている『なんでも屋』な部署へ。アナタの入隊を俺は歓迎するよ」




