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「いけない!急がなくちゃ」
子供に話しかけられたり、入ってはいけないエリアに足をつっこんでしまったために、仕事が進んでいなかった。
天界では地球というところとは違って日が暮れないため、いまが何時でどれだけの時間がたってしまっているのかが、わかりにくい世界だった。
「(あと半分くらい、頑張らなきゃ」
天使が立ち入っては行けない上空があるとするなら、やっぱり徒歩で仕事をするほうが、安全性は高いかもしれない。
急ぎの書類だけを飛んで届けるなど、お渡し方法を考える必要がありそうだ。
ともすれ、ここにある書類は全部期限が切れているのなら、全部が速達扱いかもしれないのだが…。
どこへ行っても「承認急げませんか?」という事を言われてばかりな事を考えると、上司のスケジュール管理も自分の仕事のうちだと言うことが言えるのだろうか。
コンコンッ
新しく届けるべき書類の部屋の扉をノックする。部屋の中から、とても偉い天使様がでてきた。
「あ、あの…書類です。遅くなりました」
岩のような顔をした大きな体と、背中にある羽根が余計威圧的に思えた。
「こんなに遅くちゃ困りますよ。式典に間に合わないじゃないですか。遅い上に許可は出せない…?なんなんですか?」
「えっと……その、すいま…」
私が謝ろうとした時、私をかばうように誰かがやってきた。
「それについてはボクからお伝えいたします。」
それは、今日ずっとパソコンの前に座っていた人だった。
「式典についての経費が落ちない理由につきまして、べつのルートからお金が動いた形跡がありました。よって、その書類の許可を出しますと二重になってしまうようでしたので許可がおりなかったのですが…心当たりはございませんか?」
「べつのルートってのは、なんなんだね。そもそもそんな形跡などあるわけもない!」
相手の上官はあくまでも強気な様子だ。でも、こちらにも証拠などがあるんだろうか?
「こちらに録音データがございます」
パソコンくんがポケットから何かを取り出した。
「なにを言っているんだ!あの場所は、誰でも入れる場所じゃないんだぞっ」
上官しか入れない場所があるのか、どこかしらの密室での取引の会話データらしいものをチラつかされている。
「ボク達の組織は、天界のルールや規則が適用されない部署です。真実の追求のために侵入できない場所は我等にはありませんよ?」
「何を言っているんだ。そんなわけがなかろう!誰に物申しているか分かっておるのか!!」
上官はすごいけんまくだ。けれど、パソコンくんは全然動じていない。
「羽根を切り落とされるのはアンタのほうだよ。書類を渡し終わったなら帰りましょう」
やれやれ、といった態度で、パソコン君が私を廊下へと引っ張ってくれた。
「え、あ…はい」
このままで本当にいいのか分からないけれど、私にできることがなさそうなので、相手に従っておくことにした。
「あの!すいませんっ」
2人で廊下を歩きながら、ただただ不安になってしまった。
「あの…他の部署の偉い人に、あんな言い方して大丈夫なんですか??」
「大丈夫です。だいたいのことは、うちの上司が丸め込むんで」
そういう問題じゃないような…。
「いろんな部署に書類を届けて怒られたかもですけど、再提出や書類が通らないことには意味があるんです」
「さっき言ってた実は二重だった。とかですか?」
「そうですね」
パソコンくんは、この部署にいる期間が長いのだろうか?とても自分の仕事に誇りを持っていそうだ。
「あ、そうだ、コレを渡し忘れていたので、どうぞ」
私はパソコンくんから、首からかけるタイプの通行証のような物を受け取った。
「リリナさんの残りの書類ですが、ポータルを使って上の方に行かないと渡せない事に気づいてパスを持ってきました」
「ポータル……」
それは、偉い人しか使えないエレベーターのようなものだ。
「さっきも言ったように、ボク達の部署には、特例法というものがあって、下位の者が入れない場所にも入ることが許されています」
「そうなんですね」
確かに、残りの書類は今の偉い人よりも偉い人へ渡すためのものばかりだ。
「ここから上のポータルには、今よりも嫌味な人しかいないのでお気をつけて」
それだけ言い残すと、パソコンくんはさっさと帰ってしまった。本当に私にパスを渡すためだけに来たようだ。




