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34/37

ー34ー

 日本での演説の日から1日が立った。

 偉い天使様達が、本物のローマ法王も病院へと運び、奇跡的に心臓から玉を抜き出す手術に成功した!という新聞記事を作らせていた。

 人間界の民間人は、神が起こした奇跡として、この1日がたたえられていた。

 けれども、私の上司は目を覚さないでいた。

「やっぱり………死んでしまったんですよね」

 下層の青年に話を聞いてみると、演説の途中で二人は入れ替わっていて、青年は死なずにすんだのだという。

 上司の心臓は完全に止まってしまっている。

「これが…上級天使の仕事なんでしょうか」

 天使の仕事は、人間に奇跡を与えること。それは、よく分かっているけれど、なんだか私が想像していたやり方とは違うような気がした。

 もっと祝福のラッパとか、神々しい光とか…神託とか…華々しい事が全てだと思っているわけではないけれど、死ぬことを前提とした仕事に普通なら恐怖すら感じるべきところを、うちの上司はその仕事を与えられるのが当たり前みたいにこなしていた。

 なんて人なんだろう。信じられない。

 けれども、会場に来ていた反デモな集団は捕まえることができたみたいだし、人間からしてみたら、悪い人が捕まって、ローマ法王が生き返って、神に祈りを捧ぐことができた良い1日として終わるのかしら。

「こんな…こんなのってないです…」

 ただ、任務のために殺されてしまった上司が可哀想なのか、それを阻止できなかった自分への非力さに涙が出てきてしまった。

 いまは動かなくなってしまった上司の手をギュッと握った。

 その刹那、上司の心臓の真上当たりが光だし、エーテルの羽根がフワッと優しく落ちると、まるでAEDの電気ショックを受けたかのように、上司の上半身がドクンッと波うつと、上司が私の手を握り返してきた。

「……………ぐっ」

 低血圧の人が起き上がるかのように、気だるげに上半身を起こす。

「ソル………俺、何日寝てた?」

「2日でしょうか?」

「戻って書類の整理しねぇと…」

 上司が、ベットから降りそうとするので、私は止めにはいった。

「無理ですよ!さっきまで意識なかったんですよ?!」

「こうなることは、初めから分かってたんだ。だから、書類は1週間遅れる事を各部署には伝えてある。ハンコを押す作業は目と手が動けば十分」

 上司が、私の頭に手を置く。こんなボロボロの身体で、まだ仕事のこと考えているんですか?と、呆れてしまう。

「あ、あの!今回は、その…本当にすみませんでした!!」

 上司の後方にいた青年が、大きな声で頭を下げる。

「いいよ。君こそ、よく頑張ったね。ソル、下層まで送ってあげて」

「はい。特に罰則等は付けないということですか?」

 ソルトさんの疑問に上司は軽く笑っていた。

「こんなに怖い思いまでして、罰則付けたら俺が怒られちゃうよ」

 言い終わると、上司は私の腰を掴んだ。

「じゃ、りーにゃんと一足先に帰ってるから、ソルも帰ってきたら通常業務よろしく」

 言い終わるや否や、高速で部署に帰ってきた。外から天界に戻ってきた手続きは必要ないのか?と、ふと思いもしたのだけれど、1週間分の書類の山を前に、そんなとこ言ってる前にどんどん運び出さないと部署から書類が溢れてしまいそうだった。

ー事件後ー

上司)「そういえば、りーにゃんの検問には恐れ入ったねw」

リ)「どこかで見ていたんですか??」

上司)「まーそりゃーねぇ」

リ)「どうやって私達の前をすり抜けたんですか?」

上司)「それは……ナイショ」

リ)「うー…」

上司)「かわりに、りーにゃんもあの事内緒にしておいてね?」

リ)「あの事って何の事ですか?」

上司)「俺が…人間とキスしてた、こと?」

リ)「わ!や、あれは!そのっ」

上司)「りーにゃんでも赤くなる出来事ってあるんだね」笑

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